造山活動が活発な北海道にはいくつもの温泉郷があるが、内外に知れ渡り知名度の高い温泉のひとつが「登別温泉」です。
今回、ANAマイルの特典航空券を急遽ゲットし、北海道の週末旅を企てましたが、最大の目的は「登別温泉」。
明治時代から温泉宿をかまえる「登別温泉」には、老舗高級旅館が15軒ほど並んでいるそうですが、そのなかから「滝乃家別館玉乃湯」を選んだのは、部屋食を提供してくれるから。
部屋食。ひとり旅にはかかせない旅のパーツです。
登別駅から登別温泉郷へ
北海道を旅したことはかなりあっても、降りるのははじめての室蘭本線登別駅。
ここまで私を運んでくれた北斗13号。
驚きの外国人乗車率50%。
登別の気温はマイナス7度。手袋なしでは少々寒い。
登別温泉郷までは約7㎞。うまく、タクシーが1台だけ待っていてくれました。
「日本人? ああ、よかった・・」といって、私を運んでくれる運転手。
以下、タクシー運転手の会話。
「もう外国人ばかり。完全に3年前に戻ったよ。」
「いや、悪くないよ。おカネ使ってくれるし。今日は、駅と8往復目だ。」
「でもね、言葉が全然通じないんだよね。仕事柄、英語は少しやるけど、中国語とかタイ語は全然だめよ。」
「もう少し、日本語わかってくれるとなあ・・わけのわからんカード出したりするし。」
だそうですw
外国人であふれていた「玉乃湯」
タクシーの窓から、野生のシカなどを眺めるうち、「滝乃家別館 玉乃湯」に到着。
高級老舗旅館らしく、すぐに番頭さんが出迎えてくれ、私のキャリーを運んでくれますが、「おそれいります~・・いま、チェックインが立て込んでまして~」
どうぞ、気にしなくていいですよ。
そのあいだ、私は、珍しい調度品を観察。
ミニバーやお土産屋さんもありますね。
りっぱな額縁。あれは富士山か、それとも羊蹄山か。
先客がいなくなったロビー。
ちなみに、先客はすべて外国人観光客。番頭さんが英語で応対している姿がカッコよかった。
ところで、私の宿泊料は、2食付きで24,260円。4人なら10万円になる。
金持ちな外国人だな・・・という感想。
そして、私の番。「この格子戸、開かないので気をつけてくださいね~」
外国人は、開かない格子戸をむりやりこじ開ける輩もいるそうです。
悪気はないんだろうけど・・
そして、本日は3年ぶりに湯鬼神(ゆきじん)まつりが行われるそう。
「梅の階 雪の梅」の間
そして、部屋に案内されます。
部屋の名前は「雪の梅」。
やっぱり、畳の和室はいい。
イグサの香りがほんのりかおる落ち着く空間。
この雰囲気だけは、外国では味わえない。
向かいには、大きなビルを構えた「まほろぼ」。向こうも1泊2万円以上の高級旅館。
せまく細長い「登別温泉郷」には、旅館が15軒。玉乃湯は、ここに位置します。
夕食の前に、ちょっと周囲を散歩してみますか。
こうしている間にも、外国人旅行者が次々とチェックイン。
タクシー運転手の「完全に3年前に戻ったよ」という言葉を実感します。
外国人だけでなく、日本人もにぎわう登別温泉郷。
厳密には、まだ「コロナ明け」ではないんだろうけど、観光地に旅客が戻るのは喜ばしいこと。
「玉乃湯」の前は、喫茶店兼お土産屋さん。
「玉乃湯」の横の急坂を登るとクマ牧場に出るようです。
セブンイレブンがあるので、つまみや小物には困らなそう。
身体も冷えてきた。温泉で暖まろう。
硫黄泉のかおりがここちよい露天風呂
では、まず1回目の温泉入浴。
登別は、突然大地が噴火してできた「昭和新山」から20㎞程度しか離れてない、まさにカルデラの中にある温泉です。
硫黄泉、重曹泉を多く含んだ乳白色の温泉。
少々熱く感じるけど、外気が氷点下なので、身体の中で体温の還流が起こるような心地よさ。
硫黄のかおりも、最初はきつく感じるけど、すぐに慣れる。
そして心地よくなる。これも、大地の恵みというものなんだろうか。
登別ポークの部屋食を提供してくれる「玉乃湯」
旅館経営者にとって、おひとり様はあまり歓迎したくないと思われる。
しかし、私を含め「ひとり旅」は十分に市民権を得ているワード。
そんな「ひとり旅」客が望む食事は「部屋食」。
