昨日は、それなりの強行軍に、ほどよいバスの揺れ。
そして、ゆったり倒れるシート。春眠をむさぼるにはもってこい・・・
途中、何度かバスがとまり、乗客がどっと乗ったり、入れ替わっていた感触はありましたが、どこかのバスストップか、トイレ休憩かなにかだろうと意に介さず・・・
異変を感じたのは、朝5時過ぎ。
寝過ごしてイスファハーンを素通り?
バスが、どこかのターミナルのような場所にとまっていて、乗客も運転手も車掌もみんな降りてしまい、車内にいるのは私だけ。
外は、まだ真っ暗。でも、朝5時なら、ここがイスファハーンであってもおかしくはない。
と、寝ぼけ眼で考え、しばらくして戻ってきた運転手と車掌に「ウエア イズ ヒヤ?」
英語が通じないので「イスファハーン?」と聞きなおす・・・
とたんに、運転手と車掌さんが、2人同時に「オーッ!!」と、欧米人のように両腕を開くアクション。
一目で理解しました。乗り過ごしたな、こりゃ!
念のため、私のチケットを再確認。そして、「ソリー!ソリー!」を繰り返します。
乗客が、目的地のターミナルで降りるように誘導するのも車掌さんの仕事ということなんでしょう。
若い運転手もしきりに恐縮しています。
ふー・・・ やっちゃいましたね。
そもそも、私はこのバスはイスファハーン行きで、終点で降りるものと、勝手に思い込んでいた。
このバスは、テヘラン行きなのでした。確認不足、完全に自業自得です
それはそうと、イスファハーンに戻らなくてはなりません。
どうやって戻ればいいか聞くまでもなく、お二人は鳩首会議。もちろん、何を言っているのか100%聞き取れず。
そして、でた結論は、「デンジャー! デンジャー! 60ミニッツ!」 そして、そのまま乗ってろというしぐさ。
「デンジャー」と「60ミニッツ」だけで、どう理解したらよいのだろう??
この2人組は、私をなんとかして、イスファハーンに送り届けようとしてくれている。そして「デンジャー」と「60ミニッツ」。
このあたりは危険だから、そのまま60分、このバスに乗ってろ。そうすれば、イスファハーンに向かうバスに乗り換えられるから。と、勝手に解釈(笑)
たしかに、こんななにもない暗闇の街道沿いで1人過ごしたら、危険極まりないし、イスファハーンに行く方法もわからない。アドバイス通りにシートに座ったままにしていましょう。
ちなみに、イスファハーンを過ぎちゃっていますが、チケットはいらないとのこと。
そうこうしているうちに、他の乗客たちが、ぞろぞろと戻ってきました。ここはトイレ休憩だったようです。
いま自分のいる場所がよくわからないまま、バスは発車。私の引き起こしたハプニングの間に、空は白みはじめていました。
窓外を眺めながら、出来事を回想。
イスファハーンが終点だと決めつけていたのは、不覚の至りだけど、「地球の歩き方」には、シラーズからイスファハーンはバスで約8時間とある。
昨夜、出発は30分以上遅れたし、まさか、4時台に到着するなんて思わないです。
イスファハーンに着くのは、何時ごろになっちゃうのかなあ・・・
などと思いながら、窓外に目をやります。もうとっくに、眠気は冷めてます。
太陽も昇ってきました。
しかし、「60ミニッツ」と言ってくれた運転手は、時間のことなどお構いなしに、ひたすら砂漠の中の道をとばします。
もうとっくに「60ミニッツ」は過ぎ、もうすぐ7時になろうというところ。
バスはテヘランに向かって走り続けます。そして、どんどんイスファハーンから遠ざかっていきます。
すると、運転手は、ゲートがいっぱい並んだ料金所を通過したところでバスを道端に止めました。
そして、私を手招きします。ここで、降りろということか・・・
親切なイラン人運転手 ありがとう!
