和碩を12:49に発車して、列車は湿地帯を走ります。
シルクロード列車 食堂車のない旅
和碩からのカシュガルまでの時刻表はこの通りです。
トルファン | 10:09 |
和碩 | 12:49 |
焉耆 | 13:17 |
コルラ | 14:05 |
輪台 | 16:10 |
クチャ(庫車) | 17:36 |
新和 | 18:09 |
アクス(阿克蘇) | 20:57 |
カシュガル | 3:20 |
車内販売が頻繁に行き交います。
ちょうど昼時ランチタイムです。軟臥車両の両サイドに食堂車がなかったのを不審に思い、ちょうどゴミ掃除に通りかかった女性車掌に聞くと、なんと「食堂車はない。」とのこと。
いままで、中国の列車で旅して、食堂車が連結されてない列車ははじめてです。
でも、この列車、伊寧(イーニン)から和田(ホータン)まで35時間もかけて走る列車ですよ。
食堂車がないとわかると、急にお腹が減りました(笑)
通りかかった車内販売から、水とソーセージとピーナッツを買い込みます。得たいが知れないカップ麺は、ちょっと遠慮しました。
南疆線 コンパートメントの出会いと別れ
そんなことをやってると、向かいのベッドの女性がモゴモゴと起きだしました。びっくりしたのは、その女性の奥に、3歳くらいのお子さんがいたこと。母子連れだったんですね。
眠りから覚めた少年は、ご機嫌です。
私のカメラをものめずらしそうに眺め、いたずらしようとします。もちろん、触らせてあげますが、母のほうは「いけません!」って感じで、子供をたしなめます。
どこにでもある平和な母子の光景でした。
(お母さんに許可をもらって撮らせてもらいました)
お子さんが、私のウオークマンをいたずらしている間に、窓外には水田?が広がります。
水田ではないのかもしれないけど、天山山脈からの水をうまく捕まえて、農作物を育ててるんですね。人類の英知だと思います。
(ちなみに、お子さんは、私のスマホには見向きもしません。たぶん珍しくないんでしょう笑)
収穫に余念のない農家たち。
農家の集まり?
いきなり町の気配が広がるので驚きます。まもなく焉耆(えんき)です。
この母子も焉耆(えんき)で降りるようです。この「えんき」という読み方は、このお母さんから教わりました。けっこう大きな町のようです。ちなみに、私の持ってきた地図には「イエンチー」とあります。
焉耆に到着。
列車を待つウイグル人たち。顔つきが、あきらかに漢民族とは異なります。
けっこう乗ってくるんですね。
さっきの母子連れが、私の窓の前を通りかかります。母子の姿は、ほんとに万国共通です。
焉耆を13:17に発車して、私一人になったコンパートメント。
この軟臥車、日本でいうところのA寝台(っていうか、日本にはもう寝台車なんてほぼない)ですが、トルファンからカシュガルまで、456元(7300円)です。
区間が短ければ、もっと安いでしょう。
なぜ、追加料金を払って、この優雅な軟臥車に移ってこないんだろう?
