船にブレーキがかかっても、礼文島の島影をまったくみとめられないまま、船は埠頭に接岸です。
初めての島へのアプローチは、ゆっくりと近づいてくる陸地をデッキで見つめながら、といきたかったですが、奇跡的に利尻富士が一瞬見えたので、まあ良しとしましょう。
霧の中、稚内から香深まで運んでくれた「サイプリヤ宗谷」をねぎらいます。
日本最北端の「花の浮島」礼文島
礼文島は、日本最北端の島。
島の面積は約80㎢で日本で27位。伊豆大島より大きく、八丈島より小さい、そんな感じです。
そして、人口は2,400人。これは、私が訪れた日本の島では、小笠原諸島・父島に次いで少ない人口。
しかし、そんなことより、礼文島の特色は自然にあります。
北緯45度の気候は、本州なら標高2,000m以上にならないと生息しない高山植物が、礼文島では海辺に生えています。
その数、およそ300種類。
そのため、花が咲き乱れる5月から8月にかけて、観光客やハイカー、登山客たちがぞくぞくと訪れる、そんな島です。
そして、観光スポットが限られているので、観光バスを使って回るのが効率的。
そんな次第で、宗谷バスの「礼文島観光ツアー」に申し込みました。
間一髪だった「定期観光バス 礼文Aコース」
霧深い香深港に到着し、定期観光バス乗車券売り場へ。
少し行列になってましたが、船の中から電話で予約しておきましたので、安心して並んでいると、
途中で、こんな貼り紙がはられました。
いやあ、電話で予約しておいたよかった。
電話したのは香深に着く20分くらい前だったので、ほんと間一髪だった気がします。
窓口で、私の名前を告げると、名簿を見てすぐに販売してくれました。
ギリギリで手に入れた、観光バスチケット。3,300円でした。
こういうのは思い出になります。
観光バスは2階建てバス。
「売り切れ」なので、席は満席のはずですが、離れ離れになりたくない二人連れが、一階席を選んだこともあって、私の隣席は空席。
窓際の好位置をゲットして、礼文島観光ツアーのスタートです。
礼文島観光ツアースタート
深い霧の中、宗谷バスによる礼文島観光ツアーがスタートしました。
ちゃんと、ガイドさんも乗っていて、ためになる話をいろいろ聞かせてくれます。
しかし、霧はまったく晴れる様子もありません。
バスがスピードを落としたかと思うと、ガイドさんが「右手に見えるのが『見内神社』です」と説明します。
見内とかいて「みない」と読みます。
この香深井集落にある「見内神社」は、その昔、この場所に大きな岩があり、アイヌ人たちは岩を恐れて、岩を見ないように通行していた。
それで「見内(みない)神社」と名付けられたとのこと。
つづいては、このモニュメント。
「金環日蝕記念碑」。いわゆる、太陽と月が完全に重なり太陽の縁だけが光って見える「金環日食」が、この地で1秒だけ見えたそうです。
1948年5月9日のことです。
ガイドさんの説明を聞いているうちに、霧が晴れました。
完全には晴れなくて、利尻富士など望めそうもないですが、それでも、五里霧中の中をさまようより、視界はきいたほうが楽しいです。
ガイドさんは、しきりに「パンフレットに載ってるような景色を期待して、はるばる来られたのに申し訳ありません」的に、まるで自分の責任のように謝ってくれてました。
そのガイドさんのおもてなし心が通じたということでしょう。
最初の観光スポット「澄海(すかい)岬」
さて、観光バスは、最初の立ち寄り地点「澄海岬」に到着。
ここでの停留時間は30分です。
ガイドさんを先頭に、一行がついていきます。
一人旅愛好家の私がツアーに参加するのはまれですが、ツアーだって楽しい。
効率的に回れ、コスパもよく、そしてガイドさんの説明も聞ける。要は使い分けです。
ガイドさんの説明によると、この崖に咲く花は「エゾカンゾウ」。
「ニッコウキスゲに似てますね。」と、2年前に谷川岳で見かけた知識を試してみたら、「同じものです」との答えが返ってきた。
そうなんですね。
それにしても、崖に咲く花というのは、哀愁が漂います。
北の果てにいるというのも、そういう気にさせるんでしょうけど。
けっこう急な坂を登ります。ツアー客の中には断念する方もいるようですが、登りきると、このような絶景が広がります。
礼文島へ渡ってくる船の上でも体験したような強い風。
冬はもっと強く吹くので、雪が積もらないそうです。
それによって、礼文島だけの花の品種も生まれているとか。
「澄海」と書いて「すかい」と読ませる地名ですが、たしかに澄んだ海です。
100m先は霧の中。ロマンチックではあるけど、果ての島にいるという観念で、畏怖させるものがあります。
声を掛けられて「えっ」と思ったら、フェリーの一等和室で同室だった老夫婦。
澄海岬のサインをバックに写真を撮ってあげます。
ちなみに、この老夫婦。今回の旅行は娘さんが仕立てたそうです。なんという親孝行な娘さん。
この両親が、そういう娘さんを育てるんだろうな、そんな感じの品のいい老夫婦でした。
展望台は2つあります。
しかし、南側の展望台に行っても、霧に隠れた断崖絶壁だけ。
じゃっかん欲求不満ですが、まあ「澄海岬」をつかさどる大地が眺められただけよしとしましょう。
パーキングに戻りました。
お土産屋さんや軽食もあります。
「うに丼」の値段4,000円にびっくり!
本場だから安くなるのかと思いきや、美味しくなるだけで、値段はそんなに下がらないようです(^^)
他のツアーと重なり、バスが増えてました。バスのナンバーを覚えておかないと。
次の目的地「スコトン岬」に向けて出発。
来るときと車窓が反対になったので、目に入りましたが、なんと集落があったんですね。
漁業で生計を立てているのでしょうか。
東京から、直線距離で1,080㎞離れた集落です。
バスは、スコトン岬に通じる半島の付け根を横切ります。
このあたりは、「レブンアツモリソウ」の群生地だそうですが、車窓からではわかりません。
それでも、ノールカップやフェゴ島で見かけたような果てを感じる景観。
霧にけむる「スコトン岬」
「スコトン岬」に到着。ここでの停留は25分。
また、霧に隠れちゃいましたね。
晴れていれば、眼前のトド島。そして、はるか沖には樺太が見えるらしいのですが。
それでも、ここは、礼文島の北端です。
つまり気分的には、日本最北端です。(日本最北端は宗谷岬です)
でも、地図上の「果て」に来ると、海の向こうは、いつも霧に包まれているような気がします。
まるで、ここから先へは行ってはいけない、と言われてるような。
遠くに来たという旅愁を感じたのか、なんとなく感傷的な気分になって、スコトン岬の看板を眺めます。
スコトンとはアイヌ語で「大きな谷にある入江」という意味。
1.2㎞ほど先に浮かぶ無人島トド島は見えませんが、これでこそ「最果ての地」という感じがしました。
驚いたことに、崖下に民宿がありました。
ハイカーや登山客のための宿でしょうか。
あんなに海に近くて、風や大波は大丈夫なのかな、という気がします。
とにかく風の強いスコトン岬。
パーキングに戻ります。
パーキングに併設の売店。
高そうな「ウニ丼」。でもどこかで食べたい。
売店を出ると、数少ない路線バスがスコトン岬まで来ていました。
ここに来る路線バスは1日5本です。
観光バスツアーもいいですが、路線バスの旅も楽しい。
ツアーも折り返しですが、午後は路線バスの旅を楽しむつもりです。