さて、北回帰線が通る台湾南部の街嘉義にやってきました。
嘉義という街自体には、特にめぼしい観光名所などは少ないのですが、街の東、というより台湾中央にそびえる標高3952mの玉山を含む一帯が阿里山遊楽区とされていて、台湾の観光地のひとつなんです。
その阿里山へ登る手段がバスと鉄道。
そして、その鉄道が、狭軌と呼ばれる日本の鉄道(JR)のレール幅よりさらに30cmも狭いミニ列車が、ぐるぐると山を鉢巻のように巻きながら登っていく登山鉄道。
この列車に乗ること自体がレクレーションという側面もあるようです。
私が、台湾の阿里山鉄道の存在を知ったのが、故宮脇俊三氏の「台湾鉄路千公里」。
出典:宮脇俊三著「台湾鉄路千公里」
氏の旅行記は、本当に楽しく読め、私はどうしても阿里山へ行きたくなってしまいましたが、2006年にその夢がかない、阿里山鉄道で玉山に登って旅館に泊り、翌朝は日の出をみました。
それ以来、17年ぶりの阿里山鉄道ということなんですが、急峻な山岳地帯にレールを敷いていることもあって、実は事故も多い。
倒木や土砂崩れをくらい、何人も犠牲となってしまった事故が過去に何度かあり、現在も途中の街「奮起湖」の先「十字路」という駅で運転はストップ。
出典:阿里山林業鉄道パンフレットより
阿里山へ赴く人は、そこからバスというルートになっています。
今回の旅を企てるにあたって、当初は17年ぶりに阿里山の宿に泊まり、幻想的な日の出を鑑賞しようと思ってました。
ところが、どの宿も満室。
3月下旬、阿里山はサクラに覆い包まれる時期らしいんですね。
一計を案じた私は、途中の街「奮起湖」の街歩きに焦点をかえました。
「奮起湖」といっても、湖があるわけでなく、こぢんまりとした古い街並みがあるだけのようですが、そんな山中の街をたずねるのもまた楽しいでしょう。
という経緯で、9:30のミニ列車に乗るべく、台北から新幹線で8時半に嘉義駅にやってきたわけです。
阿里山林業鉄道のチケット
嘉義駅前から阿里山に向けて発車するバス。
1日2本で乗り換えも必要な鉄道より、バスの方が便利だし人気もありそう。
私も最初は、バスでもいいかな、なんて思ったんですが、バスだとWEBサイトが見つからず、鉄道ならWEBで予約できたので、鉄道にした次第。
今の時代、WEBでの予約というのは必然ですね。特に私のような弾丸旅行者には。
ギチギチに予定を入れてるので、予定が狂ってしまうことがコワい。
こんな具合に、簡単に予約できます。
ただし、2週間前にならないと予約できないのと、観光シーズンは旅行社がまとめて予約してしまうケースがあるとのこと。
私も、当初希望した日程では予約できず、日にちを変えました。
そして、パスポートを窓口で見せることで、チケットを発券してくれるわけです。
窓口のおばさんは親切で、身振りと筆談で「9時ちょうどの列車のチケットが残っているが変えるか?」と聞いてきました。
でも、9時半の列車の窓際の席がせっかくとれてるので、ていねいに辞退。
奮起湖まで384元(1651円)でした。
窓口の横に貼られたマップも、十字路から先は通行止めになってますね。
開通した暁には、ふたたび乗りに来る楽しみができました。
さて、チケットも手に入ったので、発車まで嘉義駅の駅前を散策。
朝ごはんでも食べておきたいところだけど、朝早くてどこも開いてない。
マックは開いてました。
フィレオフィッシュセットと、ブラックコーヒーで、あらためて二日酔いのアタマを立て直します。
嘉義駅 阿里山林業鉄道0番線ホームの様子
たぶん、嘉義駅の駅舎、むかしのままだと思う。
一歩入った瞬間、17年という時が縮まりました。懐かしい・・・
ホームに止まっているのは、真新しい特急列車のよう。行き先を見たら「台東」でした。
さて、阿里山鉄道のホームは、もっと先です。
京都駅の山陰線ホームのように、本線のホームの先端を切り込んで設けられた、いわゆる「0番線」が阿里山鉄道のホーム。
このレールの間が狭い線路を見て、また17年の時が縮まりました。ほんと懐かしいわ・・・
隣のホームから、さっそうと発車していく特急列車。
列車の往来が激しい嘉義駅。
ここはまだ、標高30mですか。
阿里山鉄道の開通は1912年。歴史はゆうに100年を超えます。
このレールも、まさか100年前?
