上海郊外の水郷「西塘」は提灯と夕餉が水面に浮かぶ懐かしい記憶

カタカナで発音するとシータンと呼ぶ「西塘」は、上海郊外、虹橋から80キロほど西へ下ったところにある水郷古鎮。

2017年の古い地球の歩き方を見ると、映画ミッションインポシブル3のロケ地であったらしい。

私はエンタメ&スポーツまるで関心がないので、そんなこと言われてもピンとこないが、明や清の時代に建築された水路沿いの建物がきれいに保存された水郷の町とある。

運河に張り出された回廊に飾られた提灯に灯りがともる夕暮れの情景が素晴らしいと聞いて、時刻は17時。西塘古鎮の入り口に立ってみた。

17時以降は無料開放されるみたいだ。

ホテルのスタッフも、行くなら17時まで待ったほうがいいですよ、と親切だった。

暮れなずむ「西塘」にどこか懐かしい感覚

さて、さっそく古鎮の入り口とおぼしき通りに入っていくと、やはり17時を待つ同士たち。

無料の門が開放されて、肩が触れ合うほど細い路地を分け入っていきます。

石畳の通りに出ました。

なんとなく、懐かしい感覚。

はじめて来た「西塘」なのに、やはり中国の旧市街は、どこか日本人の旅人をほっとさせる何かがある。

水路に出ました。

すでに夕暮れの帳が落ちはじめ、赤く染まる提灯、川面に反射する無数の灯りに感銘を受ける。

街の賑わいは旅情をかきたてるには十分すぎるほどで、人波のなかに身を置くことで、かえって「異国に来たのだ」という実感が深まっていく。

懐かしさ、を感じるのは、上海という都市に、どこか特別な親近感があるからかもしれない。

私が初めて訪れた大陸中国の街であり、蘇州へと続く車窓の風景が私の中の「中国」の原風景をかたちづくったような気もする。

つい3時間ほど前まで歩いていた周荘とも違う雰囲気。

いや、周荘も、日が暮れると、このような姿になるのだろうか。

時間や季節などによって、姿をガラリと変える、まるで女性の姿のような上海の水郷古鎮です。

観光客でごった返しているはずなのに、不思議と心が騒がない。

むしろ、どこか映画のセットの中に迷い込んだようなエキゾチックさが心をくすぐる。

石畳を照らす提灯の赤い色が、本当に見事だ。

BARなんてのもある。

夕餉の香りと笑い声、観光客のざわめきすら旅情の一部になっていく。

それを味わえるのが、ひとり旅の特権。

ふたたび水路にぶつかりました。

 そのまま水路を歩けそうな「西塘」の夜

とっぷりと日が暮れました。

しかしここからが「西塘」の真骨頂。

軒先から聞こえる人々の楽しそうな団欒は増すばかり。

12月の上海、多少は寒い。しかし風はない。

ひと糸乱れぬ水路がまるで鏡面のよう。

鳥だったら、あやまって入り込んでしまうんじゃなかろうか。

回廊に無粋な安全柵などない。水路をそのまま歩けそうなので、余計怖い。

実際、提灯をよけるとき、水路側によけると、足を踏み外すおそれあり。

そんなハプニングも風物詩になりそうな「西塘」の夜です。

ほんとに今回は、「西塘」に泊まってよかったと思う。

この夕餉の雰囲気を味わった後で、上海に公共交通機関で戻るのは、けっこう骨だ。

この観光客たちも、このあたりに宿をとっているのだろうか。

その割には、さっきの親切なホテル。4,000円と格安だった。

夜もふけはじめて、しだいに寒くなってくるんだけど、

観光客の足はまったくおとろえず。

さすがに、500年からの歴史を誇る「西塘」です。

「呉越同舟」の土地を歩いて

建物の歴史は元や明以降だけど、土地としての歴史は、それこそ春秋時代にまでさかのぼる。

今回の週末旅、春秋航空で飛んできたのも何かの縁だけど、

ちょうどこのあたりは、「呉」と「越」が争っていた土地らしい。

四字熟語「呉越同舟」の「呉」と「越」です。

呉越同舟なんて、いい響きだな・・・

欄干というか、岸壁というか、回廊のへりに腰掛けて、ただ水路に映る灯りを眺めます。

週末旅、こんな豊かな気分になれたのも久しぶりだな。

なにしろ、このところ忙し過ぎた。

ただ忙しいだけなら救われる。

忙しさが職場を殺伐さに変えるから、斜陽産業はいけない。

もちろん殺伐な雰囲気を作ってるのは、会社の役員たち。

昭和な考え方や話題は、ほんとやめてほしいよ。

ふだんの週末は、家に帰っても、その役員たちの怒号が頭にこびりつくけど、そんなものが忘却の彼方に消える「西塘」の夜。

中国のノービザ解禁が報道されて、すぐさまポチった航空券。ほんと来てよかった。

明日の朝も来てみよう。

朝もやの中だと、また違う表情を見せてくれるかもしれない。

願い事を飾れるらしい。しかし、キャッシュレスのみ。

今回の私、ノービザだけに目が眩んで、アリペイもウイーチャットもインストールしてこなかった。

さて、そろそろ、ホテルに戻りましょうか。

あらためて思うけど、これは芸術ですよ。語彙力がないのがもどかしい。

こんな水郷が、きらめく大都会上海の郊外にあるという大陸中国の奥深さ。

国土が広い国はうらやましい。

国内旅行でも、異郷を感じとれるのだから。

私のホテルは古鎮の外だけど、

古民家を改築した宿もありそうですね。

そんな宿に泊まるのも面白そう。

とにかく、賑やかさがつきない「西塘」の路地でした。

古鎮の外に出て、夕食。

店の選択が不十分だったけど、基本的に中華料理はなんでも好き。

おすすめを適当にオーダーしたらでてきた定食。

またこれが美味いんです^ ^

では、隣のコンビニでワインを仕入れてホテルへ。

豊かな気持ちの余韻を楽しみながら、週末旅の祝宴といきましょう。