幼少の頃から駆けずり回っていた日本国内の旅。
コロナ明けですっかり外国に魂を奪われたカタチになってるけど、同じ旅でも、日本と諸外国では、その旅情の違いという点で、まったくベクトルが異なることに驚く。
混沌としたカオスが異国であれば、日本はしっとりと安定した情緒。
海に囲まれた単一民族国家であることも、そういったDNAを作り上げた要因だろう。
「旅情」という抽象的なテーマを、画一的に表現するのはとても難しいが、あえてきっぱりと言ってしまうと、日本の旅に合う情景は「寺院」「庭」「梅雨」「温泉」「旅館」・・・
こんなとこだろうか。
【動画での様子はこちらです】
宮城県 鳴子温泉の旅館「勘七湯」で「部屋食」を味わう
宮城県の「鳴子温泉」に、「勘七湯」という旅館を見つけた。
「ゆこゆこネット」というサイトで、「部屋食」を提供する宿、という逆引きで検索して見つけた旅館。
昨今、ひとり旅を楽しむ旅行者が増えはじめていると聞くけど、ひとり旅であることをもっとも際立たせるのが食事である。
このとき、生粋のひとり旅愛好家は、食事もひとりで食べることを好む。
すなわち、宿泊代が5万とか10万とかする高級旅館だって、食事がその他大勢と一緒に食べるスタイルでは、雑音が入りファミレスで食べてるのとなんら変わらない。
いっぽうで、設備や食材が並であっても、女将さんや番頭さんが運んでくれる部屋食は、どんな一流ホテルにも勝るサービスとなる。
しかし、昨今の人手不足もあいまって、それを提供してくれる宿をさがすほうが大変だ。
私が調べたところ、主なwebサイトで検索して、2024年の1月の週末、部屋食を提供してくれる「鳴子温泉」の宿は「勘七湯」さんだけだった。
チェックインして、通された部屋は、まさに期待通りだった。
6畳ひと間に布団。ひとり旅には、ぴったりの部屋。
これ以上、なにがいるというのだろう。
素朴な感触に、素朴な温もり。
こればっかりは、外国ではとても味わえない、日本だけのもの。
この部屋で、お茶でもいただきながら、明日の朝までゆっくりできる。
とてつもなく、嬉しい。
ところで、「勘七湯」さんの最寄駅は、陸羽東線鳴子御殿湯駅。
仙台方面から来た場合、鳴子温泉のひとつ手前の駅。
ここは「東鳴子温泉」となるらしい。
天下の鳴子温泉のほうが賑わいは上だろうが、ひとり旅には、むしろこちらのほうが都合がいい。
ほかに宿泊客もいるみたいだけど、非常に静かだ。
みんな、私のようなひとり旅愛好家なのだろうか。
夕食の時間になる前に、鳴子温泉を堪能してみることに。
泉質が異なる大小ふたつの湯舟があるようだ。
この硫黄の香りが鼻をくすぐる瞬間がたまらない。
温かい温泉をひとりじめ。
効用は、神経痛や筋肉痛のようだけど、心の病にも効くだろう。
最近、まったくうまくいかない仕事のことなんか、忘却の彼方へ消えていく。
そして、部屋に戻り、湯上がりの身体が静かに冷めていくのを楽しんでいると、夕食の時間だ。
素晴らしい・・・
宿のご主人が、自ら運び入れてくれるおもてなし。
ひとり旅に「部屋食」は、必須のアイテムだ。
あらためてそう思う。
まさに、旅の原点。
料理も豊富で、目移りがするほど。美味しくいただきました。
ところで、主人がすすめてくれた地酒「天音」。
公共交通機関で来訪した観光客向けに、2,000円のクーポンが配られるイキなはからい。
お酒は、買って持ち込んで欲しいとのことで、近くの売店で仕入れてきた。
「勘七湯」と「部屋食」と「ひとり旅」に乾杯。
あっさりと完食。
こんな美味しい料理も久しぶりだった。
翌朝、雪が舞いはじめた「東鳴子温泉」
翌朝、午前7時。
窓の外は、猛然と雪が舞ってました。
東北地方の気候の厳しさに触れた思い。
さて、朝食の前に、朝風呂と洒落込みましょう。
今度は、「不老泉」と示された小さい方の湯舟に。
軽い二日酔いが目覚めていく。
こんなに気持ちがいいのだったら、確かに歳をとる気がしない。
朝ごはんも、もちろん「部屋食」。
単純な膳だけど、風呂上がりには、たまらなく美味しく見える。
日本旅館の朝食は、どんなに時代が変わろうとも、変わらないもののひとつだろう。
お代は、1泊2食付きで12,800円。
温泉もついてこの値段は、感謝したくなるほどリーズナブル。
鳴子温泉、また来ることあるかな・・・
「部屋食」を提供してくれるのだったら、宿泊代は2倍〜3倍かかってもよい。
逆に、どんなに高級でも、大広間の雑音の中で食べる食事に、数万円もかける気には、まったくなれない。
こういう少数派(だと思う)のニーズがあることを、旅館側は認識してくれているだろうか。
「勘七湯」さんには、本当にお礼を言いたいです。
さて、鳴子温泉の銘菓を仕入れて帰途。
帰りは新幹線で。
外国の雑然としたカオスもいいけど、しっとりとした日本の旅もまたよい。
「天音」の飲み残しを、古川駅の売店で買ったおつまみと共に楽しんで、1泊2日の大人の休日が終わりました。