ピンクがオレンジに包まれるラジャスターンの州都ジャイプールの夕暮れ

おじいさんのタクシーで2時間ばかりのドライブ。

私はシティパレスロードのゲート前で降車し、しばらく旧市街を囲む門を行き来する流れを眺めてました。

オレンジの夕日がピンクを包むジャイプールの夕暮れ

見知らぬ町における、見知らぬ人々の営み。

それが、夕暮れになると急に輪郭を帯びてくる。

これがラジャスターン州の州都、ジャイプールの夕暮れ。

ピンクシティをオレンジ色が包んでゆく。

この色彩の組み合わせは、私の旅歴で記憶にない。

作為的な雰囲気も感じるこの組み合わせは、ラジャスターンのアートと言ったら大袈裟だろうか。

目の前の光景は、実は耳をつんざくような騒音とともにある。

しかし、ピンクとオレンジのコントラクトは、そのノイズを吸収し、まるでサイレント映画が演じられているようだ。

そう思えるのは、目の前の光景がノンフィクションだからでもある。

昼下がりに屋上まで登ったハワーマハル。

そのふもとには、所狭しとスーベニアショップが並び、ここには外国人観光客もひしめいている。

観光客が買うのかどうかは知らないが、ブティックもある。

向かいに並ぶ建物は、ホテルなのか、それともレストランなのか。

最上階のテラスには観光客が陣取り、夕暮れの風に吹かれながら、この街を見下ろしていた。

ピンクシティは、インド人の日常の街であると同時に、世界遺産として切り取られた場所だった。

ノンフィクションとフィクションが交じり合うからこそ、眺めていて楽しい街なのかもしれない。

ジョハリ・バザールの雑踏

日中よりあきらかに増幅しているトラフィック。

前を行く若者の背中を頼りに「えい!」と気合を入れて、ロータリーの中央へ。

こんなところで立ち止まるインド人はいない。

だから、すごく浮いて見える。

観光客がまったく珍しくもないジャイプールでも、インド人が「奴はなんなんだ?」という奇異の目を私に向ける。

でも「浮く」ことを気にしていたら異国の旅などできない。

もちろん他者に迷惑をかけないという前提は必要である。

だが、眺めていてこんな楽しい無秩序なライブもそうはないだろう。

私が見つめているのは、ジャイプールの繁華街とされるジョハリ・バザール。

旧市街から新市街へと延びる通りには、日用品から装飾品、土産物まで、ありとあらゆる商品が店先にあふれ出していた。

店の中に収まりきらない品々が、舗道へとこぼれ出し、通りそのものが市場の一部になっているようだ。

色とりどりの布地、鈍く光る銀細工、積み上げられた香辛料。

値段を交渉する声と、それに応じる店主の仕草。

そのすぐ脇を、クラクションを鳴らしながらすり抜けていくバイクやトゥクトゥク。

舗道を冷やかしながら歩くのも楽しいが、少し距離をとって、商人と客のやり取りを眺めているだけでも飽きることがない。

歩みを宿の方に向けながら、ふと不思議な感覚におそわれる。

日本を出たのは、実は昨夜のこと。

成田へ向かう直前まで仕事をしていた自分が、いまこうして、異国の雑踏の中を歩いている。

デリーからの列車、ハワーマハルの風、ジャンタル・マンタルの静寂。

そして、あの初老のドライバーとのやり取りも含めて、すべてが“今日”の出来事だというのだから、不思議な感覚に包まれるのも無理はない。

まるで、「インドという狐につままれた」感覚だ。

こんなふうに、素直に感動できる感覚が旅を楽しくさせるのだろう。

あるいは、ピンクとオレンジの色彩が、私の時間感覚を少しズラしたのかもしれない。

極めつけは「牛」だ。

私は牛のお尻にくっつくように宿まで歩き、ジャイプールの1日を終えた。