各航空会社が提供するマイレージプログラム。
これによって、航空会社は、自社グループの航空機に乗ってくれる確率が高まり、消費者側は、リピーターとしての恩恵をいただける。素晴らしいシステムだと思います。
ところで、このマイレージに逆風が吹いていることを、マイラーの皆さん感じとられてますか?
政府がすすめるキャッシュレス推進施策がマイラーに与える影響
日本は、どうも現金主義らしい。
日本のキャッシュレス決済比率は20%弱。これは先進国では著しく劣っている数字であり、政府はこのキャッシュレス比率を2025年までに40%にする目標を掲げ、生産性や効率性をあげる戦略のようである。
この施策に、私が興味がわかないのは、そもそも分母と分子が他国と物差しが合っていない中で、他国と比較しても意味がないから。
給与振込みされた銀行口座などからの口座振替による消費は、キャッシュレスに含まれていないようだし、それを加えれば、日本のキャッシュレス比率は50%を超えるという試算だってある。
だから、分子を小さくすることで、日本がものすごく遅れているという説を唱え、それで得をする連中が自民党をけしかけていたのだと思ってました。
ここまでだったら、なんてことないハナシです。
加盟店手数料の高さがキャッシュレス推進の弊害となっている?
ところが、ここで思わぬ風が吹きました。
政府からこんな意見が出てきたのです。
出てきただけでなく、消費税増税時に合わせて実施されたキャッシュレス還元事業では、加盟店手数料を3.25%以下にしないと、ポイント還元の対象にはならないと決定。そして、今に至ります。
この風、マイラーにとって、順風か逆風かわかりますか?
答えは、逆風です。
風が吹けば桶屋が儲かるではないですが、なんと日本のキャッシュレス比率の低さが、マイラーの逆風になってしまいました。
そもそも加盟店手数料とは何か。
簡単に言うと、クレジットカードなどでお店で買い物したときに、加盟店が負担する手数料のこと。
これが5%なら、1万円の買い物をしたときには、お店は5%にあたる500円をカード発行会社(イシュア)や加盟店管理会社(アクワイアラ)に払うことになります。
これが高すぎるから、販売店がキャッシュレス決済の加盟店になりたがらないのだ、と経済産業省は意見を申したのです。
マイルはどこから発生しているのか
そこで考えたいのは、飛行機に乗ったときにもらえるマイルは別として、買い物したときにもらえるマイルなどのポイント。
先の例でいえば、5%にあたる500円が、キャッシュレス決済に関わる会社の売り上げです。
詳しい説明は省きますが、これをイシュアとアクワイアラが取り決めた料率で按分し、VISAなどにブランド料などを支払った残りが利益。単純に考えて、5%が3.25%になれば、売り上げの圧縮になります。
マイルなどのポイントが、この売り上げをベースに、広告費として消費者に還元されているのは自明の理。マイルは、空から降ってくるわけではないのです。
マイルの還元率が下がる?
現金主義の消費者を、キャッシュレスに呼び込むためでなく、キャッシュレスの加盟店を増やすために加盟店手数料を下げさせる。
この下げさせる、というところが問題で、本来、資本主義社会であれば、需要と供給によって、あらゆるものの価値が決まるのに、政府は強引に3.25%まで引き下げてしまった。
キャッシュレス還元事業が終了する2020年6月には、またフリーになるとはいいますが、一度下げた加盟店手数料を元に戻すのは、なかなか難しいでしょう。
マイルの還元率の高いクレジットカードには、還元率1%を超えるものもあります。
収入が3.25%に抑えられているのに、そのうちの1%以上を消費者に還元するのでは、単体では赤字になるのはもはや明白。
特にマイルで還元する場合、マイルは1マイル=1円ではないので、1%以上還元するカード会社は、実質2%以上を消費者に還元していると予想されます。
その消費者が、それ以上の付帯取引をカード会社にもたらしてくれるような施策を考えない限り、カード会社側は、マイルの還元率を下げざるを得ないと思います。
ここからは推測ですが、キャッシュレスを社会に広げるために、口座振替を除いた数字で各国と比較をはじめたのは、いったい誰なのか。
私は答えを持っていますが、棘がたつのでここでは言いません。
はっきりしているのは、キャッシュレスに関わる事業において、新興勢力と既存勢力では、マイルの発行に関わっているのは既存勢力であるということ。
マイルというのは老舗なんですよね。
既存勢力の力が弱まれば、マイラーへの恩恵も弱まることになります。
キャッシュレスは本当に日本経済発展に寄与するのか
ハナシがいきなり大きくなりましたが、私は本意見には懐疑的。
キャッシュレスが進むことで、現金流通量が減り、しいては経済取引が効率的になって生産性も上がるという理論なんでしょうが、私はそうは思いません。
キャッシュレスで生産性が上がる?
