中華人民共和国の国土面積は約960万平方キロメートル。これは、日本の約25倍。
そして、人口は、13億7千万人。これは、日本の約10倍。
これらの国民の移動に、欠かせない足となっているのが中国の鉄道です。
これだけ広大な大地、そして膨大な人口の都市間の移動です。とても、飛行機だけでは旅客の需要をまかないきれず、しばらくは鉄道の重要性は、凋落することはないと思われます。
trip.comのサイトで中国の列車の予約
私は、中国鉄道の旅が大好きです。
なぜなら、中国の鉄道は、まさに生活インフラとしての鉄道だから。
国民の足として機能している鉄道だから。
クルーズトレインなどのイベント的要素が微塵もない、正真正銘の移動手段なのです。
つまり、中国の鉄道に乗るということは、大地を移動し旅の距離感を感じ取りながら、雄大な景色を楽しみ、同時に、彼らの生活を垣間見ることができる。
私にとって、旅の要素を兼ね備えた、一石三鳥の旅になるのです。
さらに、長い乗車時間は食の需要を伴い、ほとんどの長距離列車には食堂車も連結されています。
中華料理を楽しみながら、を加えれば一石四鳥です(笑)
なので、訪中時には、毎回、列車での移動をスケジュールに盛り込んでいます。
今回は、西安⇒蘭州。いつもどおり、trip.comのアプリで予約しました。
このアプリ、ほんとに便利!
その昔、列を作るのが苦手な中国人がひしめく窓口で、筆談で切符の購入に挑んだ挙句、「没有(メイヨウ ないという意味)」とつき返される話を、下川裕治さんの作品などで、目にしていました。
が、いまや、アプリでピッピッと予約して、あとは窓口で画面を見せるだけ。
10年前からしたら、信じられないかもしれません。
そんなわけで、中国の鉄道は、私にとって楽しみの一つ。
さて、車窓から、どんな台地を見せてくれるのか・・
連日の早起きで、寒くて眠いけど、ワクワクしながら、駅へ向います。
震えるほど寒いフロントで、チェックアウト手続き。
中国の人は、空間を暖めず、着込みます。
それはわかるけど、フロントの女性だって、震えながら飛び跳ねてたよ(笑)
氷点下の中で迷子になる!? 未明の西安駅まで
そのフロント女性から、西安駅までの道順を聞いて、徒歩10分だというので、歩いていくことに。
幻想的なライトアップにみとれるも、あまりに人気がない。
殺気を感じながら、早歩きでキャリーを転がします。
ところが、見事に道に迷いました。
しかし、これは、笑い事ではありません。
時刻は4時半。行き交うクルマもタクシーもない。気温は、おそらくマイナス10度ほど。
とにかく、大通りに出て、タクシーを拾わないと・・・
ホテルから、タクシーで行かなかったことを、いまさらながらに後悔・・・
ていうか、これ、危険すぎ。大いに反省しております。
そして、寒い・・・ 足のつま先から凍えそう・・
大通りに出て、タクシーが通るのをひたすら待ちます。
ようやく、つかまえることができたタクシーの運転手に「火車駅(フォチャージャン)」と言っても、発音が悪く、何度言っても通じず。
シュッシュッポッポ、と蒸気機関車のまねをしてもダメ。雪の路上に列車の絵を描いてもダメ・・・
途方に暮れかけましたが、2年前に撮った西安駅の写真がスマホに保存してあったことを思い出し、それをみせると、わかった、わかったと、笑いながら、何度もうなずいてくれる、親切な運転手でした。
しかも、この運転手、11元のところ、10元でいいよ。
西安駅前に着いたのが5時10分ころ。運転手が神様に見えた瞬間でした(^^)v
いやあ、しかし、肝冷やしました。
まさか、2回しか曲がらなくていいのに、道に迷うとは・・・
さて、ほっとしている場合ではなく、チケットを手に入れなくてはなりません。
列車の発車時刻5:32まで、あと20分・・・
中国の大きな駅は、防犯上から、入り口は狭い1箇所です。
その狭い1箇所をさがして、さらにチケット売り場を探します。
チケット売り場は、2年前に経験があるので、すぐわかりました。よかった(^_^)
