富山県・伏木港から出国 船でウラジオストクへ【シベリア鉄道旅行記 #1】

さて、シベリア鉄道でモスクワへ向かう旅。出発の日がやって来ました。

旅に出るときの高揚感は、毎度のことながらとても気持ちのいいもの。

ところが、今回は、少し違う。

生まれて初めての海外一人旅。行き先は、テロが頻発しているロシア。

ロシア語なんて、まったくわからないし、ビザやバウチャーの手続きなどもうろ覚え。

嬉しさと緊張感と、漠然とした不安がない混ざった、とても不思議な気分でした。

自宅で、朝いつものように起き、新聞を広げると、2週間前のテロは、容疑者が空港職員に賄賂を渡していたことが報じられています。

ロシアの役人の腐敗ぶりの証拠をつきつけられたような気分ですが、いまさら、考えても仕方ありません。

それよりも、いろんなモノを詰め込みすぎたスーツケースのほうが心配。

はじめての海外一人旅ということで、あれもこれも、と詰め込んでいるうちに、重量が30キロを超えてしまいました。

自宅から新幹線&氷見線で富山県・伏木港へ

自宅を、奇しくも、いつも通勤で使っている快速で出発し、東京駅から上越新幹線で越後湯沢へ。

そして、特急「はくたか」に乗り換えて、富山県の高岡へ。

そして、氷見線というローカル線で伏木へ。

スーツケースをゴロゴロ押しながら乗る乗客は私だけですが、ほかに乗客がいません。

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伏木には、昼過ぎに到着しました。

出航は18時ですが、15時までにはチェックインするようにと、旅行会社の案内に書いてあるからです。

伏木という町は、想像していたよりも、すごい田舎でした。

まがりなりにも、国際航路が発着する町なんですが、駅前広場には、コンビニひとつない。

片隅にあった大雑把な地図によれば、港の方角は、駅を出て右手方向らしいので、人通りのまったくない田舎道を、スーツケースをゴロゴロと転がします。

 

そもそも、なんで伏木からロシア航路が出ているのかなあ、なんて考えながら、残暑の厳しい田舎道を伏木駅から歩くこと約30分。

港へと続く道へ出ると、自転車に乗ったロシア人がちらほら。

お腹がすいて、入った食堂も、メニューにロシア語が。

異国への玄関口にいるのだと、だんだん、気分が高まってきたところ、船が見えました。

これから2泊3日、ウラジオストクまでお世話になる「ルーシ」号です。

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あれで、「ルーシ」と読むんでしょうね。

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ぱっと見ただけでも、けっこう大きな船。

データ上も12,798トン、全長139.55m。私が過去に乗った「おがさわら丸」の11,035トンを上回っています。

伏木港にたむろするロシア人たち

桟橋にはロシア人たちがいっぱいいて、生活物資などを、せっせと船に運び込んでいます。

私は、まだ日本にいるんですよね。なのに、一気に異国の気分です。

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それにしても、このロシア人の集団は何なんでしょう。船が発着する度に桟橋をにぎわしてるのでしょうか?

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周囲に日本人の姿は、まったくありません。

身体のでっかい異国人たちが、せっせと生活物資などを運び込んでいます。

なにか、非現実的な光景。

私はあっけにとられて、しばらくその様子を眺めていました。

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ちなみに、埠頭には、イミグレだとか税関などが見当たりません。

わけがわからないまま、私も、重いスーツケースを抱えて、船に乗り込みます。

乗り込むと言っても、高低差20mはあろうタラップを、30キロを超える荷物を持って登るのは容易ではありません。

しかも、うしろから、太い腕で、タイヤを4本ぐらい抱えたロシア人がせっついてくるので、必死です(笑)

なんとかたどり着いた船内も、ロシア人の荷物だらけ。

いや、荷物というより、貨物といったほうが的確なような気がする。

なにしろ、タイヤやバンパーなどの車のパーツ類。

テレビや洗濯機などの家電製品。

段ボール箱に入った、食材や日用雑貨品。

これらが、無造作に積み上げられて、足の踏み場がないんです。

 