言われた通り、荷物をかついで、運転手の後ろを追いかけます。
クルマがビュンビュンとばしてくる高速道路を、運転手と一緒に横切ります(+o+)
そして、運転手は、ゲートのなかのおじさん一人一人に声をかけ、
「イスファハーン行きのバスが通ったら、この日本人を乗せてやってくれ!」
と、言ってくれてるじゃありませんか。
正直、涙が出るほど感動しました! イラン、バンザーイ!(^^)!
すると、いくつめかのゲートで、「たった今通って、あそこで休憩してるぞ!」との情報。
すかさず運転手は、「おい、日本人、あの青いバスだ。急げ!」
「ヘイリー マムヌーン!(ありがとう!)」運転手さん! そして、料金所のスタッフさん!
握手をして感謝の意を示し、私は駆け出しました。
運転手の配慮に感激している私でしたが、バスを捕まえなくてはどうにもなりません。
ピンクの向こう側にいる青いバスです。もう全力で、一生懸命走ります(写真撮ってる場合じゃないだろ(笑))
バスの入り口付近でタバコを吸っていた関係者らしい人に、「イスファハーン?」と告げると、ちょっと驚いた顔をしていましたが、うなずいて「乗れ」。
200,000リアル(約700円)払って、乗り込みました。
3列シートの高級バスのようでした。
運転手に、「イスファハーン、ハウロング? 2アワーズ? 3アワーズ?」と確認すると、笑って「2アワーズ!」
ついでに、「ウエア イズ ヒヤ?」と聞くと、「カーシャーン!」という答えが返ってきました。ここは、カーシャーンなんですね。
ただ今の時刻は7:10。すると、イスファハーンに着くのは9時過ぎころ。
ホテルを探すのに手ごろな時間であることに加え、ここカーシャーンからイスファハーンまで、特等席でイランの大地を鑑賞できる。
なんという結果オーライ(笑) ハプニング万歳となりました。
もう何も心配はありません。
長距離バスは、よく舗装された高速道路をイスファハーンに向けて走ります。
棚ぼたのイランの大地 高速クルージング
はるばるイランまで来て、街と街のあいだの景色を見れないことに、ずっと引っかかっていたんですが、なんという幸運でしょう。
まわりは、赤茶けた砂漠、というか岩肌。
ところどころ、サービスエリアがあります。日本と同じですね。
ところが、そのサービスエリア付近の高速道路上で、男女が降りていきました。
なんなんだ?? 日本では、あまりありえない。
雪をかぶった山が現れます。標高高いし、冬は寒いんだろうね。
もう、完全に安心していますが、イスファハーンの看板を見て、さらに安心(笑)
左へ行ったらヤズド。ゾロアスター教の街ですね。
次回のイラン旅行が実現したら、訪れたい街です。
おおッ、遊牧民でもいるんでしょうか。
ほんとに快適なドライブ。
タクシーと違って、目線が高いから、眺めもいい。アルゼンチンを思い出すなあ。
イスファハーンまで120キロですね。(やれやれ、120キロ以上も寝過ごしたのか)
私が便乗させてもらってから、小1時間は走っています。2時間で着くのは無理だね(笑)
だいぶ、陽も上がってきました。澄んだ空気を感じさせる景色。
我がバスは、どちらかというと安全に走っていますが、すごいスピードで強引に抜いていくのもいます。
よく事故が起きないものです。
すごくロールしてるし。
イランの主要な移動手段バスの旅ができて、ほんとに嬉しい。
それにしても、乾いた大地に、緑があるのって、ほんと不思議。
起伏もあります。
日本では絶対経験できない、雄大な大地を行くドライブ。
この辺の道も、昔は、東西貿易の要衝だったんでしょうね。
地の果てを感じさせます。
人の生活の匂いがしてきたかなと思うと、
イスファハーンが近づいたようです。
街に入りはじめました。