旅先で夜、宿に泊まり、物音ひとつしない闇夜を味わうのは本当にいいものです。
あるいは、川の流れが聞こえてもいい。
軒をたたく雨音がしてもいい。
まさに、純日本風な宿の楽しみかたで、これに、温泉や美味しい和食料理がついていれば言うことありません。
先日泊まった「下部温泉」の宿は、それを絵にかいたようなたたずまいで、外国旅行にはない情緒を感じとることができました。
それに、味を占めたわけではありませんが、そういったひなびた温泉旅館に、ひと月に1回くらい泊まってみよう、そんな気になりました。
月に一度くらい、温泉につかり、めったに口にすることのない純和風料理をたしなめば、心も豊かになること間違いなし。
そこで、「ゆこゆこネット」というサイトで地元千葉県の温泉旅館を検索したら、房総半島中央の養老渓谷にそんな宿がみつかりました。
養老渓谷といえば紅葉か桜。今は、そのどちらにもあてはまりませんが、閑散とした雰囲気を味わうのも目的の一つ。
緊急事態宣言がはじまる直前の週末に出発です。
小湊鉄道 養老渓谷への旅
小湊鉄道は、JR内房線の五井駅から出ます。
養老渓谷までの所要時間は1時間10分ほど。
料金はけっこう高く1,280円。
しかし、五井駅の小湊鉄道専用改札口のおばさんに「帰りはどうするんですか?」とたずねられ、「明日帰る予定ですが。」とこたえると、2日間有効の往復乗車券を売ってくれました。
往復で1,840円とふつうに買うより720円もおとく。
とても親切です。
小湊鉄道は、首都圏としては珍しい非電化鉄道。のどかな風景の中、トコトコ走ります。
たった一両のディーゼルカーに乗るのも久しぶり。
記憶をさかのぼっても、いつ以来か思い出せない。
こんな鉄道が、地元千葉県に残されていたとは・・
車内も閑散。
「南総里見八犬伝」に由来する里見駅。
そして、養老渓谷駅に到着です。
養老渓谷温泉郷に並ぶ旅館の一つ「天龍荘」
養老渓谷駅に着いて、温泉郷までの道を歩きます。
30分ほど、起伏にとんだ道を歩きますが、千葉県に住んでいながら、この道を徒歩で歩くのは初めて。
近くにも旅はあるという証ですね。
予約した「天龍荘」は、その温泉旅館街の中ほどにありました。
食事だけとか、日帰り温泉もやってるみたいです。
ときおりクルマが通る以外は、まったく物音しない静寂な山間です。
戸を開けると、愛想のよいおかみさんが案内してくれました。
宿泊客は、私一人だけかな。
通された部屋は「竹の間」。名前まで書いて張り出されてました。
もう一人ほど、宿泊客がいるようです。
落ち着ける純和室&「黒湯」の養老渓谷温泉
「竹の間」の扉を開くと、畳のにおいのする和室が迎えてくれました。
この日本旅館的な落ち着く空間は、外国では味わえない。
畳の上に寝転がると、それだけで疲れが癒されます。
さて、茶菓子でもいただいたあとは、さっそく温泉に浸かりにいきましょう。
スリッパには部屋の名前をはっていただいてるので、間違えることはありません。
といっても、いま、この旅館にいる客は私だけです。
温泉旅館の湯ぶねを独り占めするのは、いつもながら気持ちのいいものです。
養老渓谷温泉独特の「黒湯」とのことですが、たしかに黒くにごって見えます。
でもそれは見た目だけで、ナトリウム炭酸水素塩が溶け込んでいるので、そう見えます。
効用は、神経痛や疲労回復。肌もつるつるになるとのこと。
ぬるめの温泉に身体をあずけていると、身体やこころの疲れが湯にとけだしていくようです。
ただいま、逃げ出したくなるほど本業が激務ですが、たまには本当に逃げ出して、こういう誰もいない温泉に一人浸かるのは、精神療養になります。
和牛鍋&鮎塩焼きの里山料理
さて、待ちに待った夕食です。夕食は部屋ではなく、大広間でとることになっています。
まずは先付け。
そして板前さんからのご奉仕「茶碗蒸し」。
お造りは、とろけるような「ゆば刺し」です。わさび醤油で食べると、味が絶妙ですね。
和牛のオリジナル鍋。卵とじにするのがいいそうです。
清流の女王「鮎の塩焼き」。焼きたてで、熱々の鮎でした。
房総の野菜を使っているんでしょうね。
ご飯は、地元産コシヒカリ。
これだけ料理が素晴らしいと、ご飯もすすみます。おひつには三膳ほどありましたが、すべてたいらげてしまいました。
季節の食材を使ったてんぷらも秀逸。
卵とじ和牛も、こってりした美味しさ。
酒も注文しました。たまの贅沢です。
温泉旅館で湯上りにこんな豪華な料理なんて、と思いますが、宿泊費は1万円そこそこ。
1万円で、心身ともにリフレッシュできるのなら安いと思いますが、いかがでしょうか。
食後のデザート。
梅酒が、身体中にしみわたります。なんか、忘れていたような幸福感。
かなり量がありましたが、見事に完食。ごちそうさまでした(^^)
部屋に戻ると、布団が敷いてありました。至れり尽くせりです。
ふとんに横になりながら、本を読みます。
ほんと、一か月分の疲れがとれた気分だなあ。
人間働くばかりが能じゃないですよ。
朝風呂&美味しい和定食
快適な寝覚め。
ここんところ、夢にうなされたこともあったけど、久々にぐっすりと熟睡できました。
朝風呂に使って、身体もすっきりです。
そして朝食。
納豆に出し巻き卵。きんぴらごぼうにしゃけと、豪華な幕の内弁当です。
またまたおひつを空にしてしまいましたw
今回泊まった「天龍荘」。
1泊2食で11,000円。梅酒が1,000円、入湯税150円でしめて12,150円。
温泉につかれて、豪華な食事が2食ついてこの値段なら、お釣りがくるほどの贅沢な一夜だったといえるでしょう。
しかも、夜はクルマの音さえもしない静けさです。
自宅から2時間ほどで来れるんですから、また来ようかな。
「天龍荘」のHPはこちらです。