【タンザニア一人旅】神々しい姿を現してくれたキリマンジャロ

キリマンジャロ。標高5,895メートル。

アフリカ大陸最高峰にして、世界七大陸最高峰のひとつ。

もちろん、人生の登山歴最高峰が筑波山である私が、登ろうなどとは考えていません(笑)

それでも、氷河をたたえたその白い山頂だけは、この目で見てみたかった。

モシに滞在するのは、わずか48時間ほど。

その間に一度でも姿を現してくれたら、それだけで十分でした。

姿を現したキリマンジャロ

ところが、朝からモシの街を歩き回っている間、キリマンジャロはずっと雲の中。

見えるのは、裾野らしき山並みだけ。

山頂は、まるでこちらを試すように、分厚い雲の向こうに隠れたままでした。

そもそも、キリマンジャロは「恥ずかしがり屋の山」と称されるほど、なかなか姿を現さない山。

やっぱり、そう簡単には見せてくれないのか。

そう思いながら、夕方、いったんホテルに戻ってベッドに横になりました。

モンバサからモシまでの移動を終え、国境越えも済ませ、朝から街を歩き続けた身体は、思った以上に疲れていたようです。

それでも、日没の少し前。

なんとなく気になって、ホテルのテラスへ上がってみました。

すると、

雲の切れ間から、白い山頂がほんの少しだけ姿を現していました。

思わず、心の中で叫びました。

やった。

あれがキリマンジャロか。

さっきまで雲に覆われていた空の向こうに、雪をまとった山頂が、静かに浮かび上がっている。

町のビルや屋根の向こうに、突然、別の世界が現れたようです。

富士山のように、周囲から孤立して、ひとつの山塊として立ち上がるその姿。

しかし、富士山とは違う。

赤道直下の空、低くたなびく雲、暮れていくモシの街。

そのすべての向こう側に、白い頂だけが、まるでこの世のものではないように浮かんでいました。

キリマンジャロは、技術的には「歩いて登れる山」とも言われます。

稜線をみてると、たしかになだらかで、登山初心者でも登れるのかな、というのが第一印象。

実際、キリマンジャロの主要な登山ルートは、ハシゴやロープ、アイゼンを使って岩壁を登るような危険な場所がほとんどないようです。

けれど、標高5,895メートルの頂上付近はこの通り。

酸素は地上の半分、寒さも厳しい。

そんな中、5〜7日間にわたって毎日何時間も歩き続ける「強靭な体力と精神力」が必要となれば、私には登れない山です。

だからこそ、ふもとの街から見上げるだけでよかった。

いや、見上げるだけで十分でした。

西の空には夕焼けが。そして太陽が沈んでいきます。

そして、その西日を浴びるキリマンジャロ。

時間を忘れて眺めていると、山を覆っていた雲が少しずつ動いていきます。

白い頂が、さっきよりもはっきり見えてくる。

神々しい。

少し大げさな言葉かもしれません。

でも、最初に見た瞬間、私には本当にそう見えました。

赤道直下の青空と黒い雲のコントラストの中に浮かび上がる白い山頂が、この世のものとは思えない神々しさに見えたのかも。

感動しすぎていて、うまい言葉が見つからない。

あの建設中らしいビルがじゃま。

マンションかな。

あれが完成したら、キリマンジャロが見える側と見えない側で、倍近い値段の差がでそうだ。

ルーフトップバーに、たぶん1時間ほどいたでしょうか。

ビールを飲むでもなく、誰かと話すでもなく、ただ山を眺めていました。

モンバサからバスでここまで来た。

国境を越え、タンザニアに入り、モシにたどり着いた。

そして今、目の前にキリマンジャロがある。

それだけで、今回の旅がひとつ報われたような気がします。

キリマンジャロビールで乾杯

さて、幸せな気持ちの余韻を楽しみながら、ホテル裏のレストランへ。

まずはハイネケンで乾杯。

ハイネケンがあるところを見ると、観光客向けのレストランだと思うんだけど、8月のモシに観光客はあまり見かけません。

そして、昨夜食べたビリヤニを気に入って、今度はエッグビリヤニ。

ハイネケンがあっというまになくなり、キリマンジャロビールを追加。

おや、欧米系の観光客がゾロゾロと入ってきましたね。やっぱりいるんだ。

さっきまで眺めていた山の名を冠したビール。

これ以上、この夜にふさわしい一杯はなかったね。

ビリヤニも美味しい。ちょっと味付けしたくてケチャップをかけました。

タンザニアで、美味しい料理を食べ、ビールを飲み、そしてキリマンジャロを拝む。

なんという幸運なんだろうと思う。

レストランを出ると、さすがにもう真っ暗です。

露出を広げてるので、明るく見えますが、街灯のあるところ以外は本当に真っ暗。

治安にも注意しないと、浮かれた気持ちをひきしめます。

見上げると、赤道直下の夜空に星が出ていました。

モシ最後の夜。

私はキリマンジャロの余韻を抱えたまま、静かにフェードアウトしていきました。