列車は、輪台を16:10に発車して、またひたすら西を目指します。
ずいぶん進んできた気がしますが、トルファンから600キロ程度、カシュガルまでの行程の半分にも達していません。
あらためて、天山南路の長さ、タクラマカン砂漠の広さに感嘆します。
雨粒の舞うタクラマカン砂漠
砂地の砂漠に一本道が走り、そこをトラックが行く。涙をそそるような寥々とした風景。
輪台からのカシュガルまでの時刻表はこの通りです。カシュガルまで、あと11時間。
輪台 | 16:10 |
クチャ(庫車) | 17:36 |
新和 | 18:09 |
アクス(阿克蘇) | 20:57 |
カシュガル | 3:20 |
すると、ほんとに雨が降ってきました。これは、おそらく、とても珍しいことなんでしょう。他の乗客たちも、驚きの表情。
列車は雨に煙るクチャ駅に到着。
けっこう激しく降って、駅のホームに水溜りも浮いてます。
クチャは、今も昔もシルクロードの主要なオアシス都市。大勢の乗客が入れ替わります。
同室の母子も、ここで降りていきました。私の部屋は、ふたたび、私一人になります。
クチャは、古代は亀茲国が栄えた土地。市街の北には、亀茲国最大の仏教遺跡スバシ故城があります。
玄奘三蔵の見聞録「大唐西域記」に登場するアーシュチャリア寺院ではないかと考えられているそうだ。
ちなみに、「大唐西域記」は、玄奘が訪問した110カ国におよぶ見聞録。
マルコポーロの東方見聞録に勝るとも劣らない紀行文なのだろうか。
農家の家。あるいは旧市街。下川裕二さんは、クチャを訪れた際、著書の中で、
シルクロードの眺めは旧市街にあった。ポプラの並木になぜかホッとする。
下川裕二 著作 「不思議列車がアジアを走る」より
と、記しているが、漢民族の開発のスピードに、ウイグル人は、やはり押されてしまってるのだろうか。
雨に煙るポプラの木の向こうに、クチャの新市街。
雨が降っていると、田園風景もしっくりきます。日本でもよくある景色。
天山山脈の頂から雪が消えました。というより、雪をかぶった部分が見えなくなってしまった、ということでしょう。
みずみずしい景色を眺めていると、突然乾いた川が。ほんとにシルクロードの旅って、面白い。
旅を面白がってるのは、全乗客中、私だけかな。
この列車には、おそらく1,000人以上の乗客がいるんでしょうが、私のように、ずっと目を見開いて景色を眺めてる人間って、何人ぐらいいるんだろう? 多分いない?
軟臥車の乗客は、もううんざりモードですね(笑)
シルクロードの民族楽器かな。
18:09新和(シンホー)駅に到着。トルファンから8時間。ようやく半分近く来ました。
すぐ南はタクラマカン砂漠という町です。乗客の顔も、ますますウイグルっぽくなってきました。
砂漠が、雨によって濡れて、粘土状に見える、めったに見れない光景。貴重なシーンかもしれません。
古代から、旅とは、必要に迫られてするものだった。
いつからなんだろう、旅が1つの興行として文化になったのは。
いや、古代シルクロードの時代にも、日々、刻々と移り行く景色を、苦行の中楽しんでいる雑魚兵もいたに違いない。
それほどにも、移動しているだけのこの時間、移りゆく景色が、私の目をとらえてはなしません。
雨霧の中、小駅を通過。
雨なのに、水を撒く散水車。あるいは、水しぶきを上げるトラック。
雨の舞うシルクロードを眺めながら、ウオークマンで音楽を聴く。至極幸せなとき。
なんて音楽を聴いていたら、女性車掌が、だれかもう一人を連れて部屋に入ってきました。
警官でした。
「どこに行く?」「カシュガルからの予定は?」「新疆ウイグル自治区に知り合いはいるか?」など、かんたんに聞かれて終わり。
愛想はよかったです。
この辺りは、けっこう本格的に降った様子。
なんと読むのかわからない、お経にでも出てきそうな駅名。
夕暮れのタクラマカン砂漠
急に、雲が途切れました。本日はじめてみる青い空です。雨もあがりました。
大量の水が流れた様子。
操車場が現れたと思ったら、アクスに到着です。夜9時でこの明るさ。
いっぱい乗ってきそうですね。私一人独占状態のこのコンパートメントにも、来客があるかな。
このアクスが、最後の停車駅。この次が、降りるべきカシュガルになります。
アクスの出発が20:57。カシュガル到着が3:20。6時間もノンストップで走るんですか。
空港も持つ町アクスは、ふつうに都会っぽいです。
この町も、数年で、とんでもなく発展した都市になってしまうんでしょうか。
アクスのビル群の向こうに夕日が沈んでいきます。
まだ明るいですが、時刻は21時を回っています。今朝起きたのが6時。この列車の中では、1回も居眠りしてませんので、そろそろ眠くなってきます。
というより、早く寝たほうがいいんです。
明日は、未明の3:20にカシュガルに着き、そのまま予約してあるホテルへ。
ここまではいいんですが、その後、ホテルにお願いして車をチャーターしてカラクリ湖へ行く予定なんです。その道中だって、景色見たいし、居眠りなんて絶対したくない。
ということは、陽が落ちた今、素直に寝ることですね。お腹はすいてるけど・・
残りの「楼蘭ワイン」をゆっくりのどに流し込みます。
そして、歯を磨きに行きます。さすが、軟臥車。清潔な洗面台でした。
部屋に戻って、横になります。アクスで同室者が増えましたが、漢民族の青年で、スマホいじりに余念がありません。
夕焼け。ということは明日の天気は晴れでしょうか。
明日は、1日ドライブです。天気がいいに越したことはありません。
幸運に感謝しながら、眠りにつきます。
シルクロードの景色を10時間以上眺めて、いっこうに飽きず・・
私も、旅中毒、重症なほうでしょうか(^_^)
では、おやすみなさい・・・