イランへの弾丸旅行。
出発の日が刻々と近づいていますが、もう一度、イランという国をおさらいしておきましょう。
イスラム教の国 イラン
まず、宗教上の観点から。
イランは、国名の正式名称「イラン・イスラーム共和国」が示すように、イスラム教の国。
そして、イスラム教は、大きく次の宗派に分かれます。
シーア派
イスラム教の預言者はムハンマド。ムハンマドの後継者をカリフと呼ぶ。ムハンマドの娘と結婚したのがアリー。そして、アリーとアリーの血とつながっている者がカリフとしてふさわしいという考え方。全イスラム教徒の約15%を占める。スンニ派
血統にはこだわらず、イスラムの教えを守っていればよいという考え方。
全イスラム教徒の約85%を占める。
早い話が、血統重視のイスラム教徒がシーア派であり、シーア派が多数を占める数少ない国の一つがイランです。
ちなみに、シーア派が、イランほどではないにしても、多数を占める国には、イラクやシリアなどがあります。
イランはイスラム教の国と言ってしまいましたが、歴史的には、イスラム教が登場するはるか前から、火を聖なるものとするゾロアスター教という宗教が信仰され、アケメネス朝ペルシャにて保護されていたようです。
現在も、イラン中央に位置する都市ヤズドでは、30万の人口のうち、約1割がゾロアスター教徒とされているとのこと。
イランを構成する民族 ペルシャ人
そして、次に、民族の観点から。
イランを構成する民族の多くは、ペルシャ人です。
私は、つい最近まで、大いなる勘違いをしていました。勘違いというか、無知というか・・
私は、中東、あるいは中近東というと、イスラエルは別として、宗教や民族は同じもののように考えてきました。
簡単にいうと、中東と言えば、宗教はイスラム教で、民族はアラブ人。みたいな・・
しかし、これは大変失礼な話で、アラブ諸国であればアラブ人というくくりでいいのかもしれませんが(あってるかな?)、イランはアラブ諸国ではないので、ペルシャ人です。
そして、ペルシャ人とアラブ人は伝統的に仲が悪い。このことが、中東情勢を複雑化させています。
下の写真が、アラブ首長国連邦ドバイを歩いたときの、日陰で涼をとるアラブ人の皆さん。
ところでイランには、大統領の他に、最高指導者という人がいます。
詳細は、私には語れませんが、アリーの血を引く、いわゆる「イマーム」が若くして姿を消してしまったため、救世主として戻ってくるまでに、イスラムの教えを極めた人が代理を務める、ということのようです。
そして、こちらが、その最高指導者アリー・ハメネイ師です。
Morteza Nikoubazl / Reuters より
ちなみに、大統領のロウハニ氏はこちら。
よくみると、頭に巻いているターバンの色が違います。
大統領のロウハニ氏は、一般的な白ですが、最高指導者のアリー・ハメネイ師は黒。
黒いターバンを巻く人は、ムハンマドの血筋を引く人を意味するそうで、シーア派の中でも位が高いということで尊敬されるようです。
ところが、
ムハンマドもアリーもアラブ人でした。ムハンマドの血筋ということは、アラブ系であることを意味します。イランの人たちはペルシャ人。伝統的にアラブとは仲が良くありません。
つまり黒いターバンを巻いている人は、イスラム教シーア派的には尊敬するべき存在ではあるものの、アラブ系という点で一般のイラン人からは敬遠されるというのが本音なのです。
池上彰 著 知らないと恥をかく世界の大問題5 より
へぇーッ、って感じですね。
複雑な中東情勢における現代のイラン
ところで、現代のイラン。
イランは、1979年のイラン革命より、反米国家を地で行っています。
イラン革命とは、急速な西洋化を推し進めていたパーレビ国王が、国民の不満を受けて失脚。アメリカに亡命したところ、イランの学生たちが、パーレビ国王の引き渡しを求めて、テヘランのアメリカ大使館を占拠した事件のこと。
これ以来、イランとアメリカは国交を断絶。欧米諸国の経済制裁の中、イランは核開発まで行うようになります。
ところが、2013年、イランに保守穏健派のロウハニ大統領が登場。
米オバマ大統領と電話会談を行うなど、国際社会との関係修復に乗り出しました。
しかし、これが、また中東情勢を複雑にします。
中東の親米国といえば、イスラエルにサウジアラビア。
しかし、この両国とも、イランを敵対視しています。
したがって、イランがアメリカと仲良くなることを、この両国はよく思っていません。(どうしようもない考えですね・・)
さらに、シリア。
シリア内戦の構図は、もはや一言で言い得ることが困難になってしまいましたが、アサド政権側についているのが、イランであり、ロシアなど。
反政府側についているのが、イランに対立するサウジアラビアや、いうまでもなくアメリカ。
イランがアサド政権側についているのは、アサド政権がアラウィ派という、シーア派に近いグループであるため。
どっちがいいとか悪いとか、簡単には言えないほどの人道危機に膨らんでしまっています。
こんな中、私は、イランへの弾丸旅行に旅立ちます。
宗教学も民族学も、旅をこよなく愛する上では、必須の学問のようです。
人々の表情から、何かつかみとることはできるでしょうか。
※サラリーマンとして、3泊6日でイランを弾丸旅行してきました。
よろしければ、ぜひ、ご覧ください↓