推理小説というより、2時間ドラマの好きな方なら、だれでも名前を知っている作家「西村京太郎」。
トラベルミステリーの第一人者として、数々の名作を生み出し、その書籍は、学生時代に日本国内を放浪の旅をしていた頃、旅のお供に欠かせない存在でした。
日本の古都を舞台とする作品も多く、へたなガイドブックより情景を感じとれるのが、氏の作品の特徴でしょう。
実際、倉敷、東尋坊、京都直指庵あたりは、氏の作品に感銘を受けて訪れたもの。
トラベルミステリーとして名を馳せる以前の作品にも、海洋もの、パロディもの、社会派作品など名作が多く、尊敬する作家のひとりであります。
その西村京太郎氏が、湯河原に記念館を建てたのは2001年。
ずっと気にはなっていましたが、「青春18きっぷ」を使って静岡から身延への旅の帰り、寄ってみる機会が生まれました。
東海道本線・湯河原駅に到着したのが15時。
西村京太郎記念館の営業時間は16時半までです。
さて、湯河原駅に15時にいた人間が、本日中に「西村京太郎記念館」を楽しんでこれるでしょうかw
湯河原駅からタクシーで「京太郎記念館?」へ
閉館時刻も迫っていたので、タクシーを奮発。
乗り込んで「西村京太郎記念館へお願いします。」というと、
運転手は無線で、「京太郎記念館です。」
町の観光スポットとして定着している感じでした。
タクシーは湯河原の街を走り、新幹線の高架をくぐるとクルマを止めました。
所要時間は3分程度で、ワンメーターだったと思います。
川沿いの瀟洒な建物。
中に入れば、連続殺人事件でも起きそうな感じの雰囲気ですね(笑)
少し先には新幹線の高架が。
京都が好きな西村京太郎氏は、ながらく清水寺の近くに住んでおられましたが、病気療養の目的もあって、ここ湯河原に自宅を構えました。
この記念館の近くだと聞いています。
いきなり現れる殺人事件現場!
連続殺人を予感させるような外観だけでなく、扉を開けるといきなり殺人現場が・・
予備知識として知ってはいたけど、なかなかの演出です。
900円の入場料を払って、館内に入ります。
受付の方は、「写真撮影は自由ですよ。お荷物お預かりしましょうか?」と親切です。
血痕をたどるように二階へ。
そこには、氏の著作全作品400点以上が飾られていました。
殺人現場ではありませんでしたが、この著作で繰り広げられた殺人を累積すると、1,000人は死んでるかも。
いや「華麗なる誘拐」では、大量殺人もあったから2,000人以上は確実か。
土曜ワイド劇場? 数々の名シーン
2時間ドラマの好きな方なら、トラベルミステリーはかかせないでしょう。
私は三橋達也(十津川警部)と愛川欣也(亀井刑事)のコンビが好きだったな。
「愛と悲しみの墓標」はイタリアロケだったんですか。
それにしても、北条刑事役の山村紅葉さん。ちょっと太っちゃったよね(ごめんなさい)
トラベルミステリーの劇中の一人になった気分で、懐かしみます。
西村京太郎氏ヒストリー
今でこそ、ミステリー界の巨匠ともいえる西村京太郎氏も、その下積みの時代は短くはありませんでした。
そんな氏の足跡がパネルにこめられています。
「太陽と砂」で総理大臣賞を授賞した後も、売れない時代が続きます。
しかし、立ち退きを迫られていた母親の住居を買い取るために、賞金500万円をすべて母親に渡したエピソードには素直に感動しました。
ちなみに「太陽と砂」では21世紀の日本が描かれています。
カーナビに行き先を入力すると、自動運転で連れて行ってくれたり、大地震の起きる時刻を秒単位で予測可能な世界になってました。
そんな世界が、本当に来るといいですね。
「名探偵なんか怖くない」「D機関情報」「終着駅殺人事件」なんかは、けっこう好きな作品。
この辺からですね。売れっ子ミステリー作家として頭角をあらわしはじめたのは。
十津川警部ミステリーマップ
日本の小説に警察関係者の登場は数多くあれど、十津川警部ほどの行動派で、日本中を駆けずり回った刑事さんはいないでしょう。
氏のトラベルミステリーは、旅情を誘うようなものばかり。
しかし、ときには、推理小説には定番のアリバイトリックの見せ場もある。
中でも、時刻表トリックとしては「山陽・東海道殺人ルート」は、秀逸な作品の一つ。
寝台特急「さくら」のカルテットで殺人事件が発生。
しかし、容疑者には「さくら」の前を走る「あさかぜ82号」に乗車していたという鉄壁のアリバイがあった。
私は、このアリバイは崩せなかったですよ。
今だったら、乗り換え案内アプリで、簡単に解けちゃうのかな!(^^)!
この「山陽・東海道殺人ルート」は、ドラマでも子細に表現されたのが嬉しい。
寝台特急を3本も使う、今の日本ではありえない、長距離列車全盛期の素晴らしい軌跡だと思います。
「山陽東海道殺人ルート」は、ストーリーが復讐劇で、犯人側に感情移入できる、物語としても傑作でした。
そして、私の住む千葉県。
ほかにも「特急さざなみ7号で出会った女」や「ATC作動せず!」も千葉県だったような気もするけど。
楽しい大ジオラマの偽装トラベル?
二階のフロアの中心に配置されているのが、鉄道模型のジオラマです。
スイッチを押すと、列車が自動的に走り出す仕組みになっています。
けっこう複雑なレイアウト配線で、どのトンネルから列車が飛び出してくるのかわからない面白さ。
まさにトラベルミステリーですね。
世界各国の列車も展示されています。
もう、日本からはなくなってしまった「ブルートレイン」も。
400点以上の作品をひとつづつ眺めて
400冊以上も書き下ろした作家は、日本では西村京太郎氏と赤川次郎氏しかいないそうです。
400点以上飾ってある著作をひとつづつ丁寧に眺め、想い出に浸ります。
過去の思い出がよみがえります。
時間を忘れて、至福の時を楽しみます。
手にとれるのかな・・・と期待していたところ、ガラスケースの中で無理でした。
初版の奥付とか見たかったんだよね・・・
20数年前、やまなみハイウェイを車で走ったことがある。
今回、取材でやはりやまなみハイウェイを走ったら、二十数年前の記憶がパアッと蘇った。
旅はしておくものである。多少危険であっても・・
こんな奥付の記憶があるんだけど、さてこれは、なんのタイトルであったか・・
すごく記憶に残ってるんですけどね。
スタンプもいただきました。
当時のままの原本も展示されています。
手書きで原稿を執筆する西村京太郎氏
いまでも新刊を発刊し続けている西村京太郎氏。
しかも、それはすべて手書きだそうです。
特注の原稿用紙4,000枚分の執筆量にのぼるそうだからすごい・・
今年で90歳になろうという西村京太郎氏。若いです。
買える本もありました。
さて、そろそろ帰りましょう。
小一時間ほどいた「西村京太郎記念館」。タイムトラベルしている気分で、1時間が何年にも感じました。
階段のすき間から下を見下ろすと、さっきの殺人現場が・・
犯人は、ここから氷のような溶けてなくなる凶器を使用したのかも!(^^)!
劇中の一人になったような錯覚を楽しめる、ファンにとってはこたえられない空間ですね。
一階に設えてある「茶房にしむら 」は、感染症のためお休み。
「人生は愛と友情と裏切りで成り立っている」・・深い言葉だ。
「俺たちはブルースしか歌わない」の奥付けにも謳われていたように思います。
楽しい「西村京太郎記念館」でのひとときでした。