旅好きな私は、どちらかというと安宿派。
こんなもの流派でもなんでもなく、先立つものがあるかないかで決まるものだけど、それでも、少々財布のひもを緩くして、たまの贅沢を味わうのもいいものです。
今回泊まった「萩の宿 常茂恵(ともえ)」は、私の旅人生においてもっとも高級な旅館。
萩という気品の高い町で泊まるには、高貴な老舗旅館を選ぶべきではないかと、出発前から自分に暗示にかけて予約しました。
そして、「萩の宿 常茂恵」は、設備、接客、料理、温泉、立地と、すべてにおいて最高のもてなしをふるまってくれました。
ちなみに、私の泊ったプランでは宿泊費は35,000円。
私の感覚では、1泊2食で2万円を超えれば高級旅館の印象。
3万円を超えるなんて、高嶺の花です。
なにを言う、1泊5万や10万のホテルなんて、いくらでもあるじゃないか、と言われそうですが、そんな尺度を持ち出されても困る。
庶民にとっては、1泊2食で3万円を超えれば、間違いなく高級です。
かなり多めに写真を貼り付けますので、ぜひ泊ったつもりになってください(^^)
松本川沿いにたつ創業100年の「萩の宿 常茂恵」
「常茂恵」は、萩デルタを構成する松本川のほとりにたっています。
東萩の駅から徒歩8分ほど。萩城城下町までも歩いていける、非常に便利な場所です。
フロントからして、気品が感じられます。
こういう旅館に不慣れな(というより初体験)私は、鷹揚に構えられません。
部屋を案内してくれる仲居さんが来るまで、こちらでお休みくださいとのこと。
「本日はどちらを回られたんですか?」と挨拶しながら、ウエルカムドリンクのサービスです。
ビジネスクラスに乗ってる気分ですね。
そして、部屋へ案内してくださります。
私の部屋は「沙羅の間」でした。
お年を召された仲居さんが、私のバッグを持ってくれるので、ほんとに恐縮です。
うわ、なんかすごそうなお部屋。
部屋に入って、あらためて仲居さんの丁寧なあいさつが終わった後、萩の町の最近の出来事と、食事と温泉の説明があって、さがっていかれました。
部屋が3つもある「沙羅」
これはすごい。「沙羅」の間には、部屋が3つもあります。
この部分は、部屋とは言わないのかもしれないけど。
中国を旅してると、広い土地をふんだんに使った、とてつもなく部屋の広いホテルなどに泊まることはありました。
しかし、日本の宿泊でこんなに空間を贅沢に使うのは初めて。
玄関先まで入れたら、部屋は4つです。
一人で泊まるには、もったいない。
温泉旅館ですが、部屋にもお風呂があります。
公式HPによると、
「萩には中央からの客人をもてなす宿泊施設がない」
萩の名士が、山口県の政治家厚東常吉に相談したのがきっかけで、「常茂恵」の歴史ははじまったそうです。
窓からは、「常茂恵」の庭と、萩の町を見下ろせます。
「常茂恵」の創業は大正14年。西暦1925年です。まもなく創業100年にもなる老舗旅館です。
「常茂恵」の名の由来は、「常」に「共に栄え繁り、恵みがあるように」との願いを込めてつけられたそうです。
では、館内の見学を兼ねて、温泉に浸かりにいきますか。
萩の天然温泉を堪能できる黒御影石の湯舟
さて、今日は一日中自転車で走り回り疲れています。温泉が楽しみです。
幸い、先客は誰もなし。
かすかに香る塩の香り。
身体を洗って、湯船につかります。
お湯の勢いもすごい。
こりゃ、疲れとれますよ。気持ちいいわ・・
見上げれば、ヒノキ造りの天井でした。
塩の香りが示すように、こちらは塩化物泉。
温泉の成分が皮膚について保温効果が高く、神経痛、関節痛にも効くそうです。
湯上がりに館内の散歩
では、湯上りに「常茂恵」の館内を見学してみましょう。
とにかく、こんな立派な旅館初めてなので、なにをみても新鮮です。
昭和天皇が泊った貴賓室には、専用の庭があるそうですが、こちらも雰囲気あります。
しかし、いい眺めだなあ。歴史ある町は、やはりいですね。
このままくつろいで、お酒でも飲みたい気分ですが、もうすぐ夕食の時間です。
