標高2,640m、首都としては世界で3番目に標高の高いボゴタ。
それだけじゃないけど、前にも書いたように、コロンビアには若干の特別な思いがある。
そんな他愛もない私個人の感情を振り返りながら、アートに満ちたボゴタの街を歩いてみようと思います。
動画での様子はこちら
旧市街ラ・カンデラリアのストリートアート
ボゴタの東にそびえるモンセラーテの丘から下りてきた私は、ストリートアートに迷い込みました。
ストリートアートが育まれる背景には、その街の歴史的経緯や文化が色濃く影響するもの。
ボゴタも例外ではなく、コロンビアにおける長らく続いた内戦。
麻薬カルテルの影響や武装勢力との闘争が激化、都市部では暴力や貧困が蔓延し、多くの人々が抑圧された状況にあったとされます。
こうした社会への不満や不安定さが、アートを通じて表現されるようになった、ラ・カンデラリア地区のストリートアート。
コロンビアには「ビオラ」と呼ばれるストリートアートの伝統があり、ラ・カンデラリア地区はその発祥の地とも言われている。
まさに、コロンビア市民たちのアイデンティティを表現する場。
そんなところに、日本の国旗があるのが嬉しい。
ディテールまでていねいに描かれたアートは、旅人の歩みを止めます。
標高2,600mの高地に、まさにペイントの香りが広がっていく感じがする。
南米大陸だけじゃないけど、南米大陸には、コロンビアのような歴史を持つ国が少なくない。
そして、南米大陸は日本から見て遠い場所。
地球儀を持ち上げないと確認できない、地の果てのような場所。
だから、私のような会社員トラベラーには、簡単に来れるような場所ではない。
そんな旅心をときめかせる大陸なのに、政情は安定せず、治安も良いとは言えない。
外務省の渡航危険度レベルで、南米大陸で茶色やオレンジ、そして赤い場所があるのはコロンビアとベネズエラだけ。
他の国、たとえばブラジルやアルゼンチン、ペルーやボリビアも、お世辞にも治安良しとは言えないけど、外務省の危険度レベルは1だ。
つまり、その気になれば、いつでも行ける国。
そういうことがからみあって、コロンビアに対する旅人の魅力をかきたてているのだと思う。
歩いてて、どうしても意識してしまう壁画の目。
強い目線でありながら、旅人を見守ってくれる目にも感じる。
そして路地の角を曲がるたびに、別の世界が広がっていくようだ。
月並みな表現だけど、素敵な街だと思う。
坂道を歩き回れば、それなりに汗をかくはず。
しかし、気温15度のボゴタではそれがない。
8月なのに日本の初夏のような気候。
街をはき清める人たちもいるみたいだった。
治安も改善傾向にあるボゴタの街
長年訪れたいと思っていたコロンビア。
その気持ちを躊躇させていたのは、間違いなく治安の状況だ。
外務省の情報によると、2000年代に入ってから、政府や治安当局の取り組みによって、治安は大幅に改善されたとある。
とはいっても、経済格差や貧困がもたらす社会不安はコロンビアを完全に払拭したわけでなく、窃盗や強盗などの犯罪が昼夜を問わず多発しているのも事実。
日本人の旅人の目から見ると、海外へ渡航する際の「治安に注意」は常套句のように聞こえてしまうかもしれない。
実際、私なども50回を重ねる海外渡航において、詐欺や恐喝にあったことはあっても、命を落とさずに帰国している。
「命を落とさず」なんて、大袈裟な表現と思うかもしれないが、南米や中米では、いやおそらく北米も、そういうエリアなんだと、私はつねに戒めながら街を歩いている。
私が、そんな気持ちになったのは、2016年の秋。
いずれは長期間の旅に出たい、と願う私は、いわゆる「世界一周ブログ」を読み漁っていた頃。
そんな臨場感のあるブログのひとつが、大学を休学して世界一周に旅立ったある学生さんだった。
彼は、就活がはじまるまで1年間大学を休学。
2016年2月にフィリピン・セブ島へ渡ったのを皮切りに、マレーシア、バングラデシュと歩んでいきます。
私も、一緒に旅しているような感覚。
こんな臨場感のあるブログって、大好きなんだよな・・・
ところが、彼が順調に地球を西回りに進み、メキシコを経て、コロンビアに渡ったところ・・・
なんと、彼はメデジンという街で、現地住民に殺害されてしまいました。
犯行の動機は強盗。
2人組の強盗は拳銃を2発発射し、彼は即死だったらしい・・・
このニュースを知って、私は、正直背筋が凍りました。
彼は、私と同じように(ていうか、彼の方が旅歴は先輩ですが)、旅の出来事を綴り、写真を貼り付け、記憶財産のようにブログを書き進めてました。
そして、リアルタイムで進んでいた世界一周紀行が、途中で絶たれる・・・
とても事実とは思えず、受け入れられなかった・・・
彼のブログは、メキシコを出国したところで止まったまま。
あらためて、このお亡くなりになった学生さんに謹んでお悔やみ申し上げます。
そんな出来事を目の当たりにしているので、治安が悪いという聞き慣れてしまったような警告にも真摯に目を向けなくてはいけないと思ってます。
平和のように見えても、人々の営みの裏側には、抜き差しならないような状況がひそんでいるということを、しっかりと理解しなくてはならない。
そんなことがあった国なので、街を眺める際も、どうしてもそのことがアタマをよぎる。
ホテル前に戻ってきました。
それにしても、立体的な街だ。
ホテルの名前は「ホテル・デ・ラ・オペラ」。
ホテルの前の通りは、「カジェ10」。歩行者天国になっています。
こんな街の表情を見てると、正直、治安の悪い側面があるなんて信じられない。
ラテン系の人々の本質は明るく屈託がない。
そして、コロンビアを訪れた旅行記ブログを拝見すると、どのブログも喜びに満ちている。
でも、私は、前述のようにやっと治安が安定しつつあるコロンビアを見たい、という思いで訪れている。
だからどうしても、目に映る風景が神妙なものになってしまう。
たぶん、今日と明日だけでコロンビアを旅立たなくてはならないというのも、そうさせていると思うけど。