中国全人代は6月30日、香港の1国2制度が形骸化される恐れのある「香港国家安全維持法」を全会一致で可決した。
その翌日の7月1日は香港の中国返還記念日。
あまりの段取りのよさに、感嘆するところである。
私にとって、2020年上半期の衝撃的出来事とは、コロナでもなんでもなく、この法律の施行に尽きる。
日本人にも適用される「香港国家安全維持法」
「香港国家安全法」とは、端的にいえば、香港での反中国共産党などの異端分子を押さえ込む法律。
ところが、これは日本人を含む外国人にも適用されるところが恐ろしい。
要するに、日本で香港を擁護するような言動を行っている日本人も法に触れることになり、SNSなどでの発言を削除しはじめている人もいるらしい。
はっきり言って、私は、こんな記事を書いている場合ではないのかもしれない。
台湾当局が不要不急の香港渡航を控えるよう呼びかけ
とはいうものの、それはさすがに強引すぎるだろ。
私も最初はたかをくくっていた。
ところが、台湾当局の対中国政策を所管する委員会は、台湾人に対して「不要不急の台湾渡航を控えて欲しい」と呼びかけはじめたとの新聞記事を目にし、一気に現実味を帯びてきた。
大陸中国に対する台湾の事情というのもある。
中国から見れば、台湾独立に関する言動は「国家分裂行為」としているからである。
実際、台湾のNGO関係者は従来から中国への渡航を控えていたが、今後は香港への渡航も控える。
それどころか、「香港国際空港での乗り継ぎも控えたほうがよい」と伝えられているのだ。
この「国安法」の罪は
- 「国家分裂」
- 「国家政権転覆」
- 「テロ活動」
- 「海外勢力と結託して国家安全に危害を加える」
以上4つで、最高刑は無期懲役。
なにをどうすれば法に触れるという具体性がないので、どこまで拡大解釈されるのかわからないところが怖い。
たとえば、私はツイッターで「香港頑張れ」と、度々書き込んでいる。
そのSNSアカウントと私のパスポートがなんらかの形で紐付けられていたら、香港入境、あるいは乗り継ぎの際に逮捕という可能性がゼロではないということだ。
私は、南アフリカの帰りに香港乗継を経験したことがあるが、イミグレのない、合理的な乗り継ぎスタイルだった。
これからは、乗継時もパスポートチェックを行う北京や上海のようになるのかもしれない。
まあ、いわゆる人権活動団体などに所属していない限り大丈夫だろうとは思うが、いかんせん推測の域を出ないのがなんとも不気味である。
私は、このコロナ騒ぎがおさまったら、真っ先に香港に行きたいと思ってる。
それまでは、このブログも含めて、発信は控えたほうがよいのか。
考えてみれば、昨年の5月、新疆ウイグル自治区を旅したときに、私はパスポートから携帯の電話番号、メールアドレスもすべて記録され、パスポートも全頁コピーされた。
たかが一旅行者に対して、そこまでやるとは思わないけど、私の記録が、中国当局のデータベースにどんなふうに登録されているのか不安な気持ちも隠せない。
ホータンの町では、風景写真を撮っているのを咎められ、何度も警察に画像を消去させられたし。
ひょっとしたら、もう中国や香港をふつうに旅することはできないのだろうか。
それは私にとって、旅ができないのに等しいくらい残念な未来である。
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