もういちど席を確認。えーと、3列シートだから、13番なら、単独席の窓際のはず・・
線路の幅は762mm。日本のJRは1067mmより30センチ狭く、標準軌とされる新幹線の1435mmと比較すると、67センチも狭い。ていうか、新幹線のほぼ半分。
これでも、列車って走れるものなんだね。
お、列車がやってきました。
いやあ、この機関車見て、また17年前を思い出しました。旅って、しておくものだなw
小さいけれども、力強そうな顔に体躯。奮起湖までよろしく。
では、乗りましょう。
座席指定なので慌てる必要ないけど、自由席の人たちは、争うように前方の車両に群がっていきました。
十字路は、奮起湖の2つ先の駅。
そこまで行ってもよかったんですが、十字路には街がないみたいなので。
今日は2023年3月19日(日)。家族連れも多いです。
嘉義駅の様子〜発車直後の動画はこちらです。
阿里山鉄道の乗り心地「嘉義 ⇒ 奮起湖」
さて、発車です。9:30の阿里山3号列車。
13番席は、イメージ通り、単独の窓際席でした。
家並みをかすめる感覚。窓は開かないけど、手なんか出したら、ケガしそう。
操車場のわきを通過。
住民にも愛されている鉄道のようです。
嘉義の街の北外れ、ではなく、実は街の中心「北門」に停車。
まだ、ここも標高は31m。
本格的な登りになるのは、竹崎という駅を過ぎたあたりから。
窓外に映る熱帯の樹木。
やっぱり、今の時期、桜が開花するみたいですね。
そして、竹崎駅に停車。
ここから本格的な登りとなるため、かつてはここで機関車を回していた広い構内。
竹崎を出ると、列車の速度がガクンと落ちます。
そして、すごい乗り心地だ・・・悪いという意味でw
バナナの木なのかな。
すごい急カーブ。ちなみに、嘉義駅からずっとバックで走ってます。
突然、見晴らしがよくなりました。
窓を開けたいところだけど、快適なクーラーが効いてます。
たぶん窓を開けられるようにしたら、危険なんだろうな。
家の軒先や、樹木が車両ギリギリをかすめますから。
「樟脳寮」駅。ここが、独立山スパイラルの起点です。
ここからトレッキング、というか、登山をする人もいるみたい。
ここからの車窓の様子はこちらです。
「梨園寮」駅。3重にもなるループ線を登り終えた駅。標高は904mまで上がってきました。
「交力坪」駅。阿里山鉄道には、記憶に残る独特な駅名が多い。標高は997m。
交力坪を発車する際に、見送ってくれた住民。私も手を振ってますw
とにかく線路のうねり方がすごい。左右だけでなく、上下にもはねるものだから、船にでも乗ってる感じ。
完全にダウンした乗客も見受けられます(^ ^)
「水社寮」駅。これまた変わった名前だ。
標高は1186m。奮起湖の標高は1403mなので、まだあと200m以上も登るんです。
このあたりから、気候区分が熱帯から温帯にかわるそう。
車窓を見ても、なんとなくそんな雰囲気。
奮起湖が近づいて、窓外のハイカーたちも増えました。
そして奮起湖に到着。12時ちょうど、定刻です。
嘉義からの45.8kmを2時間半ですから、速度は18.3km。
でも、そんな意地悪を言ってはいけない。
標高差1373mを45.8kmなんだから、平均勾配が29.97パーミル。
30パーミルが45kmもつづく鉄道なんて、日本にはないんだから(^ ^)
でも、上下左右に揺られながらの2時間半、疲れたのも事実w
バスとどっちが乗り心地いいのかな・・
でも、ホームを歩くうち、ひんやりした空気を実感。さわやかな高原といった感じの駅です。
線路内を平気で歩ける、日本では見られない光景。
では、折り返しの14時半まで。奮起湖の街の散策と参りましょう。