国際観光都市京都にはいったいいくつの旅館やホテルがあるのだろう。
コロナがはじまる2020年3月末では、京都市の施設の数が3,993、客室の総数は53,471室。
過去最高を記録したそうだ。
ちなみに、東京23区では1,940施設、184,907部屋。
さらに沖縄県全体では、3,342施設、57,759部屋。
以上を見ると、京都市の宿泊事情はけっして満たされているとは言えないだろう。
インバウンド需要がGDPの支えにもなっている我が国は、観光誘致対策はわきにはおけない。
ところで、今回の京都週末旅の目的は「旅館宿泊」にあった。
もっとも京都らしい小路のひとつとされる「石塀小路」。
その細い路地にひっそりとたたずむ「旅館 寿栄屋(すえや)」。
昨年、石塀小路を歩いてこの宿を見つけたとき、いつか泊まりたいと思っていた。
部屋数が3つしかなく、週末や紅葉シーズンなどの宿泊は難しいと思い、
「12月の週末であいている日はありますか?」と電話すると、
「いつでもあいておりますよ~。紅葉なら最初の週末なんかいかがですか~。」
と、女将さんの優しい声。
そして12月3日土曜日の一泊を予約すると、
「お待ちしてますね~、おおきに~」
旅立ち前から、宿泊が楽しくなる会話だった(^^)
撮影が禁止されている石塀小路
伏見の一人歩きを終えた私は、近鉄で京都駅に戻り、105番バスで東山安井バス停で下車。
石塀小路の入り口に立ちます。
ところで、石塀小路というのは、「ねねの道」と下河原通を結ぶ、クルマも通れない細い路地。
予約した旅館「寿栄屋」は、その路地のほぼ中間にあります。
石塀小路は、近年撮影が禁止されたことでも知られています。
京都の祇園、八坂神社あたりから清水寺へかけての、京都きっての観光スポットでもあるので、季節を通じて人通りが多い。
時が止まったかのようなこの小路は、眺めているだけでもうっとりします。
そこへきて、礼節をわきまえない乱暴な観光客がいたんでしょうね。
女将さんに、経緯なんか聞けたらな、と思います。
「寿栄屋」の扉を開くと、こんな景色が広がっていました。
ここから先の写真は、もちろん許可をいただいてから撮っています。
出迎えてくれた女将さんは、電話の声の通り、とても優しい方でした(^^)
静かにくつろげる「圓徳院」の庭にそった「梅の間」
「寿栄屋」には、それぞれおもむきのある和室が3部屋しかありません。
12月初旬とはいえ、紅葉シーズンによく予約がとれたな、と思いながら女将さんに案内されて2階の「梅の間」へ。
廊下も部屋も、畳があまりにきれいなので、キャリーは持ち上げて運びました。
和室の旅館は、日本が世界に誇れる文化だと思う。
部屋の中央に梁があるのもアクセント。
女将さんと、いろいろな話をします。
今日は、伏見を歩いてきたこと・・
2020年から、毎年京都を訪れていること・・
となりの圓徳院を訪れた際、石塀小路をあるいてこちらの旅館をみつけた話・・
まだ、雪のふる京都をみたことがないこと・・
女将さん曰く、
定宿にしていただいているお客さんが多い・・
今日は、私を含めて3組。女性のお二人さんは、毎年泊まってくれている・・
コロナになって、二年坂や清水坂のお店の中には閉店された方も・・
ご夕食は・・ソウドウさんですか。お庭がきれいですよ・・
高台寺のライトアップは、先週がピークでしたかねぇ・・
圓徳院で共通チケットをご購入されたほうがよろしいかと・・
圓徳院の話が出ると、女将さんは窓際へどうぞと案内してくれる。
圓徳院の中庭に向かう拝観客の楽し気な話声が聞こえてきました。
いったん下がられた女将さんが運んできてくれた茶菓。
茶菓に梅干しとは珍しい。「寿栄屋」で長年熟成されている特製だそうです。
