さて、東京から2時間半かけてやってきた「ほくほく線」まつだい駅。
駅には、今夜お世話になる「野本旅館」の方が迎えに来てくれていました。
松之山温泉への道
降りしきる雪の中、初老の運転手さんは巧みにハンドルを操りながら、松之山温泉に向かいます。
クルマが走っている道路は「ほくほく街道」。かつては「松之山街道」と呼ばれた春日山城へ通じる道です。
雪を見に来た旅。想像通りの雪深さに大満足です。
トンネルを抜けると、さらに雪深くなりました。
私が写真撮っていると、運転手さんが振り返って話しかけてくるので、ちょっとコワイ(^^)
例年よりも雪は多め。5月の連休まではとけずに残るそうです。
除雪車にも出会います。
朝3時ごろから出動し、朝のバス便などの足を守っているとのこと。
屋根の雪下ろしも大変そうです。雪国に来た実感。
クルマは20分ほどで松之山温泉に到着です。
家族で営まれている「野本旅館」
ものすごい降り方になってきましたが、まずは部屋にチェックインしましょう。
この温泉街にいくつか旅館はありますが、料理がよさそうだったので選びました。
さて、どんな旅館でしょうか。
「野本旅館」のHPはこちらです。
接種証明を見せて、チェックインです。旅のルールですね。
部屋に入ったとたんに身体を包む畳の香り。
畳の香りを楽しめる宿泊施設は、世界広しといえども日本だけでしょう。
もう布団まで敷いてくれていますが、ちょっと館内の見学と温泉街の散歩といきますか。
窓を開けると、ちょうど温泉街を見下ろす位置でした。
私の部屋は「藤の間」です。
コートをしっかり着込んで外に出ると、さっきよりも雪が激しくなっています。
大粒の雨がそのまま雪になったかのような降りかた。
道路上は融雪剤が流れていますが、あっというまに、肩や頭の上に雪が積もりはじめます。
反対側に歩きかけると、なんか遭難しそうなのでやめました。
ここは、おとなしく、館内にとどまりましょう。
温泉もあって、スキーもできる松之山温泉。
舞い落ちる雪を眺めながら、ロビーでくつろぎます。
いまのところ、ほかに宿泊客はいないようです。
雪国の山奥に来て、なにもせず、ただのんびりと雪を眺める。幸せを感じる瞬間。
こんなものも置いてあるし(^^)
ちなみに、荒木飛呂彦先生とは関係ありませんが、「頭文字D」のしげの秀一先生は、なんとこの松之山温泉の出身です。
日本三大薬湯の一つ「松之山温泉」
では、夕食の前に、温泉に浸かって温まりましょう。
日本三大薬湯の一つと数えられる「松之山温泉」。
あとの二つは、群馬県の「草津温泉」と、兵庫県の「有馬温泉」とのこと。
扉を開けると、硫黄のにおいが押し寄せるこの瞬間がたまりません。
40度という若干ぬるめの温泉にゆっくり身体をしたがえます。
源泉は90度近いとのことですが、40~41度くらいで、ながく浸かるほうが身体の芯まで温まるという解説がなされてました。
口に含んでみると、とてもしょっぱい。
それもそのはずで、これは塩化物温泉。
1千万年以上も前の海水が、温泉となって湧き出ている湯とのこと。
立ち上る香りが素晴らしく、身体中が癒されていきます。
温度がちょうどいいので、いつまでも浸かってられる、そんな気分!(^^)!
