内戦が長らく続いたコロンビア。
そして、昨今の経済格差などを背景とする貧困。
さらには、政治経済が混乱し、大量に難民が押し寄せてくる隣国ベネズエラの影響。
コロンビアの治安には、そういったものが強く影響し、街角にはスラム街なるものが形成されている。
私のような一介の旅人は、興味本位でそんなところに行くべきでない。
これは、本当にその通りだと思う。
でも、そのスラム街が、観光振興などの目的で政府の都市開発の対象になっていたらどうだろうか。
ボゴタ市南部の緩やかな丘に広がるエルパライソというスラム街。
詳しくは後述するが、政府の支援でケーブルカーが敷設され、地上とのアクセス向上を通じて通勤通学時間の短縮を図り、観光振興にも力を入れるなど治安改善につとめているエリア。
そして、トリップアドバイザーなどから、プライベートツアーのガイドを申し込めるようになっている。
このような状況ならば、足を踏み入れても許されるだろうか。
コロンビア滞在の2日目。そして、コロンビア滞在の最終日。
私は、そんな心境でツアーの集合場所に出向いて行った。
エルパライソ行きオプショナルツアー
というわけで、エルパライソというスラム街なるものを見学するオプショナルツアーに申し込み、集合場所であるボゴタの新市街へ歩いているところ。
旧市街のラ・カンデラリア地区とはうってかわって、こちらは高層ビルが立ち並ぶ大都会の雰囲気。
そして、集合場所に着いてみると、本日のツアー参加者は私一人。
ということで、専用のバンは運転されず、バスで行くらしい。
コロンビアの公共バスは乗ってみたかったので、望むところ。
前を歩く女性がガイドさんです。
この女性ガイドさんが私を連れて行ったのは「トランスミレニオ」と呼ばれるボゴタ市が運営する新交通システム。
専用レーンを走るので、交通渋滞に左右されないらしい。
つまり、レールのない電車のような存在か。
路線図を見れば、ボゴタのトランスミレニオはかなり充実している模様。
女性ガイドさんが、「今ここで、ここまで乗るんです」と解説してくれます。
専用バンを出せなかったから、私の分のチケットは買ってもらえるみたい。
自分で買ってみたかったなw
バスが数台連なったトランスミレニオは、ボゴタの街中を南へ走ります。
ラ・カンデラリアのような観光スポットでなく、ボゴタの生活の匂いを垣間見れてよかった。
女性ガイドさんも、ガイドらしい杓子定規な英語でいろいろ解説してくれます。
杓子定規だからこそ、私のような人間にはわかりやすい。
トランスミレニオに乗ること約30分。
バスの車窓には、エルパライソと思える風景が。
そして、ケーブルカーも見えてきました。
よく見れば、トランスミレニオは4両連結。
こんな長いバスに乗るのは初めてだった。
そして、ケーブルカーのふもとの駅に到着。
こんな長いバスの運転、相当技術がいるような気がする。どんな仕組みなんだろ?
トランスミレニオの登場で、ボゴタの渋滞が解消されたという歴史解説かな。
アートなスラム街を見下ろすケーブルカー
さて、ここからが本題。
本ツアーの真打ち、ケーブルカーへの搭乗。
これをみる限り、ボゴタの貧民街とされるシウダー・ボリバルのエルパライソ地区へのケーブルカーは2019年に開業したようです。
私が持っている2016年の地球の歩き方には掲載されてません。
ケーブルカーができるまでは、こんなふうに登っていたという歴史、かな。
こちらは、ケーブルカーのデータ。
そして、日本のスキー場などでもみられる素晴らしいゴンドラ。
まさにできたばかりという感じで、キズひとつない。
このしっかりしたゴンドラはどこの国が建設したものだろう?
検索してもチャットGPTに聞いてもわからなかったけど、コロンビアのメデジンのケーブルカーはフランスの技術協力を得て設営されたらしい。
このケーブルカーもそうなのだろうか。
4両連結のトランスミレニオといい、このケーブルカーといい、あまりにも立派な交通機関が出現するので、正直面食らってます。
しかし、乗り込んでみて、そんなことで驚くのは早計だった。
ゴンドラは一直線に丘の上を目指します。
長屋のような家屋の上をまたぐケーブルカー。
これはすごい・・・
世界を旅しても、スラム街なるものをじっくりみたことはない。
それをケーブルカーの上から見下ろすことができるなんて、ちょっと想像を超えてました。
言葉を失いつつ、眼下に広がる絶景を堪能します。
近づいてくるカラフルな街。
コロンビアで、こんな素敵な演出にめぐりあえるとは思わなかった。ほんとにすごい・・
しかし、かつては危険だった場所も、交通インフラの整備などとともに観光業にも力を入れ、安全な街へと変貌したエルパライソ。
コロンビア政府の絶大な努力のたまものでしょう。
学校や運動場も整備されているようでした。
ゴンドラは、さらに上を目指します。
地区によって、カラーが異なることがわかります。
これは、間違いなく芸術です。すごすぎる。
緑と黄色に塗り分けられたエリアと、赤やオレンジが主体のエリア。
元の色は、茶色いレンガ壁だったと思われます。
振り返れば、こんな壮大な風景が広がってました。
さて、駅が見えてきました。
終点かな、と思って腰を浮かしかけると、ガイドさんが「ここはまだ中間駅」。
中間駅では、ゴンドラの扉が自動的に開閉しますが、止まることはありません。
身体の不自由な方は、スタッフが支援する仕組みになってます。
登るに連れ、勾配も急になります。
二つ目の中間駅。
バス便もあるみたい。しかし、とんでもない急坂だ。
高層ビルも建設されている。人口が増えている証だろうか。
ボゴタの標高が2,640m。この辺りの標高は3,000m近いのだろうか。
なにもかもが想像を超えた世界。
崖に張りつくような住居。
このあたりに住む人たちも、このゴンドラでふもとに出て、トランスミレニオを使えば、簡単にボゴタの中心に出られる。
街の活性化は、交通なくして都市計画は進まない、ということが肌で感じとれる。
素晴らしいショーを見せてくれた。このゴンドラに乗れたことを素直に感謝したい。
すごい階段。これを上り下りするのは大変な苦行だと思う。
公園で遊ぶ子供たちも目に入ります。今日は土曜日でした。
むき出しの崖をまたぐゴンドラ。
崖に描かれた巨大な眼ににらまれます。
そして、ようやく、終点駅が見えました。
約20分のグラフィックアートショーでした。
では、これから、そのカラフルな街の中を見学。
ガイドさん、よろしくお願いします。