うわ、しかし、この人の数。
西安の街は眠っているようでしたが、市民はしっかりと活動をはじめています。
起きたのが4時。ホテルを出たのが4時20分。
そして、駅に来るのに50分もかかってしまいました・・
ちょっと、油断しちゃったなぁ・・
西安 ⇒ 蘭州 7時間の列車の旅
辛抱強く待って、なんとかチケットをゲット。
窓口の女性も、trip.comの扱いに慣れていてくれて助かりました。
さあ、発車まで、あと10分。駅の中に急ぎましょう。
セキュリティチェックを受けて、このエリアまで来て、ほっと一安心。
もう、大丈夫。乗るべき列車はT205列車です。
ほんとに、鉄道は国民の足。
まだ、未明ですが、そんな時間であることを忘れさせる、長距離列車を待つ人々。
しかし、駅の待合室。そんなに暖房は効いていません。外気温よりはさすがに暖かいですが、とても上着は脱げません。
昔の日本も、こんな感じだったのかな。
10分前にならないと、ホームに入れてくれません。
T205列車の始発駅は上海。
ここまで17時間半走り続けてきた列車です。
私は、ここから676キロ北西へ行った蘭州で降りますが、列車はその後も延々と走り続け、終点はなんとウルムチの先、伊寧になります。
ここ西安からでも、乗車時間は35時間以上! すごすぎ・・
列車に乗り込みました。
時刻は5時半とはいっても、夜明けが朝8時の5時半ですから、外はまだ真っ暗。
車内はまだ寝静まっています。
外気温はマイナス1度。
うそだろ、もっと寒い気がする。
列車は、静々と、西安駅を発車していました。
自分の部屋を確認して、扉を開けると完全に消灯状態。当たり前ですが、みんな眠っています。
上段の自分のベッドに、キャリーバッグだけを押し込み、通路の椅子で夜明けを待つことにしました。
チケットとカードを交換
すぐに、女性の車掌さんが登場。
チケットを持っていかれ、代わりにこれが渡されます。
降りる駅を管理してくれてるってことですね。
中国の夜行列車は、これで4度目。
なんか、いつも上段だな。なにか、発券上のルールみたいのがあるんだろうか。
たしかに、パスポートで身分を明かしているし、老人や女性は下段、それ以外は上段とか・・・
でも、西安~蘭州の676キロを軟臥車、つまり日本でいうA寝台で手数料込み259元(約4,400円)ですから、安いですよね。
その間の停車駅は、宝鶏と天水だけのようです。
しばらく、通路のいすを引き出して座り、暗い外を眺めていましたが、となりの食堂車をのぞきに行きました。
中国では、おおむね軟臥車の隣に食堂車が連結されています。
案内板によると、朝食は朝7時からとのこと。出直すとします。
帰りにトイレを拝見。きれいな洋式でした。
少しづつですが、夜が明けてきています。
食堂車で朝定食
7時を待って、再度食堂車を訪問。
たぶん、朝の定食は一種類しかないでしょうが、筆談でオーダーしたつもり。
女性の服務員が、なにやらわめきますが、何のことだかさっぱりわかりません・・・
そのうちに、チケットと交換したカードを見せろといっていることがわかり、事なきをえます。
なかなか意思の疎通がうまくゆきませんが、中国の鉄道は、女性服務員だらけ。
顔立ちの整った女性もいっぱいいます。
運ばれてきた朝食は、蒸しパンにザーサイ。ゆで卵にスープといった簡易なもの。
10元です。(170円)
考えてみれば、昨夜はワインとポテチだけ。
とてもお腹すいているので、一生懸命食べます。味は、可もなく不可もない、といったところかな(笑)
蛇足ですが、帰国後に、この写真を娘に見せたら、不思議そうな顔をして「おいしいの?」と聞かれました。
食べているうちに、列車は宝鶏に到着。
ここは、四川省の成都などへの分岐駅です。
食堂車の旅っていいよね。
日本では、もう味わうことができません。
凍りつく渭河&シルクロードの風景
腹ごしらえして、軟臥車に戻りました。
同室者は、まだ眠っているので、相変わらず、通路の席に腰を下ろして、窓外を眺めます。
