昼間のマナーマ・スークは、ひっそりとした影だけを落としていた。
しかし、数時間前の記憶が、夜になって一変する。
夕方の祈りの時間を境に、入りくんだ不規則な路地はじわじわと息を吹き返しはじめる。
それが中東の町の夜の姿。
バーレーンの夜の体験は、この一夜のみ。
心ゆくまで歩いてみようと思う。
音と光と香りのマナーナ・スーク

ムハッラク地区でペルシャ湾に沈む夕陽を眺めてからホテル前へ戻ると、夜のとばりが降りた時刻。

しかし、昼間は閉じていた店という店がシャッターを開きはじめてました。

通りを歩く市民の姿もにわかに多くなる。

日本にもありそうな八百屋さん。

さらにスークの奥へ歩んでいくと、

所有など考えたこともないようなプライスの貴金属店。

ひっそりと「SEIKO」のサインを掲げる時計屋さん。

ふと、人通りが途切れる路地に入り込んで、一瞬緊張するけど、

すぐにスークの一角にぶつかります。

これがバーレーンのマナーナ・スーク。

そして、路地には、鼻腔をくすぐる香ばしい香りが漂います。

スークの喧騒と、貴金属の光と、スパイスの香りが見事に調和するマナーナ・スークです。

バーレーンのチャイ屋で経済談義

中東を歩いている気分が十分に高まったところで、チャイ屋らしいチャイ屋をみつけたので入りました。

屋根下にテーブルを並べただけの素朴なチャイ屋。
すぐ裏手で売られている煌びやかな貴金属と、どちらが素のバーレーンなのだろう・・・

スークから漂ってくる香辛料の香りに、チャイの芳香が重なり、そしてタバコの煙がまじる。
私は日本では嫌煙家。タバコの煙など見たくもない。
しかし、郷に入らば郷に従え。
タバコの煙さえ心地よくなってくるから、私の身体は筋金入りに旅人仕様になっているのだと思う。

これがバーレーンの日常。
1日の終わりをこうやって過ごすんだな、と思いながら、チャイをすするととんでもなく甘い。
でも、半日歩き回って疲労を覚える身体には、気持ちよくしみ込んでいく。

少し遠ざかったスークの喧騒に耳を傾けていると、隣の男性が「日本人か?」と話しかけてきた。

たわいもない会話の後、突然「日本は経済国か?」と話がエコノミーに及ぶ。
今までの旅歴で、経済の話題は初めてで驚く。
「GDPではドイツに抜かれ、まもなくインドにも抜かれるだろう。日本はビジネスモデルの転換が必要だ。」と教科書的に答えると「バーレーンも経済国だ」と真っ直ぐな眼差し。
ついさっき、海岸で敬虔な祈りの姿を拝見したばっかりだったので襟を正す思い。
数字でも政策でもなく、「生活者の自尊心」として経済を語る表情が胸に残る、チャイ屋のひとコマだった。

眺めて楽しい色とりどりのスパイス

チャイ屋を出て、ふたたび歩きはじめるスーク。

八百屋さんもますます盛況。

夜がふければふけるほど賑わうのがバーレーンのようだ。

このアクセサリー店で売られてる商品の末端価格総計はいくらになるのだろう。

アラビア文字しか表示されてない看板では、もはや何を売っているのかもわからない。

賑わいを見せるスークだけど、

アルコールの匂いは微塵もしない。当たり前だけど。

しかし、やはり眺めて楽しいのは日本では見たことのないようなスパイスだ。

ぜんぶ自家製なのだろうか。
この狭い国土、雨が降らず乾いた環境で、どのように栽培するのだろう。

わかても目を引いたのが、このプラスチックのおもちゃのようなスパイス。

いや、スパイスなのかなこれは・・・パスタだったりして。
スパイス屋ではなく、おもちゃ屋に並べてあっても違和感なし。、

バーレーンのスパイスマーケット。

ひとつひとつ種類を教えてくれたらな・・・

バーレーンの夜は、まだまだ続きます。
