なんとなく、雪が見たくなった。
最後に雪を見たのは、いつだっただろう──。
思い返してみれば、2023年2月。3年ぶりに開催された「札幌雪まつり」が最後だった。
あれからもう、2年も生の雪を見ていない。
それくらい、首都圏では雪が降らない。
でも、そんな首都圏に住んでいるからこそ、雪を見に行くのは案外簡単だ。
新幹線に乗れば、わずか1時間で一面の雪景色に出会える。
というわけで、いつものように「部屋食」を提供してくれる温泉旅館を探すことにした。
だが、これが思いのほか難しい。
温泉旅館自体はいくらでも見つかる。
けれど「一人で一部屋」に泊まれるとなると、一気に候補は絞られる。
さらに、夕朝食ともに「部屋食」となると、検索結果はほとんど消えてしまう。
私は、騒がしいグループ客とはできるだけ一緒になりたくない。
しっとりと落ち着いた雰囲気の中で、静かに湯に浸かり、食事を味わいたい。
ところが、皮肉なことに、名の知れた温泉地ほど「おひとりさまお断り」の宿が多い。
だからこそ、少しだけ定番から外すと、意外と静かな良宿に出会えるのだ。
たとえば、鳴子温泉ではなく東鳴子温泉。熱海ではなく湯河原温泉。
そして今回、見つけたのが「湯檜曽(ゆびそ)温泉」。
群馬県の水上温泉は多くの人に知られているだろうが、そこから利根川を5キロほど北へさかのぼったところにある、ひなびた温泉地である。
動画での様子はこちら。
とき323号&バスで群馬県湯檜曽温泉へ
ほんとに久しぶりに休めた週末。
北へ向かう新幹線の色とりどりな行き先がまぶしい。
私が乗るのは「とき323号」新潟行き。
降りるのは、国境のトンネルを越える手前の駅「上毛高原」。
すなわち群馬県への旅。
すると、どうしても「峠の釜めし」を食べたくなる。
「釜めし」でなく「紙めし」だけど、やっぱり駅弁は旅の雰囲気を盛り上げてくれます。
さて、新幹線はわずか1時間ほどで上毛高原駅に到着。
待っていてくれた谷川岳ヨッホ行きのバスに乗り込みます。
「待っていてくれた」なんて書いたけど、少ない本数。
ちゃんと、事前に調べておきました^ ^
このバスは途中、湯檜曽温泉街を通ります。
家を出てから2時間ちょっとで雪景色。日本の旅も楽しい。
地元の人しか乗ってなかったバス。
どうみても私は観光客の姿。
すると運転手さん「旅館はどちらですか?」と、旅館の前で下ろしてくれる温かさ(^ ^)
湯檜曽温泉「林屋旅館」さんの源泉掛け流し天然温泉
温泉街の通りに並ぶ「林屋旅館」さん。
場所はこちら。温泉街だけでなく、湯檜曽川にも沿ってます。
第一印象、静かすぎるほど静か。
そのうち、優しそうな女将さんが顔を出しました。
通された部屋。
畳の香りがする部屋。これは完全に日本文化。外国では味わえません。
そして、その香りに癒されます。来てよかった。
さて、雪国に来たので、何気にけっこう寒いんです。
なにをおいても、まずは温泉に入りましょう。
源泉掛け流しの天然温泉。
「24時間いつでもどうぞ」と女将さん。
貸切です^ ^
ありがたく、温泉一番乗り。
効用は神経痛・筋肉痛・関節痛など。
ギスギスした仕事の忙しさは、間違いなく私の神経をむしばんでる。
その神経は、どこの神経かわからないけど、熱すぎない湯につかれば、たしかに痛みが消えていきそうです。
さて、十分に身体が温まったところで、かるく温泉街を散歩。
JRの水上駅にも寄ってくれる関越交通バスのバスストップ。
帰りのバスも少ないので、ちゃんと確認しとかないとね。
湯檜曽川に架かる橋。見事なほど川の流れる音しかしません。
ところで、鉄道の栄枯盛衰を感じたいのならここはひとつの候補地になるでしょう。
ここから、新潟県に抜けるため大工事によって完成した、いわゆる「国境の長いトンネル」清水トンネル。
最盛期には、新潟方面から上野へ向かう特急電車や急行が、30分間隔くらいで走っていたはず。