激混みの硬座車を見て、そんなことを思ってしまいました。
でも、私も若い頃は、旅するときに、寝台車を使うなんて無駄遣いの象徴。夜行列車の座席を当たり前のように、利用してましたね。
焉耆を出てすぐ、鉄橋を渡ります。
西域に入ってから、水が流れている川を見るのははじめて。湿地もあるし、天山系の水路に恵まれている地形なのかな。
一人っきりのコンパートメントで、ソーセージのランチ。味は可もなく不可もなく。
ほんと失敗したなあ・・
まさか、二晩走る長距離列車に、食堂車がついてないなんて。中国の列車も合理化の波が押し寄せてきたのかな。
でも、車内販売の、あの得体の知れない弁当は食べたくないしなあ・・
つまみのピーナッツ。こちらは、けっこうおいしかったです。
天山南路の工業都市コルラ
また町の気配が。まもなく、コルラに到着です。
コルラも、シルクロードの主要なオアシス都市です。新疆ウイグル自治区のバインゴリン・モンゴル自治州の首府でもあります。
すなわち、この辺りでは、もっとも大きな町。降りる人もたくさんいます。
コルラを定刻の14:05の定刻に発車。
中国において、鉄道は重要な交通手段。従事する職員の表情にも誇りを感じます。
コルラという町は発展中なのかな。線路増設用の線路が、大量に積み上げられています。
水に恵まれた町。というか、大都会じゃないですか、コルラ。
かつてはシルクロードのオアシス都市も、いまや、タクラマカン砂漠の油田を原資とした工業都市。
こんな大都市とは思いませんでした。人口は約40万人とのこと。この町の北西100キロには秘境で名高いバインブルク草原、北東50キロには中国最大級の淡水湖ボステン湖があります。
いずれ、訪れてみたい町ですね。
新旧入り混じるコルラの町の風景
かつての住民の町は取り壊され、漢民族により開発された町が広がっていく。そういう構図なのでしょうか。
このコルラで、また母子連れが乗ってきました。今度は女の子です。
そこに、隣室のおばちゃんがおもちゃを持って登場。盛り上がっています。
このお母さんは、学校の先生かな。ずっと、英語の勉強をしていました。
そんな母子の様態を眺めながら、同時に窓外も眺めます。
コルラという町は、面積的にもおおきいらしく、発車してすでに10分ほど経ちますが、まだ都会の香りが途切れません。
ピーナッツを食べます。日本のピーナッツとは食感が違いますが、これはこれでおいしいです。
女の子がねだってくるのであげます。ていうか、勝手に取っていっては、おかあさんに怒られているという微笑ましい光景。
天山南路をひたすら南西へ
アクスまで534キロとの道路標示版。アクス到着は20:57。6時間後ぐらいに通る町です。
列車は、天山南路をひたすら走ります。並走する道路には、貨物を積んだトラックが。三蔵が歩いた1400年ほど前は、どんなキャラバン隊を組んで移動していたのか、ふとそう思います。
小さな駅を通過。
こんな駅まで一つ一つ止まる鈍行列車にも乗ってみたい。
資源開発のための労働者用の住宅? とにかく、いきなり現れるのでびっくりします。
昼酒が飲みたくなって、トルファンで仕入れた「楼蘭ワイン」を取り出します。
向かいのお母さんに「一杯いかがですか?」とすすめますが、「とんでもない」と笑って手を振ります。
私と一緒にピーナッツを食べていた女の子。ワインにも手を出そうとするので、それはさすがに制します。
また駅を通過。この駅の周りには何もありません。何のために造られた駅なんでしょう。
10キロ間隔ぐらいで、駅が現れますが、この列車は通過。
そもそも停車する列車ってあるのかな。ほんとに、何もない場所です。
通路側に出ると、天山山脈の万年雪が見えました。
長旅にもめげない元気な子供たち。
トルファンを出てから6時間ばかり。雪を抱く天山山脈を、何するでもなく眺めていると、ほんとに旅人の気分になります。
こんなところを旅することができるのも、10連休のおかげです。
天山南路は、「一帯一路」構想の基軸の一つ。せめて、自然を壊さないように構想を進めてほしいところです。
日本では見ることのない景色を目の当たりにし、茫洋とした気分にもなります。自分が小さく見えるなぁ・・・
気分転換に、隣の硬座車をふたたび見学。
激混みだった、トルファン出発直後からは、だいぶ改善してますね。でも、まだ立ってる人いるし、座ったままの長距離移動は肉体的負担がきついだろうな、と思います。
座席車で、旅をしまくっていた若い頃が懐かしい・・
ちなみに、トルファン~カシュガルの硬座は約2,500円です。軟臥車の3分の1です。
何度目かの、水のない川を渡ります。町が近づいたかな。
コルラを出てから2時間。16:03に輪台という駅に到着です。
この辺りからの乗客は、カシュガルへ行くのでしょうか。
輪台を発車して、ふたたび通路へ。女性車掌がカーテンを引いたのかな。
古代シルクロードをイメージする刺繍でした。