宝鶏を発車した列車は、小さな駅を次々に通過しています。
雪も深くなっています。
窓外に川が現れました。
これは、黄河の支流、渭河です。
ダムでもあったのか、川幅が広く、そして部分的に凍っています。
この凍りついた川を見て、明日のスケジュールが心配になりました。
明日は、黄河の上流をモーターボートでさかのぼり、世界遺産 炳霊寺石窟を訪問する予定です。
悪天候で行く手を阻まれたら、乾陵に続いて、ダブルノックアウト・・・
それにしても、こんな凍え切った川を見るのも久しぶりだ。
上流に行くにつれ、川幅が狭まり、そして茶色くなってきました。
それとも、黄色と表現したほうがいいんだろうか。
熱心に外を眺めていて、気がつきませんでしたが、夜も明け、乗客が起きだしてきています。
そこへ、ちょうど通りかかる車内販売。
食堂車よりも安いので、売れ行きはよいようです。
列車は、山峡のレールを快調に走ります。
ほとんどゆれません。スピードはけっこう出しているはずなのに。
トンネルも多いですが、日本のような、山間部は連続した長大トンネル、という感じでもなく、十分に山峡の景色を楽しめます。
やっぱり、列車にしてよかった・・
私の部屋の扉があいて、同室者が外に出てきました。
同室者は、なんと3人全員女性!
子供を連れた家族連れ(子供を含めると4人)、という感じでした。
ちなみに、通路では、電源コンセントの取り合いが繰り広げられています。
暖かい車内から眺める、凍えるような風景。
山間に、突如現れる町。
雪は止む気配がありません。
向こう側の山脈は何と言うのかな?
宝鶏は過ぎてるから、チンリン山脈ではないとは思うけど。
山肌にへばりついたような道は、シルクロードでしょうか。
少し地形が開け、都市が出没。
天水のようですね。
天水駅に停車。ちょうど午前9時でした。
反対側にいた、蘭州から杭州への列車。向こうも長旅ですね。
ひっきりなしに、通る車内販売。
カップ麺などが、飛ぶように売れてます。
天水を発車。
中国の街は、どこも発展中のようです。これは、素直にすごいこと。
連日の朝4時起き。少しまどろむとします。
もう、みんな起きてるので、気兼ねなく上段へ。
寝台車は下段の方がいいと思うけど、長距離列車の場合は、気兼ねなく横になれる上段の方がいい。
そんな気がします。
はしごがないので、登るには、少し要領を要しますが。
これは、上段ベッドから見た風景。
列車の乗り心地があまりにもよく、あっというまに眠りを誘います・・・
楽しい食堂車でのランチ
1時間ほど眠って、時刻は午前11時。
蘭州までは、あと2時間弱。また食堂車にでも行ってみるとします。
片隅では、休憩中の車内販売員が。
食堂車っていいよな・・・
景色が動いていくレストランなんて、楽しいです。
外の気温は、マイナス6度。
そして、列車の速度は時速112キロ。
揺れもなく、快適な食堂車の車窓。
時間的に、ティータイムなんだろうけど、座ってても、誰も文句言いません。
そのうちに、昼食時になりました。お客さんもちらほらと。
出されたメニューの中から、回鍋肉を注文。
料理がくるまで、景色を楽しみます。
蘭州まで、あと40分くらい。列車が並走します。
料理が運ばれてきました。熱々の回鍋肉。ご飯もおいしいです。
ただし、スープはなし。20元でした。
蘭州駅に到着
食事を終えた後も景色を楽しんでると、女性服務員が、呼び止めます。
チケットを交換しに来てくれたのでした。蘭州まであと20分。
下車の支度をしましょう。
部屋に戻ると、同室の家族連れが、「大丈夫?チケット受け取れた?」みたいに、心配してくれます。
親切な中国人に対して、私は「謝謝(シェシェ)」しか言えません。
少しは、中国語しゃべれるようになりたいな・・・
そして、定刻12:40に蘭州駅に到着。
蘭州って、中国語では「ランジョウ」と読み、あの駅名票のように書きます。
日本語とは、似ても似つかない文字です。
西安から7時間ちょっと、快適な列車の旅でした。