ドラマは、食事をが終わって、町を歩き出してすぐに起きました。
ホータンの警察はカメラが嫌い?
上の写真を撮った次の瞬間、大声がして、ものすごい勢いで反対車線のほうから、警官が3名、全力で走ってきます。
それも、火炎瓶とかを避けるシールドを持ちながら。(戦争でもはじめるつもりかよ・・)
そして、私の腕をつかみ、カメラを見せろという。
このときの警官は威圧に満ちた表情そのもので、私のカメラの画像を1枚1枚チェックしています。
どうも、あのホテルを撮ったことを、警察関係者を撮影したと勘違いされたらしい。
警官も、勘違いだったという顔をして去っていきます。
それにしても、あの勢いすごかったですよ。
殺人犯を取り押さえるぐらいの形相でしたから。
この町では、警察関係者が被写体になるというのは、凶悪犯に匹敵する罪になるんでしょうか。
ちなみに、漢族の警官でした。
警察関係者を撮るな、と言われてるから、私だって、それらを避けて撮ってるんです。
これらの被写体のすぐ脇には、それこそ警官がわんさかいるんですから。
「ホータン老城」の計画?
気を取り直して、バザールのほうに歩いていきました。
ホータンでは、バザールが、もっともホータンらしいところだと言われています。
歩いていて、また違和感を感じました。
この一角、建物がみんな改築中なんです。
なんか、すごいことを計画しているのでは。
町全体を、ゼロから作り直す、そんな強い意志を感じざるをえません。
このあたり一帯は、たぶん旧市街があった場所。跡形もないです。
「カシュガル老城」ならぬ、「ホータン老城」でも造ろうとしてるように見えます。
これ、数年後にホータンに来てみたら、どんな風になってるんでしょうか。
どこを歩いても、TDLやハウステンボスのような町並みになっていたりして。
そして、ここで、また警官がすり寄ってきて、カメラをチェックされます。
この建物の隣にモスクがあったんですが、それを撮った瞬間も、警官が飛んできて、今度はモスクの写真は消されました。
モスクを撮っていけないなんて・・・
いったい何を撮ってはいけないんだ?
はっきり言って、私はこんなオモチャのような建物が見たくてホータンに来たのではありません。
ウイグル人が生活を営むオアシス都市としてのホータンを見に来たんですが、どうも、それはかなわぬ夢だったようです。
再開発中の建物の下で、果物を売るお店。
バス飛び乗りの大誤算
バザールのある通りまで来ました。
ここまで、警官の職務質問3回。画像を消されたの1回。
通りをバスが走っていきます。
バスは1元か2元で乗れるはずです。飛び乗ってしまって、どこかホータンらしいところを通ったら、そこで降りればいいのではと考えました。
もう、いい加減、警官の質問がウザくなってきたので。
そうとう古ぼけていますが、これでもバス停です。
しばらく、町の景色を楽しんでましたが、バスが急に橋を渡りはじめて焦りました。
しかも、その橋の先には、あの忌まわしい検問所が見えます。
このままでは、検問所の外に出てしまう・・・
このときは、心臓が止まるほど焦りました。
なんてこった・・ これでは、まるで、飛んで火にいる夏の虫です。
自分から検問所の外に出てしまった。
これは、再び入るのに、相当苦労しそうだぞ・・入れなかったりして・・
案の定、検問所の通過は困難を極めました。
そもそも、なんでこんな所を通る必要があるんだ? からはじまり、身元確認の質問の嵐。
私の身元を第三者的に証明できるガイドや運転手を随行していないのが致命的で、なかなか解放してくれません。
正直お手上げ状態でしたが、運良く持っていたホテルのカードを見せ、電話をかけてもらうことで、一応私の身元が証明され、事なきを得ました。
それにしても、油断大敵でした。
バスに乗ったら、検問所の外に出てしまうとは。
無事に戻れたからよかったものの、一歩間違えれば、大変なことになってました。
これは、検問所を通過した直後の写真です。
通る人、クルマ、バス、自転車、すべてチェックされています。
独裁政権でないとこんなことできないね。
ホータン玉を集める人々
橋を渡って、市内に戻ります。
なんだかなぁ・・・ ホータン、こんなつまんない町だとは思わなかったな。
その昔は、ひなびたオアシス都市だったんだろうけど、中国政府が、とてつもない化け物都市に変えようとしています。
人口が何人いるんだか知らないけど、あんな建物いるの? まさか、強制収容所?
