【散歩するアンドロイド】by SAORI 旅動画お姉さんの静かなミステリアスエッセー

突然ですが、ブログやyoutubeで、こんなサムネイルをみかけたら、クリエイターはどんな人だと思いますか?

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ふつうなら、旅オタク、鉄道オタク、それに準ずる系のユーチューバーを思い浮かべると思う。

ところが、これを演じているのは「アンドロイドのお姉さん」。

女性で、容姿端麗なモデルさんである。

「アンドロイドのお姉さん」とは?

アンドロイドというのは、スマホのosのことではない。

「アンドロイドのお姉さん」ことSAORIさんは、東京ゲームショウで、「Detroit: Become Human」というゲームのアンドロイド、つまりロボット役を演じていたモデルさん。

その役柄が見事にハマり、SNSで拡散され一気に認知が高まり、その後AIロボット役などのオファーが来るようになった。

アンドロイドキャラで食べていけるようになったので、腹をくくっているとSAORIさんは語っている。

ユーチューバーとしての「アンドロイドのお姉さん」

ゲームにも興味がある私。

ネットの記事などを通じて「アンドロイドのお姉さん」の存在は知っていた。

ある日、youtubeをパラパラとめくっていたら、サムネイルに見覚えのある女性が目にとまり、「アンドロイドのお姉さんも動画出してるんだ・・」という感覚でクリックしてみると、これが「旅動画」だった。

最初は、東京ゲームショウのモデルと「旅動画」が結びつかなかった。

なぜなら、あげている「旅動画」のサムネイルが、前述のように「旅行好きな女子」というより「旅オタク」「鉄道オタク」を思わせるものばかりだったから。

どう考えても、ゲームショウのモデルをつとめる女性が投稿者とは思えない。

ところが、視聴してみると、しっかりと作りこまれている。

取り上げてるテーマも、コアなものばかり。

旅動画をあげている女性は多いが、雰囲気が全然違う。

BGMなし。

派手なアクションなし。

落ち着いた声。しかし、ときおり荒っぽさが混じる、まさにロボットのような振る舞いに、さっそくチャンネル登録させてもらった。

youtubeのジャンルは数多くあれど、本当の旅好きでなければ旅動画は作れない、と私は思ってる。

前提となる知識やセンスも必要だが、タイミングを待つという緊張感も必要。

移動している道中なんか、シャッターチャンスを逃さないように、常にカメラを構えていなくてはならない。

私もやろうとしたことがあるが、その緊張感でヘトヘトになってしまうので、あっさりあきらめた。

 

モデルさんというのは、自分が撮られることを通じて、画角センスがあるのだろうか。

TVなどで紹介される旅番組よりも、旅人目線になっている動画の構成が素晴らしく思う。

チャンネル名は、出版された書籍名と同じ「散歩するアンドロイド」。

青春18きっぷで旅する女性は見かけるが、「散歩」と称して、日本最長距離を走る路線バスを乗りとおす女性を、私はほかに知らない。

理屈抜きで「旅が好き」なSAORIさんのエッセー

いつか、本を出版するのではないかと思っていた。

動画中でのコメント、そして表現力や語彙に凄みを感じていたからだ。

本の出版を前にyoutubeでもライブがあったが、そこでSAORIさんは、渾身の力作と感想を述べていた。

ダブルスペース的なエッセーかな、と思って手にしたが、とんでもない。

ものすごく、意思と経験を感じさせる文字がつまったノンフィクションだった。

交通費、宿泊代、ご飯代、旅をするにはお金がかかる。でも旅の楽しさを知ってしまうともっといろんな場所に行きたい、見たい、知りたいとなる。旅への欲求は果てない。

どんどん身なりにお金をかける余裕がなくなり、みすぼらしくなる。旅をしている人は大体薄汚れた格好をしている(ど偏見)。

本著「博多のもつ鍋とブランドバッグ」より

予定を立てず、一人で街を歩き、一人で宿に泊まる。

著者は、こんな旅を繰り返してきたのだろう。

幼少の頃の好きだった本は「おしいれのぼうけん」だそうだ。

幼稚園でいたずらをして、おしいれに閉じ込められた男の子が、泣いているうちに、おしいれの壁のベニヤ板の模様がトンネルや高速道路のように見えてきて、冒険の旅に出るおはなし。

畏れ多いが、私も大好きで、枕元に置いて寝ていた。

「旅は移動」「旅は経験」のベクトルに共鳴する

混浴に入っていくと、2人だけの世界をつくってるカップルやスケベ心を注意されるおじさんがいる。

そして、この中に、旅の恥はかき捨てと勇敢に入っていく女性(著者)。

これらを、SAORIさんは「現代社会の多様性」と表現している。

彼女は、ユーモアと哲学を兼ね備えた文豪だ。

彼女の「旅=経験」に対する欲はとどまることをしらず、「無人島でのソロキャンプ」に挑戦したり、都会の中の廃墟を訪れたりしている。

神奈川県の「鶴見線・国道駅」なんて、普通の人は知らない。

廃墟をバックにしたモデル撮影会なんてものがあるらしいので、そのあたりから情報を得たのだろうか。

そうでなかったら、彼女は筋金入りの「鉄オタ」だ。

いわゆる路地裏旅。

日本が、高齢化社会とともに朽ちていく姿と、これからさらに麗らかさをますモデルのギャップが、ミステリアスでまさしく対照の妙である。

瓦礫の上を無造作に歩くターミネーターのようだ。

この、動画でUPされている場所。

どれもこれも、奥行きがあって面白く、聖地化されるまえに、訪れてみたい。

いっぽうで、彼女は「旅は移動」とみたて、「夜行列車は旅の一部」「青春18きっぷは夢のようなきっぷ」として、旅に接している。

旅に対するアプローチが、普通に違う。

これまた畏れ多いが、私自身がいつも目指している「旅=移動」という考え方そのもの。

移動中はひたすら考え事をするというのも「移動マニア」としての共通項だった。

 

本著の情報から得られる彼女の海外渡航歴はインドとトルコ。

おそらく、もっとバックパッカー的な旅をしていると想像するが、次作には、海外版なども期待したいものである。

昨今、旅をベースとした「ノンフィクション」と「エッセー」を織り交ぜた作家が少なく感じる。

ニッチな場所を求めて、移動し、経験する。「旅のベクトル」が、これほど共鳴する旅人に出会えたことが素直に嬉しい。

一刻も早くアフターコロナとなって、彼女のミステリアスな行動に、さらに磨きがかかることを応援していきたい。

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