首都圏に近い湯河原温泉 源泉かけ流し【水月】で味わう部屋食の一夜

日本の旅の良さは、独断と偏見であえて言ってしまえば、四季の変化と気候の変化だと思う。

同じ場所でも、四季と天候で、印象がガラリと変わる。

そして、それを際立たせるのは、しっとりとした情緒といったとこだろうか。

つまり、日本の旅に、喧騒や猥雑な雰囲気は似合わない。

 

これは私の勝手な意見で、旅に関する価値観は旅人の数だけ無数にあっていいと思っているが、日本の旅は無声映画のように、音など聞こえてこなくてよい。

雨音や温泉の水の流れる音、風にはためく笹の葉の音くらいはあってもよい。

旅館の女将さんや番頭さんのおもてなしのこもった声が聞こえるのもいい。

と考えると、私が望む日本の旅は「部屋食」を提供してくれる温泉旅館しかないではないか、と勝手に解釈している。

 

湯河原温泉で「部屋食」を提供してくれる温泉旅館「水月」

若干こじつけの感があるが、2024年3月、寸暇ない激務の合間にようやく週末の暇ができたので、東海道本線の電車で湯河原に出かけた。

東海道本線の小田原から先の景色は、何度出会っても一級品。

品川駅から、たったの1時間40分で旅してる気分。

そして、真鶴半島の付け根をトンネルで抜けると、湯河原に着く。

今回の旅は、湯河原に特に思い入れがあったわけではない。

いつものように、「部屋食」で逆引き検索して自宅からもっとも近い温泉宿が湯河原温泉だった

湯河原温泉で唯一の源泉かけ流しの旅館とのこと。

湯河原に来たことはあるが、湯河原温泉ははじめてだ。

湯河原駅を降りて、千歳川のほうに向かって数分歩くと、「温泉旅館 水月」の看板が見えた。

場所はこちら。

住宅街の中に、ポツンと建っている不思議な感覚だが、のれんといい、竹格子といい、清潔な石畳といい、とても好感が持てる温泉旅館。

外観の第一印象と同じく、中に入ると、招かれ方が素晴らしい。

とても愛想の良い女将さんが、私のキャリーをもって2階へ案内してくれる。

各部屋は、伊豆や箱根の地名がつけられている。

たとえば、三ツ石。

そして、大観山。

この湯河原の街から、椿ラインを登ったところにあるのが大観山。

そういえば、「頭文字D」で、最終話となった主人公のライバルの家が湯河原にあり、毎日椿ラインを通っているうちにドラテクが身についた、なんてどうでもいい話を思い出した^ ^

 

