空港の外に出ると、群がる運転手たち。事情を話します。
一応聞いてみます。「アブ・シンベルはバスで行けるかい?」「無理だよ」
(空港にいるタクシーの運ちゃんが、素直に案内するとは、ハナから思ってませんでしたが笑)
チャーター車を求めてアスワンの町へ
すると、賢そうな英語が達者な兄さんが近づいてきて、「アブ・シンベルに行きたいのかい? 空港からは無理だ。まずは、アスワンの街に行きな。」
たしかにそうなのだ。
ふつう、空港で、一人の旅人が、遠距離の観光地をちらつかせたら、ハゲタカのごとく、骨までしゃぶられること間違いなし。まして、ここはエジプト。
実は、陸路でアブ・シンベルに行く場合、もう一つ問題があるんです。
アスワンからアブ・シンベルへの280キロの街道は、観光客を狙ったテロが、散発しています。
その目的が、観光客から金品を巻き上げることなのか、反政府勢力が観光業に打撃を与えることなのかはわかりませんが、いずれにしても、向かうバスやその他の車両に隊列を組ませて、前後を警察が武装するという厳戒態勢をとらないと、アブ・シンベルには行けないとの情報もある。
そんな状態のエリアに、軽々しくタクシーなんかで入れるかどうかもわからず、またチェックポイントも多数あるらしく、そもそも許可してくれないかもしれない。
まずは、アスワンの街に行きな、とアドバイスしてくれた兄ちゃんは、その事情を知っているのでしょう。
思案していると、兄ちゃんが「こいつなら、アブ・シンベルへ行く手配ができるぞ。」と、1人の運転手を紹介してくれました。
「アブ・シンベル行きの手配? このドライバーが、乗っけていってくれるんじゃないのかい?」と聞いても、私の英語力では、それ以上の理解は無理。
とにかく、空港にいても、アブ・シンベル行きを画策できないことは間違いないようなので、この兄ちゃんと運転手の指示に従って、とりあえず、アスワンの街に向かうことに決定。
空港は、アスワンとアブ・シンベルのルート上にあるので、いったんアブ・シンベルに背を向けるカタチにはなりますが、これは仕方ない。
アスワンの町までは、100ポンドで行ってくれるとのことでした。
この時点で、6:40です。
なんとかして、アブ・シンベル行きたい・・
テロはコワいけど、外務省が行くな、と言ってるエリアではないし。
紹介された運転手。
アスワンの街に向けてハンドルを切りながら、携帯で何やら電話しています。
どうも、私のアブ・シンベル行きを、誰かに相談してくれてるらしい。
そして、運転手が、私に携帯を渡します。
相手も誰だかわからないけど、
「ハロー・・」早口の英語で、何言ってるんだか、さっぱりわからない(#^^#)
とりあえず、今日はアスワンに泊まるので、本日中にアブ・シンベルを往復したい。
そして、なるべく早く、アスワンに帰って来たい。
と、直訳英語で伝えたつもり・・・ この英語力のなさ・・ 悲しいぜ!
旅に出るたびに「よし、英語ぐらいは勉強しよう!」と誓いはたてるんだけどなあ(笑)
私の能力では、これ以上の説明は無理。
会話の主に、会ってから身振りで説明すればいいでしょう。
陽が昇りはじめました。周囲は荒涼とした砂漠。
ナイル川を渡ります。
あれは、何かの遺跡? それとも博物館?
素晴らしい景色なんでしょうが、まだクルマがチャーターできていないので、目に入りません。
アスワンの街に入ったようです。
アスワン ⇔ アブ・シンベル チャーター完了!
どこかのツアー会社のオフィスに連れていかれるものと思ってましたが、街道沿いでクルマが止まりました。
そして、そこで待っていたエジプト人の男と、運転手がバトンタッチ。
私をここまで運んでくれた運転手と、ここで待っていた男。この2人は、兄弟とのこと。
そして、ここで待っていたお兄さんの方が、アブ・シンベルに連れて行ってくれるらしい。
したがって、さっき、携帯でしゃべった相手も、この人。
まずは、ブロークンな英語を謝ります(^。^)
あらためて、希望する行程を説明。
そして、デンジャラスらしいけど、行けるのか? 警察の許可は大丈夫なのか?
