2025年4月のある週末、あと1週間もしたら世間はGWと騒がしくなる週末。
ふと思い立って山梨県の石和温泉へ向かった。
といいつつ、「温泉旅館」「部屋食」というキーワードで検索して見つけた一軒宿。
最近では大浴場付きのビジネスホテルばかりが目につくなかで、ひとり客を受け入れてくれる旅館は、まったくもって貴重。
だから、そんな偶然の出会いがなければ、石和温泉を選ぶこともなかったと思う。
とはいえ、山梨への旅は久しぶりだ。
新宿から中央本線の特急に乗り込み、列車が笹子トンネルを抜けると、左手下方にぽっかりと開けた盆地。
こうして上から見下ろすと、まるで武将の掌の中にある戦場のように見えてくる。
動画での様子はこちらです。
石和温泉の和風旅館「峯」
新宿から約1時間半で石和温泉。
山梨県の人口が80万人を切っているというのも驚くべき事実だけど、都心に近すぎるのも理由なのかもしれない。
そんなことを考えながら、徒歩20分ほど。
武士の邸宅のような「和風旅館 峯」の前に立ちました。
まさしく和風旅館。年季の入った柱が素敵です。
温泉を想起させる清らかな水の音には、見事な鯉が。
そして、こちら帳場には、見事な鎧が。
案内してくれた女将さんは、卯月という部屋に私を通してくれました。
鯉も鎧も見事だったけど、こちらも見事な純和風な部屋。
畳がとても綺麗。
聞いてみると、私が張り替えてから2人目の客とのこと。
こりゃ大変、汚さないようにしないと。
何をするでもない。
ただこうして、和室で畳の香りに包まれながら、ぼんやり過ごすのが最高の贅沢。
緑茶に茶菓なんて、旅館にでも泊まらないと口にすることもない。
落ち着いたところで、館内の見学。
甲斐国といえば武田信玄。
さっき特急の窓から甲府盆地を見下ろした時も、地形に武士の香りがしたけど、武田信玄生誕500年なんだね。(調べたら2021年がその年)
山に囲まれ、天然の要害とも言える地形を本拠とし、外敵から守りつつ、自らの領地を整えた武田信玄。
甲斐国には海がなく、資源にも乏しい。
しかし、信玄は治水や物流に力を注ぎ、経済を支えたという。
甲州金や信玄堤といった名前は、そんな背景の中で生まれたのだろうか。
ぬるめで長くつかっていられる天然温泉の露天風呂
和風旅館 峯さんの客室は10部屋。
しかし、今のところ、チェックインしてるのは私だけのよう。
というわけで、これも見事な天然温泉の露天風呂を独り占めです。
若干ぬるめなので、長くつかってられる。
効用は神経痛に関節痛、そのた諸々に、疲労回復に健康増進。
こちらは大浴場。
武田信玄は温泉で兵士の傷を癒したみたいだけど、現代社会もそこらじゅうから矢が飛んでくる野蛮な世界。
湯に身体を浮かばせてると、本当に疲れがとれる気分になる。
小鉢の数が見事な部屋食
さて、夕食の時間。これも見事な数の小鉢が並びます。
部屋にこもって、誰にも煩わされることもない食事。
これを、贅沢というか、わびしいというか。
賛否両論あるのかもしれないけど、これは賛否両論というより好みの問題。
私は、自分の時間は、自分で使いたい主義。
せっかくの自分の自由時間、なぜ人に気を遣わなくていけないのか。
だから、他人と一緒に食事するなんてありえない。(もちろん、自分の時間において)
気のおけない相手となら、2人でもいい、という人もいるでしょう。
でもホテルの大広間で、集団の喧騒に巻き込まれて食事したいと思いますかw
それこそ、せっかくの温泉気分が、そのへんのファミレスと同じになってしまう。
海外はいいんですよ。だって、何話してるかわからないんだから(^ ^)
だから、日本の旅は「部屋食を提供してくれる旅館」に限ります。
そのためには、多少、値段は張ったっていい。
お酒もオーダーしました。地酒かな。
揚げたての天ぷらが美味しそう。
これはエビのクリームチーズ煮。
ていねいにこしらえてますね。
給仕してくれる女将さんに「部屋での食事は落ち着きますね」。と話しかけると、
「ウチは、そういう方のための宿ですから」。
ひとり旅のニーズをご理解いただいている、素敵な旅館です。
小鉢がたくさん並ぶ膳は、食欲も増す。
鮑なんて久しぶり。
30分も蒸した釜飯も逸品でした。
食後のデザート。
ワインも追加しました。甲州ワインでないのはご愛嬌。
ほんとに「旅で眠りたい」。
畳にこぼさないように気をつけて、そして就寝です。
笛吹川の早朝散歩&純和風な朝食
翌朝。気持ちのいい朝。笛吹川のほとりを散歩。
水の流れが篠笛に似てるというのが名前の由来らしいけど、小鳥のさえずりとのハーモニーもまたよし。
そして、朝風呂です。軽い二日酔い気味のアタマがすっきりします。
ぼんやりと天井を見上げながら湯に浮かんでると、世の中が閉塞感に覆われた今、一人で味わうこの静けさが、何にも代えがたい贅沢に思えてくる。
毎朝、こんな温泉につかれたら、仕事もはかどるだろうな^ ^
朝食も小鉢いっぱい。
まさに「和風旅館 峯」。
旅館の朝食はこうであってほしい、という見本のような食卓です。
私の大好物の納豆も、
これまた大好物の鮭も、
定番のだし巻き卵も、純和風旅館をもりたてる食卓のメニューです。
ごちそうさまでした。夕食も朝食も完食。
これで、楽天トラベルで19,800円。お得なプライスといっていいでしょう。
短い滞在だったけど、心のこもったおもてなしをいただいた「和風旅館 峯」さん。
一軒家を改築したみたいだけど、石壁が城のお堀に見えてきます。
さて、慌ただしいけど、東京へとんぼ返り。
目がまわるように忙しかった2025年4月の週末の一コマ。
お土産の信玄餅にて終幕です。