たしかに、酸っぱさにほんのりと甘さを感じる不思議な食感だった。
圓徳院を訪れて高台寺のチケットを手配に部屋を出ます。
部屋にカギなんてないけど、ふすまにカギは似合わない。
温かみを感じる数々の調度品
こんな素敵な玄関口は、久しぶりに見たような気がする。
アンティークのような天然木の引き出しも見事。
こんな旅館に一週間ぐらい泊まって、京都に関する本につかるのもいいと思う。
祇園祭の絵ですね。
圓徳院に出かけて帰ってくると、もう夕闇が迫る時間。
部屋に戻ると、布団を敷いてくれてありました。
女将さんがみえたので、石塀小路のことを聞いてみました。
すると、
写真撮ってかまわないんですよ・・
石塀会というのがあって、数年前にやむなく撮影をやめてほしい旨をはりだした・・
中国人観光客が、大掛かりな撮影会を開いたり、勝手に民家の扉を開いて庭に入ったり・・
ひどいときは、注意しても居直って口論に発展することも・・
やっぱり、そうでしたか(^^)
日本人が張本人じゃなかったことにホッとした。
私のカメラを見て、「素敵な通りですから、どんどん撮ってくださいね。」
「撮ってくださいね」と言われても、建前上は撮影禁止。
女将さんに立ち会ってもらって「寿栄屋」の前で撮影。
ほんとに住みたくなるような小路である。
散策の疲れが湯にとけだす檜風呂
高台寺のライトアップの見学と夕食をすませ、現在22時過ぎ。
料理屋さんが立ち並ぶねねの道界隈では、朝食のみのいわゆる「片泊まり」が一般的のようだ。
門限が22時であったのに、イタリアンのフルコースに予想以上に時間がかかり、門限を過ぎてしまったことを謝罪。
女将さんは笑って手を振ってくれます。
12月の京都の夜は寒い。気温は5度。
檜風呂である。身体をしずめると、素晴らしい感触。
早朝から、伏見の街を歩き、圓徳院、高台寺と散策した身体の疲れがゆっくりととけだすようです。
しかし、ほんとに静かだ。
観光地のど真ん中にいることを微塵にも感じない。物音ひとつしない。
先月、一夜を過ごした大阪とは大違いだ。
こうした、夜の静けさも京都の伝統の一つなのだろうか。
食膳を彩る京の「おばんざい」
翌朝は、夜明け前の清水寺を散歩。そして7時過ぎに宿に戻ります。
ささっていた新聞を帳場にもっていくと「どうぞ~、先にお読みになって~」
そして、旅館の楽しみ、朝食です。
美味しそうな小鉢が並びます。
女将さんみずからこしらえてくれる「おばんざい」。
「おばんざい」とは、京都の日常の家庭料理。
味噌をからめたナス。
京都の漬物は逸品だ。
女将さん曰く、「豆腐は味ついてますから、しょうゆはお好みで~」
そのまま食べても、とても美味しい絹ごし。
わさびのきいた湯葉も見事でした。
もちろん、ご飯はおかわり。
世界中旅しても、炊き立ての日本のお米より美味しいものは、そうはないと思う。
あっという間に完食。和食が無形文化遺産に登録された理由がわかります。
部屋に戻り、お茶をいただきながら、本日の予定を確かめる至福の時。
お代は、一泊朝食付きで税込み8,200円。この立地で、感謝するほどの安さだと思います。
知恩院や青蓮院を回った後、宿に戻り、預けておいた荷物をいただきます。
僭越ながら、私も京都週末旅の定宿にしたい「寿栄屋」でした。
「またおいでやす~」と言いながら、女将さんも出てきて、
実は、この石塀小路界隈は高齢化が進んで、物件を手放す人が増えてる・・
こないだも、台湾の人に、あそこを〇億円で買われてしまった・・
と、指をさしながら話してくれました。
不動産は誰が買ってもいいんだろうけど、歴史ある街の物件は、日本人に買ってもらいたいよね。
女将さんの目はそううったえていた。
私も同感だけど、さすがに〇億円は出せない・・無念である(^^)