安宿やドミトリーもいいけど、こうやって、価値あるものにお金を払い、その対価を味わう。
そんな楽しみ方をするようになったということは、私もようやく大人になった証拠でしょうか。
価値はわからないけど、館内には様々な展示物があります。
本日は宿泊客は少ないのか、館内はとても静かです。
そろそろ、部屋に戻りましょう。
夕食は旬の懐石料理を部屋食にて
夕食の時間になるまで、飲み物を物色。
調子に乗って飲んでると、大変なことになりそうです(^^)
わくわくする夕食のメニュー。
まずは、先付に前菜。
前菜ひとつとっても、工夫がこらしてあります。
トマトののった黒ゴマ豆腐も美味しそうです。
高級旅館の定番、部屋食は大好きです。
お酒はオーソドックスに、ハイボールに梅酒。食後にまた温泉に入りたいので。
では、ひごろ頑張ってる自分に乾杯です(^^)
前菜も美味しいです。
さて、仲居さんが、ぞくぞくと運んでくれます。
お刺身の造り。
この椀物が珍しい。加賀太きゅうりに、鱧葛(はもくず)たたきだそうです。
次から次へと運んでくれる仲居さん。すべて熱々なので嬉しくなります。
焼き物は金目鯛。
こちらはタケノコ。
やまぐち和牛のしゃぶしゃぶです。
たまの贅沢というのは、心が洗われますね。
ほんと、毎日厳しい仕事をこなしてるんだから、たまには休まなきゃダメでしょ。
豊かな料理を目にしてると、本当に気持ちまで豊かになります。
山口県産のこしひかり。光ってます。
炊き立てでとても美味しく、何杯でも入ります。誰ですか、炭水化物や糖質が敵と言ってるのは。
何事もバランスです。
ひと月に1回くらい、おひつをカラにしたって、身体になんの影響もありませんよ。
フグなんて、食べるのすごい久しぶりだ。
さすが山口県ってとこですね。
安倍元総理がプーチンを招いたときは、どんなもてなしをしたのだろうか。
ふと、そんなことを考えます。
ごちそうさまでした。
1時間半かけた食事が終わりました。ほんとに美味しかったです(^^)
5月の山口県。19時半でも日は長いですね。
窓から夜景を眺めていると、デザートが運ばれてきました。
就寝前にもう一浴
さて、寝る前にもう一浴。そして、またぶらぶら散歩。
ライトアップされた庭園が素敵です。
部屋に戻ると、布団が敷いてありました。
明日も、朝から萩の町を歩きます。早く寝ましょう。
部屋の明かりを消してみると、庭園のライトが浮かび上がっていい感じです。
貴族になった気分で床につくのは久しぶりでした。
萩の食材を使った朝食
早く寝たので早く目が覚めます。旅先での早起きは三文の得になります。
まずは朝風呂に。
そして、食事会場へ。
私は二番乗りでした。
これまた、素敵な朝食が期待できそうです。
「朝ごはんは旅の一日のスタート」
さすが料理長、素晴らしいことをおっしゃりますね。同感です。
まだ、焼き魚とごはんが来ていない状態。
見事な掛け軸と対峙し、委縮してしまいます。
焼き魚とごはんが来ました。これで勢ぞろい。
食べてしまうのが惜しいくらい、きれいな盛り付け。
まずは黒ゴマジュースを。牛乳に黒ゴマとはちみつが加えられた濃厚な飲み口です。
手作り豆腐です。とてもヘルシーな食感。
朝からこんな食卓に恵まれて、言うことありません。
庶民の私には、これの使い方がわからない。
朝から幸せだなあ。萩っていい町だなあ・・ほんとそう思います。
ごはん3杯もお代わりしちゃいました(^^)
チェックアウトまでのくつろぎ
満腹して、幸せを感じながら、庭園を眺めます。
お土産屋さんをのぞいてみます。萩焼ですね。
昨夜飲んだハイボールは「夏みかんハイボール」でした。
お、コーヒーがある。いただきましょう。
たまには、こんな一夜もいいよな。
私は幼少のころから旅をし続けてきましたが、若いころの寝床は夜汽車か駅のベンチでした。
それが、こんな高級な旅館に泊まれる身分になったことに、素直に感謝です。
そしてチェックアウトです。
ゆったりと、そしてたしかな時が流れていた「常茂恵」。
私の旅人生で、初めて味わった贅沢な一夜でした。
萩の宿「常茂恵」の公式HPはこちらです。