HISのキャンペーンだったのだろうか。
いつものように、スカイスキャナで航空券を無作為に検索していたら、極端に安いカタール航空のチケットが目に入り、まだ休暇も確保していないのに、ポチってしまった。
私はそのくらい「中東」と聞くと、盲目的になる旅人である。
羽田から中東のハブ空港、イスタンブールやドーハへの航空券はまだまだ高く、特に私が好む羽田深夜発、そして羽田深夜到着便には20万円を切る価格は少ない。(2025年10月)
なので、この117,860円というプライスは奇跡のような数字である。

緊張が続く中東情勢
2025年10月の夜、私はペルシャ湾岸へ旅立とうとしている。
湾岸諸国と聞いて、人は何を想像するだろうか。
おそらく、多くの日本人は、否定的なイメージが浮かぶことだと思う。
偏向報道とまでは言わないが、絶え間なくミサイルやドローンが飛び交っているかのごとくニュースに接すれば、危険なエリアという印象を持つのは無理もない。

出典:外務省海外安全ホームページ(2025年10月現在)
2025年に入っても、このエリアの緊張は続く。
たとえば、
- 6月13日:イスラエルは、イランの核および軍事施設に激しい攻撃を開始。イランも応戦、イスラエル国内にミサイル、ドローンを発射。交戦は12日間に渡る。
- 6月21日:アメリカがイランの核関連施設3カ所を爆撃。
- 6月23日:イランがカタールの米軍アルウデイド空軍基地にミサイルによる報復攻撃。
- 9月9日:イスラエルがカタール・ドーハに滞在するイスラム武装組織ハマス幹部に向けて空爆。
つまり、チケットを予約してから2ヶ月後と、出発のひと月前に、カタールにミサイルが着弾したことになる。
これを受け、JALは当面の間羽田⇔ドーハ線の運行をとり止めていた。
中東に対する独特な思い
行き先はカタール、バーレーン、クウェート。
どれも小さな国々だが、世界経済を支える石油や天然ガスを生み出しながら、その実態はどこかベールに包まれている。
かつて大戦をはさんで複雑に形づくられた国境線、いまも交錯する政治的な思惑。
誰と誰が味方で、誰が敵なのかは、国ごとに異なり、ときに表向きの顔と裏側の思惑が交差する。
しかしながら、これらの国に住む人たち。
戦争や対立の火種が絶えないにもかかわらず、何事もないかのように人々は日常を営み、アザーンの声に合わせて祈りを捧げているのだ。

その姿を目にすると、私はいつも感じる。
「中東」と呼ばれるのはヨーロッパからの視点にすぎず、この地こそ、人類文明の発祥の地なのだと。
思い出すのは、サウジアラビア・ジェッダの街を歩いたときのことだ。
ひとりの少年に「日本人から見てサウジアラビア人をどう思う?」と問われ、私は「堂々と生きているのがうらやましい」と答えた。

そう、彼らは本当に堂々と生きている。
メディナでモスクにずらりと並び礼拝する姿は、美しくもあり、圧倒的に敬虔で、私の心を震わせた。
イスラエルを訪れた時も同じだ。
エルサレムの新市街にあるユダヤ人超正統派の街で、黒ずくめの人々が胸を張って歩く姿を目にしたとき、私は思わず襟を正した。

宗教も文化も違えど、「信じるものとともに堂々と生きる」という感覚がそこにはあった。
だからこそ、私は惹かれるのかもしれない。
今回の「湾岸3か国弾丸ひとり旅」は、そんな私の中東体験の延長線上にある。
青い空と砂漠の茶色、美しいモスクの輪郭、そして祈りを重ねながら日常を送る人々。
そのどっしりとした圧倒的な存在感に浸かりたくて、また中東への旅に出る。
フライトスケジュール

上のEチケットを眺めれば、誰だってカタール航空に乗るものだと思うだろう。
便名だってカタール航空。
それにJALがコードシェアしているという立ち位置。
だから、HISが安いチケットを組めたのかな、なんて、それこそチェックイン直前までそう思い込んでいた。
カタール航空は久しぶり。コロナ後は初めてとなる。

ハマド国際空港のクマちゃんとの再会も楽しみだ。

フライトスケジュールは次の通り。
| 航空会社 | 便名 | フライト |
乗継ぎ時間 |
|
|---|---|---|---|---|
|
往き |
カタール航空 |
QR4851 |
羽田22:50 ⇒ ドーハ4:55 |
4時間05分 |
| QR1102 |
ドーハ9:00 ⇒ バーレーン9:50 |
|||
|
帰り |
カタール航空 |
QR1111 |
バーレーン16:55 ⇒ ドーハ17:50 |
13時間40分 |
| QR4850 |
ドーハ7:30 ⇒ 羽田23:55 |
正直、こんなタイパ抜群のフライトチケットを11万円台なんて信じられない。
会社を退けてから飛行機に乗り込み、帰国時は連休最終日が終わる直前に羽田に着ける。
すなわち、10月の3連休に休暇を2日足すだけで可能になる「ペルシャ湾岸3カ国弾丸ひとり旅」だ。
帰りのドーハがロングトランスファーになっているのは、意図したもので、今までドーハは乗り継ぎの際に軽く観光しただけのただの1回だけの渡航歴。
夜をまたぐトランジットにすることで、夜景や夜のスークをのぞいてみたかった。
そして、行き先はバーレーンになっているけど、クウェートまで足を伸ばす。
バーレーン、クウェートは、湾岸諸国においても絶対に行きたかった国なので、気持ちが昂ってしかたない。
だから、ミサイルもドローンも、私の目には入らない。
外務省だって、この両国に渡航中止勧告など出していない。
戦火と隣り合わせの湾岸諸国。
防空システムは、むしろ数字よりも優れていることだろう。
旅立ち前夜、私の心はすでに飛行機に乗り込み、窓の下に広がる摩天楼と、それを映すペルシャ湾の広がりを思い浮かべている。