人間の身体も成分は海に近いというけど、だから塩分の香りに包まれてると幸せを感じるのだろうか。
たった一人で「日本三大薬湯」を独占した、贅沢な入浴でした。
火照った身体で、ぶらぶら館内を散歩。
新潟美人でしょうか。
湯上りの火照った身体を覚ましに、外へ出ると、土砂降りのような雪。
これだけの降りかたで、路上に積もっていかないのが不思議です。
先ほどの運転手さんの話では、12度くらいの融雪剤を常時道路に流しているらしい。
雪女でも出てきそうだし、ほうほうのていで部屋に逃げ込みます。
さて、お腹もすいてきました。
とろけるような「にいがた和牛」ステーキコース
では、待望の夕食です。
私は、数あるコースの中から「にいがた和牛ステーキ」のコースを選びました。
ほかには、「新潟ジビエ」とか「すっぽん料理」などがあるようです。
設えられた席から察するに、今夜の宿泊は、私のほかに2組のようです。
一人旅は私だけ。
食前酒に前菜が美味しい。
せっかくなので、松乃井酒造の純米酒をオーダー。
とても軽くて、口当たりの良いお酒。
お品書きです。さて「にいがた和牛」はいかに・・
すでに火であぶりはじめていたのが「にいがた和牛」でした。
どんな食感になるのか楽しみです。
筑前煮やぜんまいなどの前菜が新鮮です。
運ばれてきたお刺身。サーモンと甘えびですね。
そして鰤(ぶり)の照り焼き。
茶碗蒸しです。
ここでご飯が運ばれてきました。
「魚沼産棚田コシヒカリ」だそうです。光ってます(^^)
次から次へと運ばれてきます。今度はてんぷら。
さて「にいがた和牛」が焼けたようです。
2種類のたれにつけて味わうみたいです。
まずはポン酢のようなたれで一口。
すごい! 今まで味わったことのないような食感!
いや、大げさでなく、歯がなくても食べられるような柔らかさ。
口に入れると、溶けていく感じです。
こんなお肉って、ほんと、今まで食べたことない。和牛って、こんな食感なんだ・・
あとで調べてみると、「にいがた和牛」は、新潟県内で育てられた黒毛和種で、品質規格等級がA3、B3以上のもののみを呼ぶそうで、全国の食用肉の大会で、何回か全国一を受賞しているほどの逸品だそうです。
「にいがた和牛」すごい、すごい。
余韻に浸りながら「なめこ汁」をいただきます。
デザートはイチゴでした。
「にいがた和牛」コースはあたりでしたね。
ちなみに、1泊2食で税別16,800円でした。じゃらんの割引がきいてるので、実際に払った勘定は13,000円くらい。格安と言っていいでしょう。
もう一度温泉に入って、湯上りに越後の地ビール。
部屋からの眺め。
茶菓をいただきながらビールを飲み、温泉旅館でyoutubeでも見ながらくつろぐ。
最高の幸せです。
温かいみそが美味しい「朝ごはん」
ぐっすりと眠って、快適な目覚め。外へ出てみると、雪はやんでました。
温泉に浸かってから大広間に足を運ぶと、朝の膳がならんでます。
私は、どちらかというと洋食派ですが、日本旅館でいただく和食は旅のアクセントですね。
何かを焼いているのでふたを取ってみると「みそ」でした。
ご飯にかけて食べるらしいので、まずは光ってるコシヒカリの一膳目。
美味しいので、いくらでも入るって感じ。
そして、お替りしてみそご飯を楽しみます。
純和風な料理って、ほんとに久しぶりだったな。
奇習「婿投げ」が今でも残る「松之山温泉」
チェックアウトまで時間があるので、旅館の隣のお土産屋さんをのぞいてみました。
目を引いたのが「婿投げまんじゅう」。
今から300年ほど前から伝わる松之山温泉の小正月行事だそうです。
なんと、5mの高さから雪の上に投げ落とす荒行らしい。
「よそものに娘をとられることへの腹いせ」とのことですが、5mといえば住宅の2階相当。
帰り道、「まつだい」駅まで送ってくれる昨日の運転手にたずねると、昨今はこの奇習がめずらしく、全国から体験に来るお婿さんもいるとか。
この運転手も30年前に投げられた、と楽しそうに話してくれました。
ちなみに、まんじゅうは柔らかいこしあんです。
東京から、たった3時間程度でやってこれる「松之山温泉」で、久しぶりに贅沢な休日を満喫できました。
1泊2日が名残り惜しい、何日でも泊まっていたかった「野本旅館」に感謝です。