サラリーマンがシベリア鉄道を乗り通すことができるのか? モスクワまで船と鉄道1万キロの旅

私がシベリア鉄道の存在を知ったのは、もう20年以上も前、中学生のころ。

ユーラシア大陸の東の端ウラジオストクから、欧州のモスクワまで9,000km以上の道のりに渡ってレールが敷かれ、その上を7日間もかけて走り抜けるシベリア鉄道。

移りゆく大地を眺めながら旅をするのは、私の大好きな旅のスタイル

物心ついたころから旅が好きだった私は、いつかは乗りとおしてみたいな、とずっと意識してました。

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それから、時がたつこと20年余り。

会社勤めをしているといいこともあるもので、長年勤務したことに対するご褒美休暇を頂けることになりました。

学生時代から、よく一人旅をしていましたが、今までの旅歴はすべて国内。

海外の一人旅は、まだ経験がありません。

ひょんなことから、たまたま、インターネットでシベリア鉄道のことを調べてみると、なんと、今でも(2004年9月現在)7日間かけて、大陸を横断する列車が走っているなんて驚きでした。

飛行機での移動が当たり前の現代において、一体、どういう人が乗ってるんだろうね?

というのが、そのときの正直な感想です。

現役サラリーマンがシベリア鉄道全線を乗り通すことができるのか?

日並びのよかった2004年9月のシルバーウイーク。

会社からもらったご褒美休暇と連休を組み合わせると、12日間の自由時間を得られることになる。

私は、このときを逃しては、シベリア鉄道を乗り通すなんてことはできない、と直感し、さっそくスケジュールの作成に取り掛かりました。

旅行会社に依頼したスケジュール作成

ところで、いくら12日間の休暇を得られたからといって、現役サラリーマンが、シベリア鉄道を乗り通すなんて芸当ができるのだろうか?

そもそも、シベリア鉄道に乗っているだけで6泊7日なのである。

それに、シベリア鉄道が運転される曜日やら、前後の飛行機のスケジュールやらで、12日間でおさまるのかどうか。

それに、スケジュールの作成に取り掛かるといっても、まだまだ情報が希薄な2004年のこと。

ロシアを旅行するには、ビザも必要だと知って、ロシア旅行手配専門の旅行会社に、スケジュールの作成をEメールで相談してみました。

ちなみに、相談したのは、日本発のロシア専門旅行会社として知られるユーラスツアーズです。

 

数日して、次のような返事が来ました。

シベリア鉄道を乗りとおしてみたい、という日本人の方はけっこう多いですよ、というくだりとともに、次の点を検討いただけますか? と案内がありました。

①シベリア鉄道のルート

シベリア鉄道に乗るには、大きく3本のルートがあります。どれにいたしますか。

  1. ウラジオストク ⇔ モスクワ
  2. 北京 ~ (満州里経由) ⇔ モスクワ
  3. 北京 ~ (ウランバートル経由) ⇔ モスクワ

おすすめは、景色に変化のある3です。なお、どのルートでも、バイカル湖畔は日中に通過します。

②上りと下り

ウラジオストク(あるいは北京)発にしますか? モスクワ発にしますか?

日本人の方は、モスクワに向かう上りをよくご利用されます。

③ウラジオストクまでのルート

北京へは飛行機で行っていただきますが、ウラジオストクへは船をご利用することもできます。ただし、船をご利用するほうが、料金は高くなります。

 

Eメールを送って、即日に返事が来たことにまず驚きましたが、こんな具体的なアドバイスがすぐ来るってことは、日本人でこういうこと考える人いるんだね。ちょっと意外でした。

ところで、ルートは、旅行会社は北京発をすすめているけど、やっぱりシベリア鉄道は全線乗り通すものと考えているので、ウラジオストクから。

そして、日本から旅立つんだから、ウラジオストクからモスクワに向かう上り。

びっくりしたのが、いまだに船のルートがあるってこと。

たしかに、紀行作家の宮脇俊三氏がシベリア鉄道に乗ったときは、横浜からナホトカまで船で移動していたけど、それは1980年代の話。

それから、20数年もたつのに、貨物ならわかるけど旅客船が残っていることが信じられませんでしたが、船でユーラシア大陸に渡れば、それこそ、一歩も空に舞い上がらずに、モスクワに行くことができる。

そう考えると、ここで船で行かずして、いつ船で行くんだ!という気がしてきて、船で行くプランの作成をオーダーしました。

 

