円安相場が定着してきた。
阪神大震災のあった1995年や、リーマンショック後の2008年には、ドル円相場は75〜79円で、現在は単純比較でその倍程度、1ドル150円台が定着しつつある。
経済学的には、経常収支が黒字、すなわち輸出額のほうが輸入額より多くなれば円高要因。
しかしながら、私を含めてサブスクで毎月それなりのカネを米国に支払ってるのだから、もう日本の貿易収支は簡単には黒字にはなりにくい気がする。
個人だけでない。
企業だって、デジタル化、DX対応の多くはAWSなど米国企業のクラウドを利用するのだから、経済構造は完全に変わってる。
世の中は、日経平均株価が34年ぶりにバブルを超えた、などと言い合ってるが、この相場が崩れた時、はたして「有事の円買い」は起こるのだろうか。
円安がもたらすのは、物価の上昇、すなわちインフレである。
これも教科書的には、デフレだと経済価値の総量、つまりGDPは増えないので、緩やかなインフレが望ましいとされているが、可処分所得の増加率がインフレ率を上回らない限り、購買力は落ちる。
そして、いくら企業が給与水準を上げても、高齢化&人口減少の日本では社会保障費が増大するばかりだ。
その社会保障費を必要としている層が選挙権の大半を占めているのだから、日本に内部的な変革を求めるのは不可能だろう。
日本列島は、稼ぐ能力を身につけていないと、生きていくのが苦しくなるワンダーランドになってしまった。
香港の庶民の味の物価に驚いた日 38HKDの点心
香港の旅の最中に、なぜ、前述のような哲学的な境地にはまったのかというと、あまりに香港の庶民料理の価格と、そこで食べてる香港市民の日常さに、ギャップを感じたからだ。
「ルネッサンス香港」に泊まった翌朝、割と早くに、湾仔の路地を散策した。
こんな感じの、香港らしい路地。
そこで、午前6時から開いてた飲茶屋さん(点心屋さん)に入ってみた。
店内には地元の人しか居なく、それでいて、私のような外国人が入っていっても排他的雰囲気はまったくない。
やっぱり、香港の朝といえば、粥か点心でしょう。
実は、メニューを見るひまもなく、なにやら言われたので「点心、点心」と言ってたら、でてきたのがこれ。
地元の人にまじって、同じものを食べる。
ひとり旅の醍醐味。これが楽しくて旅してると言っても過言ではない。
これから勤めに出るのか、あるいは余生を楽しんでいるのか、
香港の人たちに囲まれていただく飲茶が、このうえなく美味い。
ところが、でてきたレシート見て、ちょっとびっくり。
この1品だけで、38HKD(722円)^ ^
2品オーダーしてる人もいる。つまりは1500円以上・・・
大変失礼な話ではあるが、日常習慣的に50HKD札や100HKD札で、お爺さんお婆さんが支払っていく光景と、店の庶民的雰囲気にとてもギャップを感じた。
ちなみに、味はとても美味しかった。湾仔のこのお店です。
53HKDの水餃子
さて、湾仔をくまなく歩いて、昼ごはんに立ち寄ったこのお店。
餃子ひとすじといった感じの人気店。
メニューを見れば、これまたいいお値段が並んでる。
でも、店内は、やはり地元の香港市民。けっして高級店ではない。
そして、ふつうの水餃子、53HKD(1007円)w
餃子の王将もびっくりの価格だけど、味はとてもしっかりしてた。
スープはあっさりめ。
でも、ラー油をのせると、ぐっと味が際立つ。さすが中華料理。
10個入りの水餃子。
すなわち餃子1個100円の勘定だけど、味は間違いなく美味しい。
湾仔のおすすめのお店。
60HKDの焼豚丼
値段のことばかりで気がひけるが、今度は上環に回って、夕方に寄ったこのお店。
軒並み50HKD(950円)を超えてます^ ^
もちろん、お店は、地元民で賑わうふつうの店。
焼豚丼が60HKD(1140円)ですか、心して食べよう。
これが1140円か・・ほんとに心して食べよう(^ ^)
でも、柔らかくてジューシーなチャーシュー。こんなの久しぶりに食べた。
むしろ、なんの変哲もないお米とがアンバランス。
こんな、なんでもない庶民の店が、1食50HKD以上。
もう、これが世界のスタンダードなのだろうか。
橘玲氏の著作を思い出す
香港でこの物価を体験して、橘玲氏の本を思い出した。
この本では、無策の政府が国債を発行し続け、「急激に」ではないが、「高金利、円安、高インフレ」の世界が日本を襲い、そんなとき、庶民の生活がどうなるかを描いている。
たとえば、
失業率は7%超え。掃除業者がストライキを行い、東京の街はゴミだらけ。
原材料の高騰から紙の新聞や雑誌は消え失せる。
スタバのカフェモカが3800円。
公共交通機関が相次ぐ値上げ。どの企業も交通費を支給しなくなる。
こんな世界だ。
経済学者が書く眠くなるような教科書ではないので、大変面白く読める。
世間はマイナス金利解除だなんて騒いでるけど、日本国民は国債、つまり日本の借金を日銀が買い続けていることを知ってるのだろうか。
買い続けてくれているから、日本の金利は低金利なまま。
買い続けられなくなった時、すなわち、外国に買ってもらうようになった時、日本の国債はグローバルスタンダードの中に放り出される。
日本の価値がグローバルな水準で決まるとき、金利や物価はどんな値をつけるだろうか。
いずれにしろ、そうなったときに生活できるかどうかは、結局は自分自身に生活能力があるかないかだけだ。
香港の人たちは、何事もないような表情で、点心や餃子を食べていた。
1食1000円以上の勘定をふつうに払ってた。
こうなると、500円玉1枚で腹を満たせる日本の物価が、まだ可愛く見える。
すき家のさば朝食が470円なんて時代がずっと続くことを願いたい。