まず、効率的になって生産性が上がるという点については、日本国民全員がキャッシュレスで取引するならいざ知らず、1人でも現金を使う人がいたら、その店は現金取引のスキームを用意しておかなければならず、効率化になるわけがありません。
少なくとも、キャッシュレス比率40%程度では、ほぼ変わらないでしょう。
北欧のように、現金取引をシャットアウトするお店が出始めれば状況は変わってくるでしょうが、日本では無理だと思います。
さらに、いくらキャッシュレスを政府が推して、国民がカード決済などに移行したとしても、従来から現金で買い物していた消費額が、キャッシュレスに移るだけで、GDPの総額は変わりません。
キャッシュレスになったら、国民はいきなり消費を増やしはじめるとでも言うのでしょうか?
このあたりは、実は、さきほどの加盟店手数料の問題にも絡んでいて、加盟店手数料が一定料率で維持されていれば、消費者への還元も進み、消費の後押しになることは考えられます。
一方で加盟店手数料が引き下げられ、消費者への還元も尻すぼみになったら、消費意欲も減殺される可能性はあります。
私自身も、「マイルがもらえる」という動機だけで、購買意欲50%程度のものを買ってしまう傾向がありますが、マイルがもらえなかったら、絶対買いません。買う意味がない。
結局、人口減少の日本社会で、社会のスキームを変えるだけで、経済を活性化させるのは困難ということですね。
インバウンド狙い?
年々増え続ける訪日外国人観光客。彼らの多くは、キャッシュレス決済が生活の一部でしょうから、そのためにクレジットカードやQRコード決済が可能なお店を増やすことには意味があります。
政府の狙いは、結局ここでしょう。
それに、現金取引が減って、キャッシュレス取引、すなわち電子取引にトランザクションが移行すれば、情報銀行など新たな経済分野が現れたり、取引の透明性が増すことで、税収のアップにつながる。
このあたりが、日本でキャッシュレスを推進する意義の限界のような気がします。
今後のマイラーの生き方
ところで、私はANAマイレージを一生懸命貯める、ANAマイラーです。
私は陸マイラーではない、と思ってますが、今まで貯めたマイルのうち、実際に搭乗して獲得したマイルより、クレジットカード利用などで貯めたマイルの方が多いので、陸マイラーです(笑)
たしかに、今後、マイラーにとって逆風は吹くでしょうが、カード会社側も顧客をつかむために努力をしてくるはず。
いきなり、一気にマイル還元率が下がるとは考えにくいでしょう。
対策などないですが、結局は、今まで以上に懇意にしているカードに決済を集め、日常消費のすべてをクレジットカードで行う。オーソドックスですが、これが肝要ですね。
私は、「ANAダイナースプレミアムカード」をお供にしています。
マイル還元率は1.5%(ANA提携店だと2.5%)なので、年間消費額のうち仮に300万円を決済すれば、その時点で45,000マイル。
継続時のボーナスマイルが10,000マイル。そのほかに、ポイントサイトを経由したり、実際に搭乗したマイルを加算、さらにスルガ銀行のマイル定期預金などからのマイルを加えれば、だいたい年間7~8万マイル貯まります。
そうなれば、毎年、ビジネスクラスでの旅が可能になります。
「ANAダイナースプレミアムカード」の年会費は17万500円。
とんでもない高さですが、数十万円かかるビジネスクラスでの旅を得られるなら、今のところメリットあり、という損得勘定をしています。
300万円の決済だって、家族4人で生活していれば、年間そのくらいお金がかかります。それを地道にカードで決済していけばいい。それこそ、コンビニでの100円の買い物まで。
年会費だって、毎月14,200円積み立てて、年に一度ビジネスクラスで旅をしている、という考え方だってできますよね。
日本のキャッシュレスが今後どうなるのか、想像もできませんが、我々、旅を愛する現役世代の人間は、一生懸命知恵を絞って、有意義な旅のプランを見つけていこうではありませんか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。