川面に目を落とすと、河原で人が動いている。
ああ、これが「地球の歩き方」にも載ってる、ホータン玉さがし。ということは、この川はユルンカシュ河ですね。
みなさん、わき目もふらずにホータン玉さがし。
橋を渡り終わりました。私も、河原に降りて、玉を捜してみようかな。
鉄条網があって、河原に行くことができません。
ああやって、欄干を飛び降りるんですね。これを見て、急に馬鹿らしくなった(笑)
子供まで。いったい、河原には、行っていいの、いけないの?
やることもないので、欄干に腰掛けて、ホータン玉さがしに熱中する人々を観察します。
皆さん、ほんと真剣だ・・
一つ採れたら、いくらで売れるんだろうね。
河原からよじ登ってきた少年が、買わないか?とばかりに、手を突き出します。
パトカーの中に軟禁?
上の写真を撮った瞬間、けたたましいサイレンが鳴り、パトカーが私のそばに横付け。(今度はなんなんだ?)
そして、パトカーの中に入れと促されます。さすがに、ビビります(汗)
しかし、私はなにもルール違反をしていないはず。
いちおう毅然とした態度で、いかつい顔の公安のヒアリングを受けます。
翻訳アプリで話すのも面倒になって、「ワット ハプン!」と質問すると、隣にある警察署を指差し、ダメだ、と手を振り、私のカメラの画像を1枚1枚確認しはじめました。
私は、もちろん、警察関連を撮影していません。
黙々と、10分近く画像をスライドさせ、なにが基準なのかわかりませんが、数枚の画像が削除されました。
私の目には、警察関連施設はともかく、こいつは(つまり私は)どんなものを撮影してるんだ? と言ってるように見えました。
この町はおかしい、そう考えざるをえません。
もちろん、中国には中国側の事情があるのはわかります。
私は基本的に郷に入りば郷に従え。
でも、こんなわけのわからん郷に従うのは、本当に面倒くさくなりました。
ウイグル人に対する対応。
プラスチックで作り直したような町並み。
なかば形骸化している旅行者への監視体制。
どんな意図があるのかはわかりませんが、ホータンをベールに包まれた秘密都市、軍事都市、あるいは「民族再教育都市」にしようと目論んでいるのでないか、そんな気もしてきます。
ホータンを地図で見れば、一帯一路のど真ん中。
中国がアジア大陸の覇権を本気で握ろうとする、意志の現れなのかもしれない。
パトカーの車内から解放された私は、呆然としながら、市内にほうに歩き出しました。
少し、足が震えてました。
満員のバスに乗ります。
そして、バザール前で降ります。
バザールだけでも見学しようと思いましたが、この行列。
しかも、ここでも、警官の職質を受けます。この脇に、警官が10人くらいいるんです。
この行列1時間は解消しないかも・・・ 消沈しながらホテルに戻ります。
こんな具合だったら、ここホータンに明日までの滞在は無駄。
ホータン駅に着いたら、タクラマカン砂漠横断のバスで、ウルムチなどに向かうべきだった、とも思いました。
しかし、こんな状態の町では、バスで脱出は不可能だったかな。
何しろ私一人では、誰も私のことを証明できないんですから、
ホータン観光をあきらめて、ホテルに戻りました。
町を歩き回って、このような心境になるのははじめて。
ここはほんとに現実の世界か? ホータンは、砂漠に囲まれたワンダーランドでした。
数年後に訪れたら、プラモデルのような建物で彩られた煌びやかな町に変身してるでしょう。
その目的が、何なのかはわかりませんが。
しかし、写真撮影に対する異常なまでの規制。
取材されちゃ困ることが、この町にはいっぱいあるってことなんだろうな。
北朝鮮の町を歩いても、こんな感じなんだろうか?
とにかく、やることもなくなって、酒を買ってきて1日を終えます。
旅してて、このような心境で1日が終わるのは、はじめてのことです。