そして、私の部屋は初島。

扉を開けた瞬間に、鼻をくすぐる畳の香りがなんともいえない。

一人で泊まるには、最適の部屋。

これから、明日の午前中まで、約18時間。

ここは、私の城。

私のような、生粋のひとり旅派は、食事をするのも一人がいい。

どんな高級旅館だって、食事が大広間で食べるスタイルでは、雑音が入りファミレスで食べてるのとなんら変わらない。

だから、多少カネを払っても、「部屋食」を提供してくれる宿を選びたいのだけれど、昨今は人手不足もあってか、なかなかそんな宿にはお目にかかれない。

さがしにさがして、ようやくみつけたのが、湯河原温泉の「水月」だった。

さて、では「水月」ご自慢の、源泉かけ流しの温泉を楽しんできましょう。

「水月」の純粋100%のかけ流し温泉

立派な掛け軸が飾られた階段を降りていくと、浴槽は2つ。

この時間、男湯が少し広めの浴槽。

難しいことはわからないけど、大変希少な温泉らしい。

まだ16時なので、お風呂も一番乗り。

身体を洗って、湯船にしずめると、やっぱりホッとするものがある。

この感触もまた、諸外国では、なかなか出会えるものではない。

こうしていると、私の耳には、流れるお湯の音しか入ってないように思えるが、湯河原町の町会議員選挙が迫っているらしく、選挙カーの演説が拡声マイクを通じて入ってくる。

まあ、それも旅のうち^ ^

湯上がりに、館内を散歩。

こんなレトロな器具が備えてある。

1点アクセサリーかと思ったら、館内すべて、レトロで統一しているみたいでした。

時間が何十年もさかのぼる、時間旅行をしている雰囲気。

館内を散歩してるのは私だけだけど、厨房からは忙しそうな女将さんたちの声が聞こえてきます。

これから、チェックインしてくるお客さんも、けっこういそうですね。

ちなみに、「水月」さんは持ち込み可。

旅館から徒歩数分のところにコンビニがあるので便利。

海の幸がふんだんに並ぶ「水月」の「部屋食」

さて、メインイベントの「部屋食」。

せっかくの湯河原。

「湯けむり」という名の地ビールをいただきましょう。

同じ「湯けむり」という名の本醸造日本酒も。

さっそく運ばれてきたペールエール。

湯上がりから小1時間ほどたつけど、逆に湯冷めた身体にビールがしみわたる。

これは、食が進みそうだ。

ではビールをあおりながら、食膳の品を1品づつ観察。

カニなんて久しぶりだな。

鍋の中身。

さっそく女将さんが火をつけてくれます。

お造りは、ご主人が相模湾でとってくるというお刺身。

考えてみれば、旅館に泊まった時くらいしか、お刺身を口にすることがない生活。

そしてカニ。

一心不乱に身をほじる・・・カニは部屋食に向いてるのかも^ ^

ちょうどそこへ、運ばれてきた「カサゴ」。

「丸ごと食べられるんですよ〜、熱いうちにぜひ〜」と女将さん。

というわけで、冷めても大丈夫なカニは後回しにして、カサゴにかぶりつきます。

この「カサゴ」が、「水月」さんの目玉らしく、楽天トラベルの紹介欄にも記載されています。

たしかに、このパリパリした食感は、食欲を増進させます。

カサゴにかぶりついている間にも、次々と運ばれてくる品。

1皿づつ、完食していく私を褒め称えてくれる女将さん。

褒めたいのはこちらです。

すべての皿が、本当に美味しい(^ ^)

こちらは煮物。

もちろんご飯も。

紹介欄にもありましたが、たしかにすごい量。

でも、量を質が上回っている。

いくらでも食べられます。あっというまに完食。

ほら、カサゴも跡形もないでしょ、自分でも見事なねこまたぎ^ ^

と思ったら、デザートが。

いや、本当に美味しかったです。

あっさり完食した私に驚いてくれてましたが、私は供された食はすべて食べる主義。

とくに、旅先では(^ ^)

では、こんどは日本酒の「湯けむり」といきますか。

至極幸せな瞬間。

2024年3月の某週末。湯河原温泉来てよかった。

夜は、地酒をいただきながら、自分のブログを眺め、過去の旅の思い出に浸る。

人生なんて、数十年しか生きられないんだから、自分の好きなことをやってればいい。

「朝風呂」&「部屋の朝食」ですっかり「水月」さんを堪能

旅先の夜から朝にかけて、人生において、楽しい時間帯の一つ。

なぜか、答えが見つからないけど、「旅」というワードがもっとも際立つ時間帯だからかな。

朝になって目を覚まし、かるい二日酔いのアタマをすっきりさせる朝風呂。

これが、温泉だからたまらない。

たまには、こんな生活、1週間くらい続けてみたい。

部屋に戻って、冷蔵庫をあさってみたら、なんとラムネが。

ラムネなんて、飲むの何年ぶりだろう?

ビー玉も懐かしい、ラムネの瓶。まだあったんだw

そして、朝食です。

浴衣のままでいただく朝食は、日本そのもの。

外国への旅と日本の旅は、単純には比較できない。

旅とは、比較によってはっきりと優劣が決まる道具のようなものではない。

コロナ禍に襲われ、外国に行けなくなった当初、何年かぶりに国内の旅行を試みたが、実は楽しいとは思えなかった。

それは、けっして、うぬぼれでもなんでもない。

異国で得られるエキゾチック感やカオスな感覚を日本の旅に求めていたからで、はじめから無理な話だった。

日本の旅のよさ、ここにあり。

「畳の部屋」「温泉」「部屋食」。

これらを楽しめるのは、世界広しといえども、日本だけだろう。

朝食もまた、あっさりと完食で、女将さんに驚いてもらいました。

畳の上で、ゴロゴロと休憩したのち、チェックアウト。

女将さん曰く「日本の旅行者は戻ってきてますけど、外国の方は全然いませんねえ・・・」

でも、この雰囲気は、外国人観光客には似合わないかなw

東海道本線で帰宅します。

自宅から実は2時間ちょっとで行けるミニ旅。

旅は時間や距離ではなく、日常からの脱却であると、あらためて感じた湯河原温泉。

そして、素晴らしい食材を提供してくれた「水月」さん、ありがとうございました。