冒頭でも述べましたが、大地を眺めながら移動する旅が大好きな私です。

飛行機も悪くはないが、目的地までの道中を見ずに、すっ飛ばしてたどり着いてしまうと、どうしても、旅先の風景に距離感を重ねることができない。

日本から、船と鉄道だけでモスクワまで行くというのは、1万キロ以上の距離を地面と水面の上だけで旅するということ。

現役サラリーマンに、そんなことが本当にできるのか、期待をこめて、旅行会社からの返事を待っていました。

旅行会社から提案されたプラン

待つこと3日ほどで、旅行会社からスケジュール案が送られてきました。

日付

午前

午後 宿泊地

9/17(金)

 

伏木(富山県)18:00発 

船中泊

9/18(土)

船中

船中 船中泊

9/19(日)

ウラジオストク9:00着

  ウラジオストク

9/20(月)

 

ウラジオストク20:17発

(シベリア鉄道)

車中泊

9/21(火)

車中 車中 車中泊

9/22(水)

車中 車中 車中泊

9/23(木)

車中 車中 車中泊

9/24(金)

車中 車中 車中泊

9/25(土)

車中 車中 車中泊

9/26(日)

車中 モスクワ17:42着 モスクワ

9/27(月)

 

モスクワ19:55発

(飛行機)

機内泊

9/28(火)

成田10:00着

   

こうしてみると、車中泊がズラリと並ぶ日程表は、なかなか壮観です(笑)

船は、横浜ではなく、富山県の伏木から出航するんですね。それも新鮮。

そして、日程は、なんと12日間でおさまっている。

現役サラリーマンが、会社の休暇を利用して、船とシベリア鉄道でモスクワまで行くのが可能になった瞬間でした(おおげさです・・)

 

私は、旅行会社に、そのプランでチケット(バウチャー)を作ってほしいと依頼しました。

せっかくロシアに行くのに、道中のどこにも観光しないなんて味気ない、と思う方もいるでしょう。

しかし、本来ヨーロッパというのは遠いもの。飛行機で行っては、時間と距離の関係がズレてしまう。

移動すること、それ自体が目的となる旅。

そんな旅があってもいい。

私は、プランニングの段階から、生まれて初めて一人旅をした時のようなときめきが胸を支配しました。

もう、仕事なんか手につきません(笑)。

あらためて、地図を見れば、やはりすごい距離です(*^^)v

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ロシアビザの取得

今回、初めての海外一人旅なので、チケットなどの手配は旅行会社にお願いしましたが、そのままビザの取得もお願いしました。

そして、手に入れたビザがこれです。

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はじめてみるロシア文字。渡航する前から、ときめきます!

ところで、ロシアのビザに関してはちょっとした注意がいるようです。

通常、この国を訪れた外国人は、72時間以内にこのビザで滞在登録を行う必要がある。

そして、それは滞在するホテルなどに代行を依頼するため、その間は旅行者はパスポート不携帯の状態になる。(現在は、どういうルールになっているのかわかりません)

これを狙って、警官が外国人を職質し、パスポート不携帯をタテに賄賂を要求する事例が多発しているらしいです。

外務省のHPにも載っていたので事実なんだろうけど、どうなることやら。

とにかく、ロシアという国は、パスポートとビザは、ある意味財布よりも大事のようです。

テロの発生する危険な国 ロシア

日程も決まり、旅費も払いこんだ。ビザも取得した。

あとは出発日を待つのみ、といったところで好事魔多し。

出発まであと2週間といったところでテロが発生しました。それも立て続けに・・・

  • 8/26 旅客機2機の同時テロ
  • 8/31 モスクワ地下鉄駅で自爆テロ
  • 9/4  学校人質事件(300人以上死亡)

わずか1週間の間に大規模テロが3つも起きるなんて、信じられませんでした。(2004年のこと)

「危険な国」と印象付けられた世界中の観光客は、一斉にロシア旅行をキャンセルしたようです。

 

私も大いに悩みましたが、テロは確率の問題だと自分に言い聞かせて、出発しました。

初めての海外一人旅で、行く先は治安の悪いロシア。そして、現在テロ頻発・・・

さすがに緊張しながらの旅立ち・・・

今まで、国内には幾度となく旅に出た私ですが、期待と緊張と不安がまぜこぜになった妙な心境

こんな旅立ちの気分は初めてでした。