それこそ、向こうに見える山肌を巻くループ線を高速で駆け下って。
まさに、首都圏と日本海側新潟を結ぶ大動脈。
新幹線がふつうに走る今は、鈍行が1日たったの5本です。
懐かしんでいるうちに、身体が冷えてきたので、部屋に戻りました。
林屋旅館さんには、部屋が11あり、川側の部屋からは、湯檜曽川の清流が眺められます。
うわ、ほんとだ、気持ちいいわ。
ところで、楽しみな部屋食の夕食は18時。茶菓子をいただきながら待ちます。
上州牛陶板焼きに山の恵み料理の「部屋食」
私は、食事はひとりで食べる派。
ひとりで食べる食事ほど美味しいものはない。
特に旅先で「ワイワイガヤガヤ」は、ほんと幻滅する。
この「ワイワイガヤガヤ」が都会の雑踏や異国の地なら、群衆の中の孤独という効果で、まったく気にならないんだけどねw
だから、旅館に泊まるときは、基本的に「部屋食」からさがす。
これが難しいのは前述の通り。
だから、こんな機会を作ってくれる旅館には、本当にお礼を言いたい。
「林屋旅館」さん、本当にありがとう^ ^
そして、オプションで追加した上州牛の陶板焼き。
茶碗蒸しも美味しそうだし、
地酒もオーダーしました。
では、いただきます。
昭和初期には与謝野晶子も泊まったそうです。詠んだ歌が記してありました。
さて、ご飯をよそって、
たぶん、ゆびそ川で獲れた川魚。
舞茸も美味しい。
小ぶりのお造りも美味。
この「谷川岳」が食欲を増進させる気持ちよさ。
こんな静かな旅館に泊まって、ひとりで食事にお酒。
こんな贅沢はないわ。
そんなシチュエーションを提供してくれた「林屋旅館」さんに乾杯^ ^
おや、上州牛が焼けてきましたね。
と、思ったところに、女将さんが天ぷらを運んできてくれました。
まるごところもに包まれた舞茸が、非常に美味しかった。
ごちそうさま。お腹ぱんぱんで幸せな気分。
デザートが出てきました。抹茶の寒天なんて久しぶりだな。
また、ひとっぷろ、温泉に身体を沈めて部屋に戻ると、布団が敷いてありました。
お風呂に入るために、まだちびちびとしか飲んでない「谷川岳」。
川の流れしかしない部屋で、布団に寝そべりながら、お酒を飲む。
いつまでも、こんな夜が続くといいな・・・
朝食&雪の舞う縁側でデジタルデトックス気分
飽食&温泉&地酒で、久しぶりにぐっすり眠れました。
そして一夜明けた部屋の窓。
よく見れば、向こうに上越線が走ってる。
ということは、川の流れしかしないこの宿も、昭和の時代は、行き来する列車の汽笛がすごかったことでしょう。
さて、完全に目を覚ますために、朝風呂です。
ゆっくり身体をしずめると、血のめぐりが身体のすみずみまでゆきとどいて行くのがわかる感じがする。
水上温泉では、こんな静かな温泉宿を求めるのは困難だろうな。
湯檜曽温泉を選んで正解だった。
風呂から上がると朝食です。
昨夜、あんなに食べたのに、もうお腹が空いている。旅とはそういうもの。
素朴な朝食の膳。
このスタイルは、日本旅館がある限り、変わらないものだろう。
そして、こういう膳は、家にいたってなかなか作れるものじゃない。
日本旅館に泊まるからこそ、味わえる食膳。
手を合わせてごちそうさま。
和食でも、食後はコーヒーを好むコーヒー党です。
さて、バスの時間までしばらくあります。
雪が舞いはじめましたね。
そんな縁側に座って、すっかりデジタルデトックス気分。
スマホこそ持ってきたけど、パソコンは置いてきた。
東京に帰ります。
たった1泊だけど、自分を取り戻せた週末。
宿泊代が23,000円のところ、楽天ポイント5,000P引いて18,000円。
往復の新幹線が、グリーン車で16,000円。
しめて、34,000円。
これで、疲れた気持ちと身体を癒せるなら安いもの。
もっと「部屋食」の旅館が増えるといいな。