登別温泉郷にある15軒の旅館のうち、少なくとも私が検索した限りでは、「部屋食」を提供しているのは「玉乃湯」だけであった。
日本の旅はカオスではない。
少なくとも私は、日本の旅には、静寂と情緒を求める。
多少値が張ったって、ひとりで落ち着いて食を楽しめる「部屋食」。
そう、値段は高くたっていいのだ。そういう旅館を私は愛したい。
部屋で待っていると、こんこんとノックがして、女給さんがていねいに給仕してくれます。
この雰囲気だけでも「部屋食」をオーダーする価値があります。
これは、特別注文の登別ポーク。
焼き加減が見事な豚肉でした。
色とりどりの小鉢。
岩見沢産の「ななつぼし」ごはんも光ってる。
こちらは、鱈の豆乳鍋。
ビーフシチューにはワインが合いそうですね。
てんぷらも揚げたて。
酒は梅酒をオーダー。
生きててよかったな、という気分になる、幸せを感じる瞬間。
日々、泣きたくなるような辛い激務をこなしてるんだから、月に一度の自分へのご褒美だ(^^)
食べる順番を間違えた・・茶碗蒸しが冷めてしまった。
大きなホタテですね。
ビーフシチューがメインディッシュだったので、赤ワインを追加。
余市ワインの「エルム キャッスル」。
余市はウイスキーだけでなく、ワインも手掛けていたんだね。
今までのワインにはない口ざわり。それこそ、ウイスキーとブレンドしたかのような辛口。
最後に、お茶とデザート。
お腹いっぱいになりました。ご馳走様。
外はすっかり夜のとばりがおりてます。そろそろ祭りがはじまるかな・・
3年ぶりに開催された「登別温泉湯まつり」
さて、そろそろ外に出ようかと、コートを着込んで身支度していると、ロビーのほうから叫ぶ声が。
なんと、鬼がやってきました。
これが、登別名物の「湯鬼神(ゆきじん)」。
登別の各旅館を回って、厄払いをしてくれる赤鬼と青鬼。
最近、なにかと厄介な出来事に出くわしてる私も厄払いしてもらいました。
外国人観光客も大喜び。鬼の文化は日本だけでしょうから。
盛大に豆もまかれます。後片付けが大変な旅館のスタッフ。
余勢をかって、外に出てみました。
少ないながらもお土産屋さんが開いてます。
たこ焼きや、お好み焼きも。
宿に帰ると、ちょうど一休みしていた鬼さんが次の宿に向かうところでした。
秋田のナマハゲのようなものなのかな。
それで、宿の入り口に鬼の金棒があったんですね。
部屋に戻ると、ふとんが敷いてありました。
就寝前に、もう一浴。冬の温泉はいいな、ほんとに。
こういう静かな夜は、外国では味わえない。
そして「エルム キャッスル」で、旅を回想しながら眠りにつきます。
2023年は、外国と日本の旅が交互に訪れるかな・・
さわやかな登別温泉の朝
一度も目を覚まさずに、朝6時までぐっすりと睡眠。
やはり温泉は身体を癒すのか、こんなこと日常ではありえない。
夜は雪が降ってたけど、さわやかに晴れた登別の朝。
一浴して、部屋で待ってると、昨夜の女給さんが朝食のセッティング。
美人な女給さんは、昨夜の私のご飯のお代わりを見て、おひつで持ってきてくれました。
そんな気遣いがありがたい・・これも「ななつぼし」なのかな、とにかく美味しいお米です。
ご飯が美味しいと、はしが止まらなくなる日本旅館の朝食。
世の中のものが、ほとんど姿を変えても、日本旅館の朝食だけは未来永劫変わらないだろう。
そんな変わらない素朴さが、二日酔い気味の頭を覚ましてくれます。
ほんとに美味しそうだ。
きんぴらに、豆に、おしんこ。なぜこんなに美味しいのか不思議。
みそがたっぷり乗っかった大根。
しゃけにたまご。
美味しくいただきながら、外国人の口には合ってるのかな、そんなことを思う。
完食。旅館で出されたものはすべて気持ちよくいただきます。
和食の後でも合う、食後のコーヒー。
梅酒に余市ワインを加えて、28,410円の会計。
部屋食で、豪華な食事が2食付いて、ワインを1本つけたこと。
温泉があって、静かな部屋。
そして、番頭さんや女給さんの心温かいおもてなし。
以上を考えると、おつりがくるほどの値段と言っていいでしょう。
登別温泉郷「玉乃湯」の素晴らしい一夜でした。