エジ「ノープロブレム」
私「why? ノープロブレム?」
エジ「ノット デンジャラス」。
なぜ、ノープロブレムなのか理解できませんが、こりゃ、アブ・シンベルに行きたきゃ、腹をくくるしかなさそうですね。
ところで、肝心のハウマッチ! 第一声は2,200ポンド。
2,200ポンド! つまり13,200円。
バスで行ければ、ものすごい格安なんだろうけど、こちとら時間をカネで買わざるを得ない身。
飛行機の中で組み立てた予算2万円、さらに欠航したフライト14,000円の範囲内。相手に気づかれないように、ほっと胸をなでおろします。
でも、とりあえず、1,500ポンドと言ってみると、先方も思案して2,000ポンドではどうかと。
早く出発したかったので、その金額で決めようと思いましたが、では、アブ・シンベル往復ついでに、「切りかけのオベリスク」と「アスワンハイダム」に寄ってくれというとOK。
めでたく交渉がまとまりました(^^)v
正直、アブ・シンベル往復チャーター2,000ポンド(12,000円)が高いのか安いのかわかりません。
でも、おそらく高いんでしょう。
また、変な事例を作ってしまいました、ほかの旅人の皆さん、すいませんm(__)m
クルマは三菱。エアコンもガンガン効く。
これで、砂漠の中の道を往復できるんなら、安いと考えることにしましょう(笑)
実際、往復560キロもあるし。約7時間のクルマの旅です。
警官に案内してもらった「切りかけのオベリスク」
走り始めたな、と思ったら、すぐに停車。
ちょっと、自宅で一仕事してくる、みたいなことを言って、お前は「切りかけのオベリスク」でも見ててくれ、とクルマを降ります。
なんだ、なんだ、わけがわかりませんでしたが、ここが「切りかけのオベリスク」でした。
「切りかけのオベリスク」は、アブ・シンベルの帰りに寄ってくれるものと思ってましたが、最初に見学することになりました。
「切りかけのオベリスク」とは、古代エジプトの採石場。神殿を造るために、ここから石が切り出されていましたが、石に亀裂が入ってしまったため、切り出すのをやめ、それがそのままモニュメントとして残されている貴重な遺跡です。
まだ、朝早すぎて開いてないようなんですが、運転手が、係員に声をかけると、門をあけてくれました。
(ここで、はじめて、この運転手が信用できました。)
ルーツとか歴史を説明するムービーを上映するところ。
どこが見所なのかわかりませんが、とりあえず上のほうに行ってみようかな。
どこからともなく、ヘイ、こっちだ、と警官が登場。
うわ、案内してくれなんて言ってないんだけどなあ。あとでバクシーシだな、こりゃ。
相手、警官だし、おとなしくしていたほうがいいだろうし。しかも、鈍い光の自動小銃持ってるし。
下には観光客の団体が登場。
日が昇り始めて、もう十分に暑い。エジプトでは早朝の観光は基本ですね。
おお、これが亀裂かな。
さらに上っていきます。
ここから、カルナック神殿などの資材となる石を切り出していったんですね。
今から3,000年以上も前の話です。
これらも、古代の石きり技術なんでしょうか。
そして、出ました「切りかけのオベリスク」。この構図しか、知りません。
長さ42m、重さ1,168トン! こんなものを運ばされた労働者は大変だっただろうな。
これも、失業対策かな??
撮ってやる、というので、お願いしました。
当時は、当たり前だけど、全部手作業。よくぞ、こんな巨大な石というより岩を、削ったものです。
おまわりさん、案内ご苦労様でした。いくばかのバクシーシを渡します。
それにしても、自動小銃を持った警官に案内されたのは初めてだな。