交差点バザール「タキ」で涼むブハラの午後【ウズベキスタン旅行記 #15】

ブハラを観光する多くの人は、列車または飛行機でこの地に降り立って、まずは旧市街に向かうことになると思う。

そこからおもむろに、徒歩圏内のカラーン・モスクなどをたずねようとすると必ず通る場所がある。

それが岩でできたアーケードのような商店街「タキ」である。

いったい、タキ(Taqi)とは何か。

それは、ブハラやサマルカンドでもみられる、旧市街の路地が交わる交差点に築かれた「ドーム型バザール」のこと。

プロフでお腹いっぱいになった私は、涼を求めて、その「タキ」に向かって歩いて行きました。

交差点型の屋根付きバザール「タキ」

ブハラ旧市街の中心には、「タキ」がいくつかあるようで、ラビハウズから5分も歩かないうちに、その「タキ」らしき建物が見えてきました。

語源はペルシャ語の「タク」=「アーチ」に由来しているとのこと。

構造的には、四方に通路が伸びる交差点上に、丸屋根をかけ、内部に店舗が並ぶ構造をしており、

風通しよく、日光も取り入れ、そして雨季には雨除けになるなど、気候に最適化された、中世からの都市設計の一環です。

まさに交差点で、たたずんで見てると、四方八方から、

バイクや自転車も突っ込んでくるので、油断はできません。

涼むつもりで来たのが正解。

とても風通しがよくて、日中の炎天下がウソのように冷んやりしてます。

加えて、最も暑い午後15時。観光客はホテルで涼をとってるのでしょう。

見物人少なめで、客引きもなく、ゆっくりと見学できます。

ブハラにおける「タキ」の建築は、16世紀後半、アブドゥッラーフ2世の治世の時期に最盛期を迎えたとされます。

この時代、ブハラはシャイバーニー朝から派生したアストラハン朝ブハラ・ハン国の中心都市。

モンゴル帝国の襲来から復興し、中央アジアのイスラム文化・学問・商業の中心地として繁栄していました。

アブドゥッラーフ2世は、復興に際し宗教建築や公共インフラの整備を重視。

マドラサ(神学校)、モスク、キャラバンサライ、そしてバザール構造を一体的に整備していく中で、自然とそれらが交差する「タキ」が都市機能の中心となっていきました。

どれもこれも美しい刺繍。

これは観光客向けの土産物であり、また市民の生活用品でもあるようです。

タキにも名前がついていて、ここはおそらく「タキ・テルパクフルシャン」。

意味は「帽子商のタキ」。伝統帽子や頭飾りを商う職人のバザール。

たしかに、そんな感じに見えます。

出口が見えます。別のタキに行ってみましょうか。

ペルシャの風をまとうシルクロードの交差点ブハラ

気温40度と、最も暑い時間帯のブハラは、さーッと人がいなくなる。

こんな時間に、一生懸命日焼け止めクリーム塗りながら歩いてるのは私くらいだけど、

ブハラの旧市街は、ほんとに不思議な構造をしている。

迷路のようで迷路でない。いつまでも歩き続けられるという感じ。

また「タキ」が現れました。

「タキ」は路地と路地を結んでいるので、さしずめ古都の城壁のようでもあります。

青い空を背景にして、私は今までの旅歴でイランのイスファハーンを思い出しました。

しかし、イスファハーンのバザールが想起されたのは偶然ではなく、実際、ブハラのタキ建築はペルシャ建築の影響を強く受けています。

色とりどりの絨毯が並ぶドーム型バザールの下を通り抜けていく風は、まさにペルシャの香りだ。

イランなどペルシャ地方を旅したことがある人なら、この光景はまさにイランを想起させるもの。

絨毯だけではないです。

こちらの「タキ」は、「タキ・ザルガロン」。

「金銀細工職人のタキ」だそうです。

こんな鮮やかで複雑なデザインを、どんな工房で作っているのかと思う。

お守りだ・・・懐かしい

キャラバンの旅人たちも、日除けを求めて休んだのだろうか。

懐中時計もある。

「深夜特急」の沢木耕太郎さんが、イランのバザールで値切りに値切って手に入れた懐中時計を思い出しました。

店の奥には、職人たちの工房が。

そして、旅人のためのキャラバンサライ(商人の宿場)や風呂場もあるらしい。

考えてみれば、ここブハラからイランのマシュハドまで500キロ程度しか離れていない。

地理的にも、ペルシャの雰囲気を感じるのは、必然でした。

当時の商人や旅人は、馬やロバをお供に移動してたのだろうか。

ドームの下で物思いにふけっていると、そんな光景が目に浮かびます。

当時売られていたものと比較をしてみたい。

やっぱり、外は暑そう(^ ^)

街をひと巡りして、ラビハウズのほうに戻ってみると、

灯台下暗しで、ホテル近くにもタキがありました。

しかし、このタキは、改装中なのか閉鎖されたのか、定かではありません。

地図によると、「タキ・サラフォン」。

意味は「両替商のタキ」。かつては金貨や銀貨、宝石などが取引された金融の中心だったようです。

街のどこからでも目にとまるタキ。

タキは、観光地でもあり、この街の息づかいそのものでした。