【晩秋の京都一人旅#22】「長楽寺」平清盛の娘「建礼門院」出家の寺

朝から、洛中というか、祇園というか、京都の中心からやや東よりの名刹「正伝永源院」「建仁寺」「両足院」「圓徳院」とまわり、「高台寺」までたどりつきました。

一つ一つに時間をかけていることもあって、すでに太陽が傾きかけています。

当初の計画では、このまま東山エリアを北上し、「知恩院」「南禅寺」「永観堂」と回るつもりでいたのですが、時間的にとても無理と察します。

そこで、「高台寺」からそう遠くない位置にある「長楽寺」に寄ってみようと思いました。

「長楽寺」は平家物語ゆかりの寺。

「高台寺」からは、「ねねの道」を北に歩いてすぐです。

平家物語ゆかりの古刹「長楽寺」とは

京都東山・長楽寺は、平家物語ゆかりの寺院。

壇ノ浦の戦いで平家が敗れ、平清盛の娘・徳子(建礼門院)は入水しますが、奇跡的に助けられ、京都に送られたのち出家した寺院として、平家物語に描かれています。

長楽寺は805年、桓武天皇の勅命によって創建されます。

当初は天台宗の別院でしたが、その後室町時代の初期に、国阿上人によって時宗に改められました。

祇園の賑わいからほど近く、古来より「洛中隋一絶景の霊地」とも謳われています。

「高台寺」から「長楽寺」へ

高台寺を出た私は、「ねねの道」を北へ。

5分ほどで「長楽寺」の参道へ到着です。

たしかに、祇園の繁華街からすぐです。

その割には、実にひっそりとしています。物音一つしません。

足利義政に仕えた相阿弥作の庭園

高台寺の賑わいがウソのそうな静けさですが、チケットを買って拝観です。

まずは、「庭園」を見学しましょう。

足利義政に仕えた相阿弥作の庭園と書いてあります。

誰もいない座敷を歩いて奥へ。

庭園に面した一番奥の部屋。

建礼門院の木像が目に入ります。

壇ノ浦の戦いのあと、ここへ出家したそうですが、晩年を過ごしたのは、大原の寂光院です。

どちらも、山あいに鎮座する古刹ですね。

誰もいない書院の座敷を独り占め。

紅葉は、ほぼ終わってしまってるようですが、なんたる贅沢でしょうか。

考え事してると、30分くらい、あっというまにたってしまいます。

相阿弥は、足利義政に仕え、銀閣寺の庭園を造った人物として知られています。

しかも、ここ長楽寺の庭園は、銀閣寺の庭園より前に造られたらしいです。

そういう目で見ると、銀閣寺と同じ、東山の香りがしてくるから不思議です。

一週間早ければ、素晴らしい紅葉が映えていたのでしょうか。

本日は11月30日です。

抹茶観賞用の間。

 

「平安の滝」と「鐘楼」

さて、書院を出て、境内の散歩。石段をあがります。

紅葉とのコントラストが美しい「鐘楼」が現れました。

建礼門院塔も鎮座します。

建礼門院塔も横には「平安の滝」。

建礼門院が修行をされた場所とのことですが、滝の水は寺院の奥から流れ集まり、お清めに飲むこともできる「八功徳水」と呼ばれる名水です。

 

「庭園」の紅葉は終わってしまってましたが、本堂や鐘楼の周囲は、わずかながら赤みが残されてました。

本堂です。

1666年に建立された、京都市内では数少ない本格的な小規模禅宗様仏殿だそうです。

徳川慶喜ゆかりの「尊攘苑」&京都市街の眺望

さて、長楽寺の本堂や鐘楼などの境内を一周し、その奥の鬱蒼とした石段を上がると、「尊攘苑」になります。

尊攘苑は、尊王攘夷運動が広まった幕末、その動乱によって亡くなった水戸藩の武士たちの墓が祀られています。

その前に、「外史橋」と呼ばれる橋を渡り、京都市街を一望できる眺望所へ参りましょう。

このあたりまで来ると、ほんとになにも音がしません。

橋を渡って、どこがその「眺望所」なのかな、と思って歩いていると、突然左側の視界が開きました。

祇園のあたりもビルだらけなんだなあ(笑)というのが第一印象ですが、考えてみれば「ねねの道」からずっと登ってきたんですね。

京都は、本当に四方を山に囲まれた盆地だということを実感する眺めです。

さて、もう一段登って、水戸藩藩主のお墓をお参りしてみましょう。

もう、ここまで来ると、道なき道です。

これが、本当に拝観ルートなんですか?

このあたりから「尊攘苑」。徳川慶喜に仕えた水戸藩士・原市之進、三輪友右衛門や水戸藩家老・大場一真斎などの墓所です。

こうしてみると、「長楽寺」は、「平家物語ゆかりの地」だけでなく、幕末風雲の顔も持っているわけですね。

我を通して憤死した者もいれば、計略によって、一生を終えた者も多いことでしょう。

現代のような、リアル情報社会もまた厄介ですが、攘夷がなんたるか、情報のない中での動乱は、混乱を極めたことと察します。

「尊攘苑」の空気を吸って、ふたたび道なき道を、下界に下ります。

平家物語ゆかりの長楽寺。

八坂神社からでも、徒歩5分もあれば訪れることのできる静寂な古刹です。

時の止まったような「長楽寺」でした。

今回の「晩秋の京都5日間一人旅」の全行程はこちらです。