ただ今の時刻は14時。奇跡のように霧が晴れた天売島です。
また白いガスに包まれないうちに、天売島の要所要所を回ってしまいましょう。
いま私がいるのは、天売島の南側にあたる黒崎海岸。
ここから、登り坂をのぼっていくと赤岩展望台に出て、そこからは一方通行。
時計回りに天売島をまわる道中、もう2か所の展望台があるみたいです。
ウミネコに囲まれる天売島の海岸
天売島の外周道路道道548号線を西へ。
すると、ニャーニャーと大勢のネコの鳴き声が。
ネコはネコでも、ウミネコでした。
すごい鳴き声です。ほんとにネコに囲まれてるよう。
自転車を止めて、海岸に出てみると、眼下にはさらにウミネコが。
天売島は海鳥たちの楽園。
絶滅危惧種のオロロン鳥やウトウなど、8種類ほどの海鳥が棲息しているとのこと。
私には正直区別がつかないのですが、グーグルの画像検索で、ウミネコということに自信がつきました(^^)
赤岩展望台へ
さて、このあたりから、登り坂がきつくなります。
「まむし」にも注意が必要らしいです。
アシストつき自転車でもかなり厳しい勾配。
アシストつきでなかったら、完全にギブアップです。
休憩しながら眺める大海原。
焼尻島も望めます。
礼文島からは利尻島が見えなかった。利尻島からも礼文島が見えなかった。
その渇を癒してくれます。
さらに登ると、あれが展望台かな。
展望台の手前にトイレがありました。
島の人が清掃しているのか、とてもきれいで紙も備え付けられてます。
ただし、扉は閉めてくれとのこと。
海鳥が入ってしまうかららしいです。
ここからが一方通行。6月から8月の3か月間。
今日は、サイクリング中誰とも会ってませんが、休日はサイクリング渋滞になるのかな。
つり橋症候群になる赤岩展望台
では、自転車を路肩において、天売島一つ目の展望台「赤岩展望台」です。
すばらしく綺麗な海。圧倒されます。
周囲に、まったく人気がないので、すごい違和感。
ときおり、海鳥がさっと飛んでいくほかは、音もしません。
さっきのウミネコの大群は、身体が白かったですが、このあたりの海鳥は黒いようです。
どこまでも広がる青い海。
展望台の欄干に、海鳥がとまってました。
あれは、ウミガラスだろうか、ウトウだろうか。
それにしても、すさまじいほどの絶景。
これほどまでに海しか見えない展望台ははじめてです。
風もなくべた凪の海面が、さらさらと動く様子が芸術的。
景色に吸い込まれるというのは、このことを言うのだろうか。
高所恐怖症でもない私が、立ち眩みです。
足がすくんで前へ出ないというか、地球上には私しかいないのではという錯覚もあいまって、恐怖を感じます(^^)
美しくも雄大な景色に出会って、「恐ろしい」と感じたのは初めての経験。
そのくらい、圧倒される景観です。
そして、こんなに穏やかな日本海なんて、珍しいのだろうか。波ひとつない。
シベリアおろしの冬の海も見たくなります。
泳いでみたいな・・って、あそこまでどうやって行くのだろうか。
景色に圧倒されて足がすくんだのは、私の旅人生ではじめての体験。
たぶん、大自然の中にたった一人なので、もしなにかあったら、すべて自分で解決しなくてはいけない、と考えたからだと思う。
今までも、雄大で美しい自然に対峙したことはあった。
ヌビア砂漠、シーギリアロック、ノールカップ、いずれも息をのむほど雄大で美しかった。
でも、自分の周囲100m以内に、必ず誰かいた。
いまは、100mどころか、おそらく半径2㎞くらい、私しかいないだろう。
孤独感からくる恐怖だったのだろうか。
私は、バックパッカー蔵前仁一氏の、北極点まで歩いて踏破したご友人の話を思い出した。
サハラ砂漠は、一日歩いていたら車も通るし、人も話しかけてくる。だけど北極は違うのよ。完全に無の世界。人の気配がまったくない。しかも、歩けば歩くほど人のいる世界から離れていく恐怖。本当に怖いよ・・
蔵前仁一著:「スローな旅にしてくれ」より
私の旅は、一介のサラリーマンの遊山旅行。すなわち、だいぶスケールは小さい。
でも、同じ感覚に浸ってしまったのかな、なんて思う。
ふたたび霧が押し寄せる海鳥観察舎
これも、つり橋症候群というのだろうか。
足がすくんで、身体がフワフワの状態。
しばらく、この感覚を楽しんでました(^^)
そして、ふたたび自転車にまたがると、なんと、前方からまたもや霧が押し寄せてきます。
赤岩展望台から海鳥観察舎まではすぐ。
あいかわらず、誰もいない。
そして、下からわき上がってくる白い霧。これはこれで怖い。
あの建物の中には、何があるのだろうか。おそるおそる近づきます。
扉を開けると、中はクモの巣だらけ。別の意味で怖くなって、すぐに出ました(^^)
ウミネコを紹介する看板。
海面から立ち上がるような霧。動き方がすごく早い。
だから、そのうちまた晴れるんでしょう。
利尻島が見えるか? 観音崎展望台
日差しは強く、自転車のハンドルを握る腕が焼けてます。
でも、霧に触れると、びっくりするほどヒンヤリ。
さっきの赤岩展望台で、だいぶ堪能できたのか、霧がなくなるのを待たずに走り出します。
焼尻島を見下ろしながらのサイクリング。
ほんとに誰とも会いません。
天売島3つめの展望台、観音崎展望台です。
ここには駐車場がありました。
展望台から眺める北の景色。
まだ少し、モヤがかかってます。晴れてれば利尻富士が見えるそう。
しかし、かなたに見える平べったい影は、北海道のような気がするんだけど違うかな。
海鳥観察舎の方角は、まだ霧をかぶってました。
甲高い汽笛が聞こえ、船が出航していきます。
まぎれもなく焼尻島へ向かう高速船。
人工物を目にしたことで、孤独感から来る恐怖はなくなりました(^^)
では、そろそろ、下り坂をくだって自転車を返しますか。
なんとも筆舌に尽くしがたい雄大な景色です。
結局誰とも会わず、天売島を独り占めしたサイクリング。
文明の香りをかぎとり、なんとなく安心。地に足がついた気がします。
焼尻島の島影は、クジラのようにもみえます。
クジラを追いかけながらの天売島一周でした。
そして自転車を返して、天売島のサイクリング終了。
大げさだけど、生涯忘れられないサイクリングです。