シルクロードを彩る風物詩といえば、青い空、砂漠、モスク、アザーン、そしてバザールと勝手に思い込んでいる。
当然、シルクロードの十字路と謳われたサマルカンドにも、市民や旅人に愛されるバザールがある。
レギスタン広場とアフラシャブの丘を結ぶタシケント通り沿いに、ショブバザールは日々営まれている。
それこそ、キャラバンの時代から、シルクロードの交易を支えるハブのような世界だ。
食材豊かなショブバザール
冒頭の写真が、ショブバザールの正面玄関だが、私はシャーヒ・ズィンダ廟群などを歩いていたので、逆側から入りました。
サインによると、朝5時から営業しているそうです。
ということは、今朝レギスタン広場を歩いたとき、すでに営業してたんだ。
来ればよかった・・・
サマルカンドという街自体がシルクロードの重鎮であるので、バザールもおとなしめです。
私のような異邦人が歩いていても、客引きに声をかけられることもない。
まさに生活の豊かさを感じ取れる場所。
スイカにウリかな。
雨の降らない土地で、よくぞこんな水分多めの作物がとれるのかが不思議。
大きさは、そんなに広くない。
少し店先を冷やかすと、すぐに反対側に出てしまいました。
香辛料とドライフルーツの香り
別の入り口から入ると、こちらは観光客向けのコーナーらしく、いっせいに声がかかりました。
なるほど・・・そういうことか(^ ^)
観光客が買っていきそうな土産物が豊富に並んでいます。
イスラム帽にもいろんな種類があるらしい。
この美しいデザインの皿のコーナーでは、高校生くらいの少女が店番。
私に、英語の他流試合を持ちかけてきました。
彼女の興味をひいているのは、東アジアの民族らしい。
というのも、中国人、韓国人とともに、日本人もここサマルカンドではよく見かけるとのことだが「中国人と日本人は言葉も顔も似てるから同じ民族に見える」。
というのが、彼女の素朴な疑問。
そして、日本語と中国語は同じものと思っていた。
多民族国家ではそんな疑問が浮かぶのだなと思う。
いちおうdifferentとは答えたけどwhy?と聞かれてうまく答えられない。
今度は英語で答えを用意しておこう(^ ^)
こちらは、香ばしい香りの香辛料。
そして、ドライフルーツ。
この旅でタシケントへ向かうアシアナ機の中で出されたデザートに、くるみやドライフルーツがあって、それが思いの外、ブランデーに合っていた。
だから、機会があれば、ドライフルーツを買って帰りたいな、と思っていた矢先のバザールでの対面。
香辛料とともにずらりと並ぶ、色とりどりのドライフルーツ。
アプリコット、プルーン、ザクロ、いちじく、干しブドウ・・・
砂糖漬けでもなく、包装もなく、それなのに一粒ひと粒が、目を惹くほど艶やかだ。
サマルカンド、ブハラなど、シルクロードの栄える街は、いずれも乾燥したステップ気候・オアシス都市であり、夏は酷暑、冬は厳寒、しかし日照には恵まれ、水は限られている。
このような気候は、果物の自然乾燥に非常に適しており、腐敗を防ぐ保存食として重宝されます。
シルクロード各都市で、果樹栽培と乾燥技術が古代から発達してきた背景は、この気候にあります。
まさに、冷蔵庫のない時代に、太陽と風こそが最大の保存装置だった、ということでしょう。
そして、ラクダのキャラバンで長旅を移動する商人や巡礼者たちは、軽くて、栄養価が高く、腐らない携帯食を必要とします。
ドライフルーツは、糖分・食物繊維・ミネラルが豊富で、砂漠の旅には最適。
人類の叡智を感じないわけにはいかないですね。
また、果実の保存は富や文化の象徴。
干しぶどうや杏(あんず)は祭事や贈答品にも使われていました。
サマルカンドの青い陶器に、ドライアンズとピスタチオが山盛りに盛られた光景は、宮廷晩餐の定番でもあったようです。
そんなことを思い浮かべながら、ドライフルーツの棚の前を行ったり来たりしてると、どうしても欲しくなった^ ^
でも、まだ旅も半ば、バッグには入り切らないし、持ち続けることはできない。
なので、私は無情にも帰国時のタシケント空港の免税品店で、各種ドライフルーツを仕入れました。
アシアナ機のなかでそうしたように、ブランデーの肴に干し葡萄をつまむと、シルクロードの香りが広がりました。
こういう品こそ、空港などではなく、現地のバザールで買いたいんだけど、そういう直送サービスみたいなのは、難しいんだろうな^ ^