貨物船か移民船に乗り込んでしまったのか、と錯覚を起こしながらも、どこでチェックインすればいいのだろうと周囲を見回しますが、私よりも一回りは大きいロシア人がせわしなく蠢いているし、そもそも積み上げられた荷物で視界がまったく効きません。

助けを求めようにも、伏木港に来てからというもの、日本人の姿をまったく見ていません。

 

ちょうどそこへ、乗務員らしい制服を着た女性が通りかかったので、ポケットから乗船チケットを見せると、ロシア女性はチケットを一瞥し、「パスポート、バウチャー!」と叫ぶように言う。

乗船時にバウチャーまで必要とは思わなかった。

バウチャーは、ウラジオストクのホテルで提示するものであるはずだったので、スーツケースの奥底にしまってあります。

まさか、衆人環視の中でスーツケースを開ける羽目になるとは思わなかったし、大汗をかきながらロシア人の大男が動き回ってる直下で必死にバウチャーをさがし、パスポートとともに、女性乗務員に提示。

女性乗務員はバウチャーをペラペラめくっていたが、そのうちに、なにやら質問。

ロシア語は全然わからないけど、私の旅行の予定を尋ねているようだったので、その通りに答えていたら、なんと、パスポートとバウチャーを持っていかれてしまった。

ロシア旅行において、パスポートはある意味財布よりも重要である。

大丈夫なのか・・・

テロが頻発しているので、神経質になってるのだろうか。私の風体は、どう見ても、ただの一旅行者に過ぎないんだけど。

乗務員は10分ほどで戻ってきたけど、また質問攻め。

ロシア語はわからないと、英語でバカみたいに繰り返していたら、まあいいやって感じで、パスポートとバウチャーを返してくれました。

そして、別の女性乗務員が近づいてきて、部屋を案内してくれるみたいです。

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ルーシ号の2人用個室

一番安い4人用の部屋をリザーブしておいたはずなのに、なんと個室!ラッキーです。

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女性乗務員は、私にキーを渡して、簡単に室内設備を説明して出て行きました。

それにしても、なんと安直なルームキーでしょう(^-^)

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外界から隔離されて、ようやく一息つきます。

船に乗り込むやいなや、パスポートを持っていかれたり、バウチャーを見せろと言われたり、わけのわからないことの連続だったが、とりあえず落ち着けた。

一応、スーツケースを、がっちりとワイヤーで固定。

初めての海外一人旅で、緊張のほどがうかがえます(笑)

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トイレとシャワーも安直なつくり。でも、こういう素朴な感じって好きです。

伏木港に着いてからというもの、汗のかきどおしだったので、素っ裸になって、汗だくの身体を清めました。

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すると、部屋の電話が鳴って、「出国審査をするから来い。」みたいなことを言われます。

船のフロントのある階に上がっていくと、すでにロシア人が並んでましたが、私も並びます。

係官はもちろん日本人で、なんとなくほっとしましたが、係官は無表情にポンとスタンプを押すだけ。

記念になった、FUSIKI-TOYAMAの出国スタンプです。

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これで、手続きはすべて終わり、18時に出航。これから12日間日本から離れます。

少なくとも、あと2日間の船旅の間は、なにも考えることはない。

ようやく気持ちに余裕がうまれたのを感じる。

船旅も久しぶり。

遠ざかっていく富山湾の眺めに感慨。

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今夜分を含めて計5食がチケット代に含まれています。

さっそく、今夜のメニュー。

ちなみに、出航と同時に時計を2時間進めさせられ、すぐに夕食時間になりました。

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おいしい、けど、これだけ?って感じです(笑)。

部屋に戻って、本日の出来事を回想。

朝は千葉の自宅にいたのに、もう異国に入り込んでいる妙な気分。

旅立ちを実感する瞬間です。

それにしても、外国旅行初の一人旅で、今日は、ずっと緊張してたのか、疲れました。

レストランで1ドルのビールを買ってきて、爆睡です。

はじめての海外一人旅。まだ、不安はとけていません(笑)

 

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